金融市場マンスリー 2015 年 2 月 18 日号 [要旨] ◆金融市場動向 金融市場では、原油価格の下げ止まりや米経済指標の改善などを 受け、長期金利が下げ止まり、株価は高値圏で推移。株式市場は 昨年末水準でもみ合い推移。日米の長期金利は低下に歯止め。10 年債利回りは米国が2%台、日本は0.4%台に上昇。ドル円相場は 110円台後半でもみ合い推移 ◆米国経済 10~12月期の実質GDP成長率は前期の高成長から減速するも底 堅い増加。ISM指数は製造業指数の低下が続く。西海岸の港湾 ストの影響を受けている模様だが現時点で腰折れ懸念は小。1月の 雇用統計は力強い内容。1月FOMCでは景気判断を上方修正。声明文 では「国際情勢」に対する関心を示す ◆日本経済・金融市場見通し 10~12月期の実質GDP成長率は内外需ともに押し上げに寄与し、 3四半期ぶりのプラス成長。もっとも、個人消費の回復ペースは依 然として緩慢。海外経済の回復に伴い輸出が増加傾向を維持する 中、生産は緩やかに持ち直し。全国コアCPI伸び率は原油価格 の下落などから一時的にマイナスとなる見通し。政府は任期満了 となる宮尾日銀政策委員の後任にリフレ派の原田早大教授を提示。 長期金利は落ち着きどころを探る展開、株価は底堅い推移を見込 むも、目先は海外情勢や原油相場の動向が重荷 ◆為替相場の見通し ドル円相場は、米利上げを睨み緩やかなドル高地合いを見込む。 ユーロドル相場は、引き続きユーロ安圧力が高まりやすい展開を 予想 目 次 1.今月の視点 ----------------------------------------------- 1 2.金融市場の全体観 ----------------------------------------- 2 3.米国経済・金融市場動向 ----------------------------------- 3 (1)経済動向 ------------------------------------------- 3 (2)金融市場動向 --------------------------------------- 4 4.欧州経済・金融市場動向 ----------------------------------- 6 5.新興国市場動向 ------------------------------------------- 7 6.国内経済・金融市場動向 ----------------------------------- 8 (1)経済動向 ------------------------------------------- 8 (2)金融市場動向 -------------------------------------- 11 7.為替市場動向 -------------------------------------------- 14 8.原油市場動向 -------------------------------------------- 15 9.予測表 -------------------------------------------------- 16 (資料1)日本経済、米国経済予測総括表 ---------------------- 17 (資料2)月間スケジュール ---------------------------------- 18 (資料3)四半期スケジュール -------------------------------- 20 (資料4)内外主要経済指標 ---------------------------------- 21 (資料5)内外主要金融指標 ---------------------------------- 22 1.今月の視点 ~世界の金融市場「水没」、運用難民が米国債「浮き輪」に向かいドル高だ~ 下記の図表は世界の金利「水没」マップとした一覧表である。これは基本的に国別・年限別の国債利回り、イー ルドカーブの状況を示す。ここでは、「水没」した(マイナスになった)ゾーンを濃く示しており、さらに 0%以上 0.5% 未満、0.5%以上 1%未満、1%以上と徐々に色を薄くして示している。こうした色の濃淡で示した図表はリスク管理 などで「ヒートマップ」として示されることが多いが、これはむしろ「フローズンマップ」で、マイナス金利になったとこ ろは金利機能が喪失して「麻酔」がかかったような状態だ。スイスでは、1月に中銀が極端なマイナス金利策をとっ たことで 9 年ゾーンまで水没し、ドイツを中心に欧州の北の諸国は軒並み中期ゾーンまでが水没状態が続いてい る。日本は先月、概ね 5 年までが水没していたが、1月末以降の調整で中期もやや浮き出た状態にある。今回の 論点は、まだ水没していない米国の評価だ。すなわち、世界の多くの国々が水没するなか、米国は水没せず、世 界の「海」のなかで「浮き輪」のように浮き出て世界全体の水没の支えとなっている。世界が水没しているなか、世 界の運用者が生き残りをかけ「運用難民」として「浮き輪」に殺到する結果が、過去1年間の予想外の大幅な米国 長期金利低下につながった。同時に、その圧力が米ドルの上昇圧力になっている。米国は今後、金融緩和の出 口戦略、FF レートの引上げの方向にあり、政策金利である FF レートの引上げは図表では米国の短期ゾーンの引 上げ、先の喩えでは、「浮き輪」を高くすることにある。 今日、世界の多くの国々が金融緩和を行っており水没地域は拡大しやすい。たとえ、米国が利上げで「浮き輪」 を持ち上げても、長期ゾーンには引き続き金利低下圧力がかかる。ただし今年の課題は、金利格差による「運用 難民」が押し寄せることで生じるドル高圧力のなか「浮き輪」が重みに耐えられるか、すなわち米国経済がドル高の なかで持続的な拡大を続けられるかも問われることになる。