市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 5 月 1 日(金)発行 No.058
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
正念場を迎える米景気、雇用統計は反発するか
【高金利通貨】
RBNZ の政策スタンスに変化!? 利下げの可能性に言及
【アウトルック】 正念場を迎える米景気、雇用統計は反発するか
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円↑ 正念場を迎えつつある米景気。4 月の経済指標が反発すれば、米景気の
先行きに楽観論が広がり、利上げ観測高まろう。真逆のケースにも要注意
<材料>ISM 非製造業(5 日)、ADP 雇用(6 日)、雇用統計(8 日)
ユーロ/米ドル↑ギリシャ支援で合意すれば、いったんはユーロ買い材料。ただし、先行きは
経済構造改革の遅れや新たな支援策の交渉難航など売り材料の発生も?
<材料>ギリシャ IMF 返済(6 日)、同国債借り換え(8 日)
英ポンド/円↓ 総選挙は接戦が予想され、どの政党も過半数の議席を獲得できなければ、
投開票日以降も政治の不安定がポンドの重石になりそう
<材料>総選挙投開票(7 日)
豪ドル/円↓ 利下げなら豪ドル安に。据え置きなら前回同様に豪ドル高か。市場の見方は二分
<材料>RBA(豪中銀)の会合(5 日)
トルコリラ/円↓消費者物価が上振れれば、リラ安要因。下振れしてもエルドアン政権から
利下げ圧力が強まれば、やはりリラ安要因か
<材料>消費者物価 (3 日) 要人発言(利下げ圧力?)
◆↑↓→は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、結果を保証するものではありません)
今週のレビュー:米景気低調でドル安、円も連れて安い
ドル円は 119 円を挟んで小動きでしたが、ドルは円以外の通貨に対して下落しました。1-3 月期 GDP な
ど米経済指標は引き続き軟調でした。FOMC は、「景気減速は一時的な面もある」としましたが、景気や物
価に関して慎重な判断を示したため、利上げ観測はやや後退しました。円もドルに連れる形でその他通貨に
対して軟調でした。30 日に日銀が金融政策の現状維持を決定すると、株価が大幅に下落し、円がリスクオ
フでやや買われる場面がありました。
ユーロは上昇しました。ドル安の裏返しの面もありましたが、景気に改善の兆しがみえたことに加えて、ギリ
シャ政府がバルファキス財務相を交渉担当から事実上外したことで、ユーロ圏との合意に近づくとの期待が
ユーロ買いにつながったようです。
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ポンドも堅調でした。総選挙に関する世論調査で保守党が労働党をわずかながらリードしたこと、BOE(英
中銀)自身が「次の一手は利上げ」と認めたことなどが材料となりました。
原油価格が堅調で、鉄鉱石価格にも下げ止まりの兆候があり、豪ドルやカナダドルも上昇しました。一方、
RBNZ(NZ 中銀)が 30 日の会合後に「利上げは検討していない」と発表したため、NZ ドルが下落しました。
トルコリラや南アランドも対ドルで上昇しましたが、独自の材料があったというよりドル安の裏返しの面が強か
ったようです。トルコリラや南アランドは対円でも上昇しました。
来週のプレビュー:重要性増す雇用統計、ギリシャとユーロ圏は合意するか
米国の 1-3 月期 GDP は、弱かった 1-3 月の経済指標の集大成と位置付けることができそうです。5 月 1
日の ISM 製造業景況指数(本稿執筆時点で未発表)や 8 日の雇用統計など、4 月の経済指標が上向きと
なれば、米景気の先行きに対する楽観論が台頭しそうです。ドル円が 120 円を超えて上昇することができる
かどうかの鍵は、正念場を迎えつつある米景気が握っているのかもしれません。
とりわけ、雇用統計が重要性を増しています。3 月の雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が前月
比+12.6 万人と、13 か月ぶりに+20 万人を下回りました。新規失業保険申請件数は 4 月に入って約 15 年
ぶりの低水準で概ね推移しており、NFP の反発が期待されるところです。また、4 月中旬に公表されたベー
ジュブック(地区連銀経済報告)では、入門レベルの賃金にも上昇圧力が報告され、労働需給のひっ迫を
示唆しました。雇用統計のうち、伸び悩む時間当り賃金の上昇率が加速するかどうかも要注目です。さらに、
失業率が 3 月の 5.5%から一段低下するようであれば、賃金インフレにつながりかねない完全雇用に近づい
ているとの見方が増えそうです。
