金融市場マンスリー 2016 年 5 月 23 日号 ◆ 米10年国債利回りは2%割れの水準でもみ合い 経済指標の改善が続けば、6月の米利上げの可能性は 高まる。しかしながら、米国債利回りは海外からの 債券需要の高まりが金利上昇を抑制 ◆ 日米株は不透明感から弱含み易い展開 米利上げへの警戒感の高まりや、英国国民投票など 不透明感の高い材料が残存する中、日米株とも弱含 み易い展開が見込まれる ◆ 今後は再びドル安地合いになると予想 中国経済の先行き不安などが残存する中、早期の米 利上げ観測が後退し、再びドル安地合いとなる可能 性が高いと予想 目 次 1.今月の視点 ----------------------------------------------- 1 2.金融市場の全体観 ----------------------------------------- 2 3.米国経済・金融市場動向 ----------------------------------- 3 (1)経済動向 ------------------------------------------- 3 (2)金融市場動向 --------------------------------------- 4 4.欧州経済・金融市場動向 ----------------------------------- 6 5.新興国市場動向 ------------------------------------------- 7 6.国内経済・金融市場動向 ----------------------------------- 8 (1)経済動向 ------------------------------------------- 8 (2)金融市場動向 -------------------------------------- 10 7.為替市場動向 -------------------------------------------- 13 8.原油市場動向 -------------------------------------------- 14 9.予測表 -------------------------------------------------- 15 (資料1)日本経済、米国経済予測総括表 ---------------------- 16 (資料2)月間スケジュール ---------------------------------- 17 (資料3)四半期スケジュール -------------------------------- 19 (資料4)内外主要経済指標 ---------------------------------- 20 (資料5)内外主要金融指標 ---------------------------------- 21 1.今月の視点 ~世界の分断をもたらす掟破りのドイツ問題~ 図表 1 は世界の経常収支の比較である。今日、ドイツを筆頭にしたユーロ圏は、経常収支の黒字が最大の地域 となっている。歴史を振り返れば 1970 年代の変動相場制へ移行後の世界の経済秩序の掟として、常に経常収支 が黒字の地域が機関車として財政も含めた内需拡大で世界経済をけん引し、同時に、自国通貨高圧力を受けて きた。1970 年代以降、日本とドイツが機関車の役目を果たし、2000 年代にその座が中国に移ると中国が財政を拡 大し世界の機関車の役目を果たした。同時にその間、通貨高の圧力を受け入れてきた。今日、世界最大の黒字 国ドイツを中心とするユーロ圏は、頑なに財政緊縮を掲げ「マイナス金利」による通貨安競争によって、外需拡大を 志向する近隣窮乏化にある。今日の世界の需要不足の要因には「ブラックホール」のように世界の需要を吸収する、 欧州の超財政緊縮がある。その背後には、ユーロという共通通貨を用いることによる構造問題が存在する。すなわ ち、ユーロという統一通貨が用いられているにもかかわらず、域内不均衡是正の資金移転(トランスファー)が制度 上限界があるため、各国財政の緊縮とマイナス金利による通貨下落が必要とされているという矛盾である。 そもそも、1970 年代以降、経常収支の黒字国が機関車として財政拡大で貢献するという掟が守られてきたのは、 米国が為替面で影響力を発揮し、黒字国に通貨高でけん制をかけてきた面が大きかった。この構造は、今日も日 本に強く当てはまる。ドイツには 1990 年代までこの掟が当てはまったが、通貨がマルクからユーロになり、共通通 貨を隠れ蓑にできるようになって以来、マルクの時と異なりドイツを狙った通貨高の圧力の効果が出にくくなった。 それゆえに、ドイツにユーロ域内から誰も物が言えず、米国も言えない状況になった。ましてや、日本が口をはさ む余地はない。今回の伊勢志摩サミットはこうした世界的な分断のなかで協調をとることの難しさを抱える。 【 図表1:G20の経常収支(対GDP比)比較 】 10 (%) 8 6 4 2 0 -2 -4 英国 トルコ 南アフリカ ブラジル オーストラリア サウジアラビア カナダ 米国 メキシコ インドネシア アルゼンチン インド フランス イタリア EU 日本 中国 ロシア 韓国 ドイツ -6 (注) データは 2015 年見込み。 (資料) IMFより、みずほ総合研究所作成 (チーフエコノミスト 高田 創) 1 金融市場マンスリー(2016 年 5 月 23 日号) お客様各位 本レポートは、経済・金融市場の現状と見通しに ついて纏めた、みずほ銀行のお客様向けレポート の一部です。 本レポートをご入用の場合は、みずほ銀行のお取 引窓口までお問い合わせ下さい。 チーフエコノミスト: 高田創 本部長代理 兼市場調査部長: 長谷川克之 03-3591-1191 [email protected] 米国経済: 小野亮 03-3591-1219 [email protected] 風間春香 03-3591-1418 [email protected] 吉田健一郎 03-3591-1265 [email protected] 松本惇 03-3591-1199 [email protected] 日本経済: 徳田秀信 03-3591-1298 [email protected] 金融市場: 武内浩二 03-3591-1244 [email protected] 欧州経済: 野口雄裕(国内金融政策・金利) 03-3591-1249 [email protected] 坂中弥生(海外金利) 03-3591-1242 [email protected] 大塚理恵子(内外株式) 03-3591-1420 [email protected] 井上淳(新興国・原油) 03-3591-1197 [email protected] 有田賢太郎(為替) 03-3591-1419 [email protected] 問合せ先 / みずほ総合研究所 調査本部 TEL 03-3591-1395 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。 本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証 するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
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