仮に、米国の利上げによるドル高に米国経済が耐えら れないと FRB が判断すれば、今年半ばにかけて予想される利上げタイミングの変更も生じうる。いずれにしても、 利上げスピードも従来になく極めて緩やかなものとならざるを得ないだろう。また、こうした環境のなか、長期金利の 上昇も限られるだろう。 【 図表1:世界の金利の「水没」マップ(2015年2月12日) 】 スイス ドイツ スウェーデン フィンランド オランダ オーストリア フランス ベルギー 日本 アイルランド イタリア スペイン ノルウェー 英国 カナダ 米国 ポルトガル 中国 トルコ インド ロシア 1年 -0.91 -0.19 -0.20 -0.17 -0.18 -0.12 -0.12 -0.13 0.01 0.01 0.21 0.16 0.81 0.29 0.46 0.22 0.15 3.17 8.65 8.02 12.88 2年 -0.93 -0.22 -0.30 -0.17 -0.14 -0.15 -0.11 -0.10 0.05 0.07 0.34 0.25 0.75 0.39 0.42 0.62 0.28 3.17 8.06 7.86 13.55 3年 -0.83 -0.19 -0.15 -0.11 -0.10 -0.13 -0.10 -0.05 0.06 0.13 0.48 0.47 0.70 0.64 0.41 1.02 0.74 3.23 7.53 7.77 13.74 4年 -0.63 -0.17 -0.08 -0.05 -0.06 -0.07 -0.03 0.01 0.09 0.22 0.62 0.64 0.72 0.88 0.54 1.25 1.23 3.30 7.69 7.77 13.54 5年 -0.45 -0.07 0.00 0.01 -0.01 -0.01 0.05 0.07 0.12 0.49 0.78 0.89 0.74 1.08 0.70 1.49 1.45 3.35 7.86 7.74 13.35 6年 -0.37 -0.04 0.11 0.02 0.03 0.05 0.18 0.16 0.12 0.54 0.97 1.03 0.82 1.20 0.86 1.65 1.74 3.38 7.76 7.78 13.11 7年 -0.22 0.04 0.22 0.11 0.12 0.12 0.30 0.31 0.19 0.73 1.24 1.22 0.91 1.31 1.02 1.80 1.90 3.40 7.66 7.77 12.88 8年 -0.15 0.13 0.40 0.25 0.23 0.24 0.43 0.43 0.25 0.89 1.38 1.40 1.02 1.48 1.16 1.86 2.09 3.44 7.64 7.82 12.65 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 20年 30年 40年 -0.02 0.02 0.04 0.07 0.15 0.23 0.31 0.46 0.55 0.59 0.23 0.32 0.36 0.39 0.43 0.47 0.51 0.69 0.89 0.47 0.54 0.57 0.61 0.65 0.69 0.72 0.91 0.30 0.39 0.44 0.49 0.54 0.59 0.64 0.72 0.87 0.32 0.40 0.43 0.46 0.50 0.53 0.57 0.71 0.94 0.32 0.42 0.43 0.45 0.46 0.48 0.50 0.65 0.95 0.53 0.64 0.71 0.77 0.83 0.90 0.96 1.11 1.34 0.54 0.65 0.68 0.71 0.73 0.76 0.79 1.10 1.30 0.33 0.40 0.46 0.53 0.59 0.66 0.72 1.20 1.42 1.51 1.03 1.21 1.27 1.34 1.41 1.48 1.55 1.71 2.02 1.48 1.65 1.75 1.84 1.94 2.03 2.13 2.43 2.66 1.51 1.62 1.71 1.81 1.90 1.99 2.08 2.27 2.64 1.14 1.23 1.57 1.66 1.74 1.81 1.89 1.96 2.03 2.22 2.40 2.35 1.27 1.40 1.45 1.51 1.57 1.62 1.68 1.97 2.04 1.92 1.98 2.01 2.04 2.07 2.10 2.13 2.28 2.58 2.29 2.47 2.57 2.68 2.79 2.90 3.00 3.27 3.47 3.45 3.44 3.47 3.49 3.52 3.54 3.57 7.70 7.54 7.82 7.74 7.78 7.68 7.80 7.76 7.82 7.73 7.72 12.41 12.18 12.07 11.96 11.84 11.73 11.62 11.31 0%未満 0%以上0.5%未満 0.5%以上1.0%未満 1.0%超 (資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成 (チーフエコノミスト 高田 創) 1 金融市場マンスリー(2015 年 2 月 18 日号) お客様各位 本レポートは、経済・金融市場の現状と見通しに ついて纏めた、みずほ銀行のお客様向けレポート の一部です。 本レポートをご入用の場合は、みずほ銀行のお取 引窓口までお問い合わせ下さい。 チーフエコノミスト: 高田創 本部長代理 兼市場調査部長: 長谷川克之 03-3591-1191 [email protected] 米国経済: 小野亮 03-3591-1219 [email protected] 山崎亮 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