金融市場マンスリー - みずほ総合研究所

金融市場マンスリー
2016 年 12 月 20 日号
◆ 米10年債利回りは2%台半ばでの推移を見込む
トランプ氏の政策の仔細が見えてくる来年1月まで
は、先行きに対する期待が米金利を下支え。米10年
債は2%台半ばでの推移を見込む
◆ 米国株は底堅いが、目先の上昇余地は限定的
米国株は、景気回復期待が維持され底堅いものの、
上値の重い展開を予想。企業業績から見た株価は割
高で、新政権の政策不透明感の高まりにも留意の要
◆ ドルの上値が重い展開
来年の米利上げを相応に織り込む中、ドルの上値が
重い展開を予想。投機筋のドル買い持ちが積みあが
っており、ポジション調整でドル高一服の可能性も
目
次
1.今月の視点 ----------------------------------------------- 1
2.金融市場の全体観 ----------------------------------------- 2
3.米国経済・金融市場動向 ----------------------------------- 3
(1)経済動向 ------------------------------------------- 3
(2)金融市場動向 --------------------------------------- 4
4.欧州経済・金融市場動向 ----------------------------------- 6
5.新興国市場動向 ------------------------------------------- 7
6.国内経済・金融市場動向 ----------------------------------- 8
(1)経済動向 ------------------------------------------- 8
(2)金融市場動向 -------------------------------------- 10
7.為替市場動向 -------------------------------------------- 13
8.原油市場動向 -------------------------------------------- 14
9.予測表 -------------------------------------------------- 15
(資料1)日本経済、米国経済予測総括表 ---------------------- 16
(資料2)月間スケジュール ---------------------------------- 17
(資料3)四半期スケジュール -------------------------------- 19
(資料4)内外主要経済指標 ---------------------------------- 20
(資料5)内外主要金融指標 ---------------------------------- 21
1.今月の視点
~トランプ・ショックと「良いドル高」~
12 月初に、米国大統領選後のニューヨーク、ワシントンを訪問し米国で体感した印象は、どちらの大統領であっ
ても、一度決まった以上はその流れにつく、さながら「for the flag」(米国の国旗に向かって)といった意識と思われ、
日本のトランプ氏への疑心暗鬼と大きなギャップを感じた。8 年前、オバマ大統領は「change」の掛け声で大統領に
躍り出たが、皮肉にも 8 年間、「何も変わらない」という不満と閉塞感が、新たな「change」をもたらす潮流としてトラン
プ氏を大統領にさせたと解釈される。それはまさに「世直し」の意識であり、オバマ政権の延長線上にあるクリントン
氏ではないとの判断だった。トランプ氏と 36 年前のレーガン政権とが対比されることが多い。図表は両者の置かれ
た局面を比較したものだ。レーガンの置かれた局面は「3H」、高失業と高インフレの併存するスタグフレーションとさ
れる難病であるが、それまでの正統的な経済学では処方箋が描けていない状況にあった。こうした閉塞感のなか
で「世直し」の意識が、「強いアメリカ」とマネタリストを中心とした新たな経済学の潮流、サプライサイダーを中心とし
た潮流となった。今回、「3L」という「低温経済」の難病局面は前回以上とも言えるが、正統的な経済学の処方箋が
描けない状況は共通している。また、長期停滞不安を拭い去ることもできない閉塞感が、「世直し」の意識と「強い
アメリカ」と財政を中心とした新たな経済学の潮流をもたらした。どちらの大統領にも経済学の深い造詣があったと
は思えないが、「世直し」の世論が新たな経済政策の潮流と新たな大統領を導いたと解釈できる。
トランプ氏の政策で注目されるのは財政の拡大とされるが、これには先述のレーガノミクスと同様にサプライサイ
ドを中心とした成長戦略の側面があることに注目する必要がある。なかでも税制改革で特に注目されるのは法人
税。税率の引下げ(35%→15%)、設備投資の初年度全額償却、レパトリ減税等である。また、インフラ投資が重視
され、ロス=ナバロ案(自力調達プラン)やインフラ銀行創設(ムニューチン次期財務長官、11/16)などの実施が予
定されている。ロス=ナバロ案では、民間からの借入もしくは株式調達が中心となって、株式の多くの部分を税額
控除の対象とし、民間資金をベースとしてインフラ投資をファイナンスすることが狙いとなる。また、米国内だけでな
く海外から米国に対する資金還流が重要となる。日本のソフトバンクの孫社長が米国に 500 億ドルの投資と 5 万人
の雇用創出をコミットした動きは、まさにトランプ氏が目指すものと考えられる。
今後、成長のエンジンとなる米国への資金や企業活動がシフトすることが予想以上のペースで強まる可能性が
ある。そもそも経常赤字国である米国への資金還流は重要であるが、今回、米国がインフラ投資を重視するなか、
米国への様々な形での投資資金の流入が重要になる。その結果として米ドルが上昇しても、米国企業活動の活
発化、株式市場の上昇、雇用改善が続くうちは、「良いドル高」として一定のドル高も許容されやすいのではないか。
1980 年代前半のレーガノミクス的な潮流が再び生じ、米国へ投資資金が向かいやすい。日本の市場参加者も発
想の転換を図る必要がある。
【 図表1:就任当初の経済情勢 】
レーガン
トランプ
特徴
3H(3つの高い)
3L(3つの低い)
失業率
7.1% (高失業)
4.9%(低失業)
インフレ率
12.6%(高インフレ)
1.5%(低インフレ)
金利
11.6%(高金利)
2.4%(低金利)
(注) レーガン政権は「1981 年大統領経済報告」(1981 年 2 月)に掲載された当時の直近値。トランプ次期政権は
2016 年 11 月時点の直近値(米国債 10 年利回りは 11 月末値)。
(資料)各種指標より、みずほ総合研究所作成
(チーフエコノミスト 高田 創)
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金融市場マンスリー(2016 年 12 月 20 日号)
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