2015 年 2 月 19 日(木)発行 No.051 市場調査部レポート 0 アウトルック 【アウトルック】 【高金利通貨】 「次は利上げ」である限りドル高基調は不変!? エルドアンの圧力が TCMB(トルコ中銀)の利下げを制約か 【アウトルック】 「次は利上げ」である限りドル高基調は不変!? 今週のレビュー:FOMC 議事録などから米ドルが軟調、資源国通貨が堅調 先週後半以降、米ドルが総じて軟調でした。先週の小売売上高に加えて、鉱工業生産や住宅着工件数 など米国の 1 月の経済指標は軟調なものが多く、また 18 日の FOMC 議事録(1/27-28 開催分)の公表を 受けて、低金利の長期化観測が強まったためです(下表)。一方で、日銀は金融政策の現状維持を決定、 黒田総裁は「必要なら躊躇なく対応する」として追加緩和の可能性を否定しなかったものの、現状では「必 要ない」ことを強調しました。 ギリシャとユーロ圏の交渉難航にもかかわらず、何らかの合意に至るとの期待が根強いためか、ユーロは比 較的に堅調。ポンドは、失業率の低下や BOE(英中銀)議事録(2/5 開催分)を受けて上昇しました。原油価 格が下げ止まりから反発の兆しをみせたことで、資源国通貨が押し並べて堅調、とりわけ NZ ドルの上昇が目 立ちました。 2/17時点 2/18時点 2015年FOMCでの利上げ確率(%) 6月17日 7月29日 9月17日 10月28日 12月16日 24.9 35.8 59.5 67.6 83.0 19.7 28.8 50.2 59.0 76.2 FFレート(政策金利)先物による市場予想 出所:Bloomberg 来週のプレビュー:イエレン証言、ギリシャ支援策期限、TCMB(トルコ中銀)会合に注目 FOMC 議事録は総じて、利上げに慎重な、「ハト」的内容でしたが、一方で利上げの手順や利用するツー ルなどが具体的に検討され、利上げ開始に向けた準備は進められました。また、低金利を十分に長く続け たので、「近い時期」に利上げを開始するのが適切と数人が考えました。 最近の経済指標(強い雇用統計など)や今後の経済指標を受けて、FOMC が早期利上げに傾く可能性も 十分にありそうです。まずは、24-25 日に予定されているイエレン FRB 議長の議会証言に注目です。もともと 「ハト」派の議長が市場の利上げ観測を早めるような発言をするとは考えにくいですが、微妙なトーンの変化 に市場は反応するかもしれません。いずれにせよ、「次の一手は利上げ」である限りドル高基調は変わらない と判断して良さそうです。 ただ、FOMC 議事録によれば、ドル高が米国の輸出を抑制する要因となり続けると予想され、ドル高がさら に進行するリスクを指摘する参加者もいました。今後、FRB 関係者やその他の当局者から、表立って「ドル 高」に懸念が表明されるか要注意でしょう。 1 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. ギリシャ問題は、現行支援策の期限までに、延長に関して何らかの合意に至るものとみられます。ただ、そ れはあくまでも暫定措置であって、財政緊縮など支援条件の緩和に関して交渉は長期化しそうです。政権 担当経験が浅いツィプラス首相が判断ミスをして、「アクシデント」が起こる可能性にも注意が必要かもしれ ません。 TCMB(トルコ中銀)の会合では、利下げが決定されそうです。エルドアン政権の利下げ圧力への抵抗から、 下げ幅は最小限(0.25%)になると予想しています。一時トルコリラ安が進んだことも、大幅な利下げには踏 み切りにくい要因でしょう。 ◆ギリシャ交渉難航、今後どうなる? 16 日のユーロ圏財務相会合において、ギリシャとユーロ圏の交渉が決裂しました。現行支援策の条件緩 和を求め、その交渉期間中のつなぎ融資を求めたギリシャと、現行支援策を延長したうえで支援条件の解 釈を柔軟にするよう交渉に応じるとするユーロ圏との溝が埋まらなかったためです。 現行支援策は 2 月末に期限を迎えます。2 月末をもってギリシャがすぐさまデフォルト(債務不履行)する わけではありませんが、3 月末までには資金不足に陥るようです。