金融市場マンスリー - みずほ総合研究所

金融市場マンスリー
2017 年 1 月 18 日号
◆ 米国債利回りは横ばい圏での推移を予想
米10年国債利回りは2%台半ばを中心とした推移を
予想。ただし、米新政権の政策や欧州政治情勢で上
下に振れる可能性に留意が必要
◆ 米国株は景気回復期待を下支えに底堅い推移
米国株は、景気回復期待を下支えに底堅い推移を予
想するも、米新政権の政策しだいで上下に大きく振
れる可能性。企業業績が株価のサポート材料に
◆ ドルの上値が重い展開が続く見込み
米新政権の政策不透明感から、当面ドルの上値が重
い展開を予想。その後は、米景気指標をにらみ緩や
かにドル高が進展する見通し
目
次
1.今月の視点 ----------------------------------------------- 1
2.金融市場の全体観 ----------------------------------------- 2
3.米国経済・金融市場動向 ----------------------------------- 3
(1)経済動向 ------------------------------------------- 3
(2)金融市場動向 --------------------------------------- 4
4.欧州経済・金融市場動向 ----------------------------------- 6
5.新興国市場動向 ------------------------------------------- 7
6.国内経済・金融市場動向 ----------------------------------- 8
(1)経済動向 ------------------------------------------- 8
(2)金融市場動向 -------------------------------------- 10
7.為替市場動向 -------------------------------------------- 13
8.原油市場動向 -------------------------------------------- 14
9.予測表 -------------------------------------------------- 15
(資料1)日本経済、米国経済予測総括表 ---------------------- 16
(資料2)月間スケジュール ---------------------------------- 17
(資料3)四半期スケジュール -------------------------------- 19
(資料4)内外主要経済指標 ---------------------------------- 20
(資料5)内外主要金融指標 ---------------------------------- 21
1.今月の視点
~2016 年の歴史的転換から 2017 年は新たな潮流に~
筆者が昨年後半からストーリーラインとして語っているのは、2016 年は歴史的な大きな節目の年ではなかったか
との問題意識である。それは、トランプ・ショックとして象徴的に語られやすいが、その底流に流れた世界的バラン
スシート調整における閉塞感、「3L」すなわち、低成長・低インフレ・低金利の現実からの逆バネが世直しとしての
サプライズを生じさせた。同時に、その処方箋として金融政策に極限まで依存した状況の限界が、現象面としては
歴史的な金利水準のボトムを付け、金融政策への過度な依存からの代替政策の模索を生じさせたと認識している。
図表 1 は日米独の 10 年国債利回りの長期推移を示す。1980 年代初に歴史的ピークを付けたあと、傾向的な金利
低下が 30 年以上続き、2016 年にボトムを付けた可能性がある。2016 年半ばの、米国 10 年金利の 1.358%、日本
の▲0.295%、ドイツの▲0.189%がそれにあたる。その後の状況は、依然、先述の「3L」の後遺症を引きずるだけ
に、V 字上昇にはならないだろう。ただし、1970 年代の金融の自由化と金融緩和で金融政策に過度に依存した潮
流にも転換が生じたのではないか。そもそも、1930 年代の世界大恐慌という未曾有のバランスシート調整による閉
塞感が世直しとして、財政政策を重視したケインズ経済学の台頭を生んだ。戦後、ケインズ経済学の潮流が続い
たが、1970 年代に高インフレ、高失業率というスタグフレーションのジレンマ状況が生じたなか、金融政策を重視し
た潮流に転換し、その潮流のもと 30 年以上の金融政策に依存した潮流が続いた。2007 年以降、それまでの日本
に加えて、米欧もサブプライム問題以降のバランスシート調整が顕現化し、そうした大恐慌以来の危機のなかでの
処方箋を模索した 10 年間(decade)であった。10 年に渡るバランスシート調整に伴う危機の繰り返しのなか、金融
政策における劇薬の投与がマイナス金利にまでつながった。それは同時に、通貨戦争としての性格を強めていっ
た。しかし、先進国の通貨戦争はゼロサムゲームで近隣窮乏化をもたらすという現実に対峙したことが、その代替
策としての財政政策への依存や成長戦略等への期待が、今日 2017 年の状況と考えることができる。トランプノミク
スは、そうした閉塞感が生んだものとも考えられる。同様に、20 年近く前からバランスシート調整にあった日本が既
に取り組んでいたアベノミクスもバランスシート調整に伴う閉塞感からの世直しとして、トランプノミクスと同じ潮流と
評価することもできる。2017 年は 2016 年の転換の後、新たな潮流に踏み出した年になるのではないか。
【 図表1:日米独10年国債利回りの長期推移 】
18
(%)
16
14
米国
ドイツ
日本
12
10
8
6
4
2
0
-2
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015 (年)
(資料) Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
(チーフエコノミスト 高田 創)
1
金融市場マンスリー(2017 年 1 月 18 日号)
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