ギリシャがユーロ圏と合意に達すれば、11 日のユーロ圏財務相会合で支援金の承認を得られることがほ
ぼ確実となりそうです。その場合は、いったんユーロの上昇が想定されます。ただし、それによって問題解決
とはならないでしょう。ギリシャが約束した経済改革を実行できるのかは不透明です。また、現行の支援第 2
弾が終了する 6 月末以降に支援第 3 弾が必要との見方が根強くあります。そのため、夏場以降にギリシャ
の債務懸念が再燃する可能性もあります。それらはユーロの重石となりかねません。
英国では保守党リードの世論調査結果を受けて、ポンドが上昇する場面がありました。しかし、総選挙の前
後にはポンド安になる可能性がありそうです。保守党と労働党の支持率の差はわずかです。どちらが勝って
も、過半数の議席にとどかない、いわゆる「ハング・パーラメント」になる可能性が高く、連立工作が難航して
政治の不安定が長引くかもしれません。また、EU 離脱を主張する英国独立党(UKIP)が二大政党に次ぐ支
持を集めているのも懸念されるところです。
RBA(豪中銀)の会合では、利下げが決定される可能性が据え置きの可能性よりわずかに高そうです。市
場の見方も二分されており、どちらに決まっても、豪ドル相場は動く可能性があります。豪州の雇用統計は、
雇用者数が 2 か月連続で大幅増となった反動が出そうです。
トルコの 4 月の CPI(消費者物価指数)はほぼ横ばいが予想されています。市場予想を上回れば、トルコリ
ラの売り材料になりそうです。一方、市場予想を下回れば、トルコリラ高で反応するかもしれませんが、エルド
アン政権から利下げ圧力が強まるようなら、トルコリラは売り圧力にさらされるかもしれません。
(チーフアナリスト 西田明弘)
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【高金利通貨】RBNZ の政策スタンスに変化!? 利下げの可能性に言及
RBNZ(NZ 中銀)は 4 月 30 日、政策金利を市場予想通り 3.50%に据え置きました。政策金利の据え置き
は 2014 年 9 月以降、6 会合連続となります。
◆利上げの選択肢を外し、政策スタンスは利下げ方向へ◆
声明では、NZ 経済について、低金利、移民増、建設活動や燃料価格の下落に支えられ、年率 3%前後
の成長を続けているとの見解を示しました。一方で、乳製品事業者の所得減少、長引く干ばつの影響、財
政再建や通貨高が経済にとって重石になっていると指摘しました。
インフレ率については、燃料価格の下落や通貨高、世界的な低インフレが、NZ の 1-3 月期 CPI(消費者
物価指数)上昇率を前年比+0.1%に押し下げたと指摘。また、基調インフレは引き続き低いが、徐々に上
向くとの見通しを示しました。そして、「金融政策はインフレの中期的なトレンドに焦点を合わせることになる」と
し、足もとの CPI 鈍化はあまり重視しない姿勢を示しました。
NZ ドルついては、「貿易加重ベースでは、NZ ドルは依然として正当化できないほど高く、持続不可能」
「NZ の主要輸出品価格が下落する中で、通貨高は歓迎できない」と表明し、NZ ドル高を引き続きけん制し
ました。ただ、前回の「実質為替レートのかなりの下方調整が必要」との文言が今回削除されており、NZ ドル
高けん制のトーンは若干弱まったようにも感じられます。
金融政策については、「景気刺激的な金融政策を維持する方針であり、現時点で利上げを検討していな
い」「需要が鈍化し、インフレ圧力の一段の低下が示されれば、利下げを実施する可能性がある」と表明し、
利下げの可能性に言及。過去 2 回の「将来の政策金利の調整が上昇あるいは低下になるかは今後の経済
データ次第」から変更し、政策スタンスが“中立(利上げと利下げの両睨み)”から “利下げ方向”へとシフト
したことを示唆しました。
◆利下げは簡単ではない!?◆
RBNZ が金融政策のスタンスを「利下げ方向」にシフトしたことで、市場では RBNZ の利下げ観測が再び高
まるかもしれません。
市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)によると、4 月 30 日時点で RBNZ が次回 6
月 11 日の会合で利下げを行う確率を約 20%織り込んでおり、12 月の会合まででは利下げの確率は約
70%まで上昇しています。市場は、年内に RBNZ は利下げに踏み切るとの見方が大勢のようです。 利下げ
観測は NZ ドルにとってはマイナス材料です。
ただ、NZ では住宅市場が過熱気味にあります。NZ 不動産協会が発表した 3 月の住宅価格指数は前年
比+9.5%となり、2013 年 11 月以来の高い伸びとなりました。住宅価格の上昇は NZ 最大の都市であるオ
ークランドで顕著となっており、NZ 不動産協会によると、オークランドの住宅価格は 3 月までの 1 年間で約