また、ギリシャの民間銀行は、ギリシャ国 債を担保に ECB から資金供給を受けることができないので、現在は、ECB の ELA(緊急流動性支援)を利 用しています。しかし、ギリシャとユーロ圏が支援策で合意しなければ、ECB はギリシャの民間銀行に対する ELA を打ち切るかもしれません(ECB は 18 日の理事会で ELA の拡大を決定しましたが、小幅にとどまりまし た)。 ギリシャとユーロ圏の交渉は、2 月末の現行支援策の期限に向けて、あるいはそれを越えても続けられる でしょう。そして、新たな支援策について何らかの形で合意する可能性は引き続き高いと思われます。ただし、 交渉が難航するほど、時間が経過するほどに、ギリシャのデフォルトや「ユーロ離脱(GREXIT)」の観測が高 まって、ユーロの下落やスクオフつながりそうです。 <今後の重要スケジュール> 2 月 19 日 ギリシャが支援延長を申請? 2 月 20 日 臨時のユーロ圏財務相会合?(ギリシャの支援延長申請の期限?) 2 月 28 日 現行支援策の期限 3月 5日 ECB 金融政策会合 3月 9日 ユーロ圏財務相会合 3 月 20 日 フィッチ、ギリシャ格付けの見直し期限 (チーフアナリスト 西田明弘) 2 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. 【高金利通貨】エルドアンの圧力が TCMB(トルコ中銀)の利下げを制約か TCMB(トルコ中銀)は 1 月 20 日に政策金利を 8.25%から 7.75%に引き下げました。そして、1 月 27 日 のインフレ報告では、2015 年末のインフレ率見通しを 5.5%と、昨年 10 月の予想(6.1%)から下方修正し ました。 目標期間 2 月 3 日に発表された 1 月のインフレ率の鈍化幅が十分に大きくなかったことで、TCMB は利下げを検討 する 4 日の緊急会合開催を見送りました。それでも、24 日の定例会合では追加利下げに踏み切りそうで す。 ただ、エルドアン大統領が TCMB に対する利下げ要求を強めていることが、事態を複雑にしているかもし れません。エルドアン大統領は 8 日、政策金利が高すぎるとして、改めて TCMB を批判。また、「金融政策が うまく運営できないのであれば、TCMB は責任を負うべき」とも語りました。 これに対して、TCMB のバシュチュ総裁は 9 日、イスタンブールで開催中の G20 の場で、「高インフレの解 決策は金融引き締めである。経済成長に対して中央銀行ができる最大の貢献は、物価安定を維持すること だ」と反論しました。 24 日の定例会合では、中央銀行の独立性を守るため、また最近のトルコリラ安への配慮から、利下げ幅 を前回と同じ 0.50%ではなく 0.25%に留めるとみています。また、政策金利を据え置くかもしれません。そ れらの場合、トルコリラはいったん上昇する可能性がありそうです。 (チーフアナリスト 西田明弘) 3 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. 来週の主要経済指標・イベント 当社予想 107.0 2月23日 18:00 【独】IFO景気動向指数(2月) 市場予想 - 前回値 106.7 IFOは昨年5月から6か月連続で低下した後、3か月連続上昇。ユーロ安や原油安が企業 の景況感改善に寄与か。ギリシャ情勢はマイナス材料となったか 2月24日 21:00 【トルコ】TCMB政策金利 7.50% 7.25% 7.75% 【トルコ】翌日物貸出金利 11.00% 11.25% 【トルコ】翌日物借入金利 7.00% 7.50% 2月4日の緊急会合開催は見送られたが、TCMB(トルコ中銀)は利下げ含み。ただし、エ ルドアン大統領の利下げ圧力への抵抗やトルコリラ安によって下げ幅は最小限(0.25%) か。 【米】イエレンFRB議長議会証言(24・25日) 世界的な景気減速や金融緩和の流れ、物価下振れ、ドル高の弊害などに言及すれば、 利上げ観測後退でドル売り材料に。逆に、証言から「(利上げ開始まで)忍耐強く」が外れ れば、早期利上げを示唆か 2月25日 0:00 【米】消費者信頼感指数(2月) 101.0 100.0 102.9 1月は雇用の改善やガソリン安を背景に2007年夏以来の高水準だった。