金融市場マンスリー 2016 年 3 月 16 日号 ◆ 米10年国債利回りは2%割れの水準でもみ合い 米10年国債利回りは市場の先行き不安が残存し、2% 割れでのもみ合いが続く公算が大きい。年内追加利 上げはほぼ織り込まれ、金利上昇は一巡と予想 ◆ 日本株の本格的な反転は見込みづらい 日本株は円高地合いが続く中、上値追いにはなりに くい一方、財政など政策期待から下値も堅く、一進 一退の推移を予想 ◆ 対円でのドルの上値は重い状況が続く 新興国経済の先行き懸念などから市場の先行き不透 明感が残存。リスクオンによる円売りに繋がらず、 ドルの上値が重い状況が続くと予想 目 次 1.今月の視点 ----------------------------------------------- 1 2.金融市場の全体観 ----------------------------------------- 2 3.米国経済・金融市場動向 ----------------------------------- 3 (1)経済動向 ------------------------------------------- 3 (2)金融市場動向 --------------------------------------- 4 4.欧州経済・金融市場動向 ----------------------------------- 6 5.新興国市場動向 ------------------------------------------- 7 6.国内経済・金融市場動向 ----------------------------------- 9 (1)経済動向 ------------------------------------------- 9 (2)金融市場動向 -------------------------------------- 11 7.為替市場動向 -------------------------------------------- 14 8.原油市場動向 -------------------------------------------- 15 9.予測表 -------------------------------------------------- 16 (資料1)日本経済、米国経済予測総括表 ---------------------- 17 (資料2)月間スケジュール ---------------------------------- 18 (資料3)四半期スケジュール -------------------------------- 20 (資料4)内外主要経済指標 ---------------------------------- 21 (資料5)内外主要金融指標 ---------------------------------- 22 1.今月の視点 ~マイナス金利政策の勝ち組、企業と政府がすべきこと~ 日銀のマイナス金利が適用されて1カ月が経った。マイナス金利に対する様々な角度から評価がされるなか、よ くいただく質問のなかに、マイナス金利で誰が得をして誰が損をしているかというものがある。下記の試算は単純な 仮定の下で、部門別の影響を振り返ったものだ。マイナス金利の導入により、恩恵が最も大きいのは政府部門、次 いで事業会社(非金融法人企業)となる。一方、マイナス金利による損失が最も大きいのが金融機関となる。ただし、 金融機関は保有国債の日銀への売却価格の上昇により収益にプラスの効果が生じる可能性をもち、その分、日 銀にはマイナス効果が及ぶ。単純にみると、「勝ち組」は政府と企業になる。ここで、マイナス金利によって経済へ の回復効果を獲得しようとすれば、「勝ち組」である企業と政府が資金を使い成長にあてることが不可欠だ。そこで、 まず、企業が投資を行うことを期待する。マイナス金利下において、企業の裁定行為は、「社債調達・株買い」とな る。株の買いを自社株にすれば自社株買いとなり、他社であれば M&A 等の株式投資となる。企業が低金利のメリ ットを活かし資金調達し、割安に放置された株式に投資を行い企業の潜在価値を高めることが経済活性化につな がる。 一方、企業が資金を使わないとすると、政府自らが財政の形で資金を成長に向けて活用することが必要になる。 そもそも、図表に示した損得の構図では、政府がお金を貯めこめば、金融機関向けに増税が行われたのと類似し た経済効果となってしまう。したがって、その資金を政府がいかに活用するか問われることになる。以上の観点から、 マイナス金利を中心にした過度な金融政策への依存から、財政拡大への期待が高まりやすい。今年 5 月に日本 で開催予定の G7サミットに向け、財政をサポートする国際世論の拡大に注目したい。 【 図表1:マイナス金利による部門別所得移転の効果(概算)】 財産収支 (金利収入・支払) への影響額 家計(個人企業を含む) 非金融法人企業 日銀への国債売却価格 の変化を加味した場合 ▲23億円 +1,218億円 金融法人企業 ▲4,310億円 政府 +4,675億円 日銀 ▲1,141億円 保有国債の売却 保有国債の日銀への 売却価格上昇により、 収益にプラスの効果 国債の買取価格上昇に より、収益にマイナスの 効果 (注)貸出・借入、株式以外の証券は▲5bp、預金は 1bp と仮定。なお、マクロ加算残高は▲10bp、 政策金利残高は▲20bp で算定。 (資料) 日本銀行「資金循環統計」より、みずほ総合研究所作成 (チーフエコノミスト 高田 創) 1 金融市場マンスリー(2016 年 3 月 16 日号) お客様各位 本レポートは、経済・金融市場の現状と見通しに ついて纏めた、みずほ銀行のお客様向けレポート の一部です。 本レポートをご入用の場合は、みずほ銀行のお取 引窓口までお問い合わせ下さい。 チーフエコノミスト: 高田創 本部長代理 兼市場調査部長: 長谷川克之 03-3591-1191 [email protected] 米国経済: 小野亮 03-3591-1219 [email protected] 風間春香 03-3591-1418 [email protected] 吉田健一郎 03-3591-1265 [email protected] 松本惇 03-3591-1199 [email protected] 日本経済: 徳田秀信 03-3591-1298 [email protected] 金融市場: 武内浩二 03-3591-1244 [email protected] 欧州経済: 野口雄裕(国内金融政策・金利) 03-3591-1249 [email protected] 大塚理恵子(内外株式) 03-3591-1420 [email protected] 井上淳(新興国・原油) 03-3591-1197 [email protected] 有田賢太郎(為替) 03-3591-1419 [email protected] 問合せ先 / みずほ総合研究所 調査本部 TEL 03-3591-1395 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。 本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証 するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
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