20%上昇しました。利下げは過熱気味である住宅市場を一段と過熱させる危うさがあります。
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NZ ドル/円は目先、RBNZ の利下げ観測から上値が重くなる、あるいは値を下げる可能性があります。ただ、
住宅市場を踏まえると、RBNZ が実際に利下げを行うのは難しいと考えられます。政策会合が近づくにつれ
て、利下げ観測は後退していく可能性があります。そう考えると、NZ ドル/円は値を下げたとしても、それは一
時的なもので終わるかもしれません。
RBNZ の政策金利の推移
(出所:Bloomberg)
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
5月4日
当社予想
7.70%
16:00 【トルコ】消費者物価指数 前年比(4月)
市場予想
7.60%
前回値
7.61%
原油安にもかかわらず3月は予想外に伸びが加速。トルコリラ安の影響が強く出ている可能
性があり、4月も上振れすれば、トルコ中銀は利下げに一層慎重になりそう
5月5日
13:30 【豪】RBA政策金利発表
2.00%
2.00%
2.25%
1-3月期CPIは前年比+1.3%と、RBAのインフレ目標の下限+2%を一段と下回っており、利
下げが決定される可能性が幾分高いか。ただ、鉄鉱石価格が足もと反発傾向であることか
ら、利下げ観測は後退しており、市場の見方は利下げと据え置きで分かれている。好悪材
料混在で、RBAはきわどい判断を迫られそう
23:00 【米】ISM非製造業景況指数(4月)
57.0
56.2
56.5
昨年後半の平均57.8から今年1-3月は平均56.7へペースダウン。4月は小幅改善を予想
5月6日
21:15 【米】ADP雇用統計(4月)
21.0万人
18.5万人
18.9万人
雇用統計同様にADPも3月は約1年ぶりに20万人割れだった。寒波やストの影響があった
とすれば、4月は若干の反動が期待される
5月7日
5月8日
【EU】ギリシャ、IMFへの利払い2億ユーロ
10:30 【豪】雇用者数変化(4月)
-1.0万人
0.5万人
3.77万人
【豪】失業率(4月)
6.2%
6.2%
6.1%
雇用者数変化はここ2か月、大幅に増加しており、反動減の可能性あり。月々のブレが極端
に大きく、実勢を反映しているとは言い難いものの、為替市場は反応するので要注意。
2014年10月~2015年3月の6か月平均は+2.55万人
21:30 【米】非農業部門雇用者数変化(4月)
24.5万人
23.0万人
12.6万人
【米】失業率(4月)
5.5%
5.4%
5.5%
3月は13か月ぶりに前月比+20万人に届かず、3か月移動平均は+19.7万人だった。2か
月連続で雇用が+20.0万人を大きく下回るようであれば、労働市場の改善に黄信号か
【EU】ギリシャ、短期国債借り換え14億ユーロ
市場予想はBloomberg、5月1日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年10月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
47%
53%
英国
0.50
18%
64%
18%
NZ
3.50
69%
31%
0%
カナダ
0.75
29%
69%
2%
ユーロ圏
0.05
65%
33%
2%
豪州
2.25
90%
10%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。4月30日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
西田 明弘(にしだ あきひろ)
市場調査部 チーフアナリスト
1984 年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを
経て、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテ
ジストとして高い評価を得る。2012 年 9 月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市
場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2J の WEB サイトで「市場調査部レポート」、
「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑
誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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