2月も状況に大 きな変化はなさそうだが、1月に大幅上昇した反動が出そう 2月26日 22:30 【米】消費者物価コア指数 前年比(1月) 1.5% 1.6% 1.6% CPIコアは昨年5月の2.0%をピークに鈍化傾向。エネルギーコストの低下やドル高による 輸入品価格の低下が寄与している模様 2月27日 2月28日 8:30 【日】消費者物価コア指数 前年比(1月) 2.0% 2.1% 日銀によれば消費税の影響は+1.7%。12月はその影響を除くとわずかな上昇(0.4%)に とどまった。2%物価目標までは遠い道のりであり、日銀の追加緩和に対する期待が高ま りそう 【欧】ギリシャに対する現行支援策の期限 市場予想はBloomberg、2月19日10:00現在。発表日時は日本時間。 2015年8月までの金融政策の市場予想 政策金利% 利下げ 現状維持 利上げ 米国 0-0.25 0% 69% 31% 英国 0.50 28% 42% 30% ユーロ圏 0.05 53% 47% 0% NZ 3.50 39% 61% 0% カナダ 0.75 90% 10% 0% 豪州 2.25 90% 10% 0% OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。2月18日時点 出所:Bloombergより作成 4 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. 本資料ご使用上の留意点 本資料は当社が信頼できると考えるデータをもとに作成されておりますが、機械作業上データに誤りが発生する可能性も あり、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示したすべての内容は、当社の作成時点での判 断を示しているに過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的と したものではありません。また、投資等に関するアドバイスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレ ポートを発行している、或いは今後発行する可能性があります。本資料の利用に際してはお客様御自身でご判断ください ますようお願い申し上げます。 お取引に関しての注意事項 ●取引開始にあたっては契約締結前書面をよくお読みになり、リスク・取引等の内容をご理解いただいた上で、ご自身の 判断にてお願いいたします。当社の外国為替証拠金取引は、元本および収益が保証されているものではありません。ま た、取引総代金に比較して少額の資金でお取引を行うため、多額の利益となることもありますが、通貨価格の変動や金利 動向の変化により預託した資金以上の損失が生じる可能性があります。 また、外貨事情の急変、外国為替市場の閉鎖等、不可抗力と認められる事由により外国為替取引が不能となる可能性 があります。 ●取引手数料は価格上乗せ方式で、新規および決済取引のそれぞれに必要となります。手数料額は 1,000 通貨単位当 たり 10~100 円(対ドル通貨は 0.1~1 ドル)で、通貨ペア及び諸条件により異なります。 ●当社が提示するレートには、買値と売値に差(スプレッド)があります。流動性が低くなる場合や、天変地異、戦争等によ る相場の急激な変動が生じた場合、スプレッドが広がることがあります。 ●取引に必要な証拠金額は、個人のお客様の場合取引総代金の 4%、法人のお客様の場合取引総代金の 2%となりま す。 当資料に関するお問い合わせは、下記へお願いします。 カスタマーデスク 0120-455-512 (9:00~22:00 土日を除く) 株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J) 金融商品取引業 関東財務局長(金商)第 2797 号 (加入協会) 一般社団法人金融先物取引業協会 5 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. 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