2015 年 9 月 11 日(金)発行 No.073 市場調査部レポート 0 ウィークリー・アウトルック 【アウトルック】 【高金利通貨】 FOMC と株価をにらみ、神経質な推移が続きそう RBNZ 利下げに踏み切り、追加利下げを示唆 【アウトルック】 FOMC と株価をにらみ、神経質な推移が続きそう 来週の注目通貨ペア: 米ドル/円↓ FOMC を控え、思い切ったポジションを取りづらい。利上げ見送りなら米ドル売りか? <材料>小売売上高、NY 連銀製造業(15 日)、FOMC(17 日) ユーロ/米ドル↑ ここもとのユーロ圏経済指標は上振れが目立つ。米ドル軟調ならユーロ高か。 <材料>独・ユーロ圏 ZEW 景況感(15 日)、ユーロ圏 CPI 改定値(16 日) トルコリラ/円↓ 米利上げなら資金流出懸念、見送りなら世界景気後退懸念が重石に。 <材料>失業率(15 日) ◆↑↓は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、方向性を保証するものではありません) 今週のレビュー:週前半リスクオフ後退も、週後半はリスクオフ再燃 今週の為替相場は、週前半はアジア株の大幅高でリスクオフが後退、円売りが加速しました。しかし週後 半に入り、米国株下落からリスクオフが一時再燃。円買い戻しと株式の利益確定売りが進展する場面も。 米ドル/円は、上海株の下げ止まりや日経平均の大幅高を受けて、一時 121 円台を回復。週後半に米国 株が下落、VIX 指数(恐怖指数)が急上昇すると、一時 120 円を割り込む場面もみられましたが、週末には 120 円台を回復しました。ユーロは、対米ドル、対円とも堅調。独貿易収支やユーロ圏 GDP など経済指標の 上振れもあり、ユーロ/円は 8 月末の水準に戻しました。ポンド/円は、ユーロ高に連れ高したほか、英損保 大手買収に絡むポンド買い観測が高まり、一時 187 円台に。BOE(英中銀)は政策金利を据え置きました。 豪ドルは、週前半のリスクオフ後退時には際立って強くリバウンドしましたが、週後半にリスクオフが再燃す ると、急速に値を消す場面がみられました。NZ ドルも、ほぼ豪ドルに似た動き。10 日早朝に NZ 中銀は 0.25%の利下げを決定。NZ ドルは一時、対米ドル、対円とも下落しました。カナダドル/円は、円売り進展で 一時 92 円を超えましたが、WTI 原油先物の軟調から、上値の伸びは限定的でした。 トルコリラ/円は、一時 40 円を超えましたが、トルコ軍のクルド労働者党(PKK)の拠点に対する空爆の激化 など地政学リスクの高まりから、週後半は下値を探る推移となりました。南アランドは、週初安値 8.49 円から 一時 8.84 円と 4.1%の大幅上昇を演じましたが、週後半のリスクオフ気運の高まりから、8.60 円に下落しま した。ただ、週末の資源価格上昇で 8.8 円台半ばに値を戻しました。 1 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. 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This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. 来週のプレビュー: FOMC と株価をにらみ、神経質な推移が続きそう 今週前半は、連休明けの上海株が週初小幅下落に止まり、8-9 日と続伸したことが、リスクオフの後退に 繋がりました。 米ドル/円ほかクロス円は軒並み上昇。当社取扱いの通貨ペア(対円)で、先週末(4 日)NY 市場終値から 今週 9 日高値までの上昇率を描いたのが、下のグラフです。 9/4 NY 市場終値から 9 日高値までの上昇率 (出所:M2J) 4.5% 4.0% 4.0% 3.5% 3.9% 3.2% 3.2% 3.0% 2.7% 2.5% 1.9% 1.8% 2.0% 1.5% 1.2% 1.0% 0.5% 0.0% ポンド円 ドル円 ユーロ円 NZドル円 豪ドル円 ランド円 加ドル円 リラ円 上海株下落と、そこから派生した中国景気後退懸念から大幅に下落していたオセアニア通貨や、原油や 銅など資源価格下落を受けて軟調が続いた南アランド/円など資源国・新興国通貨の上昇率が顕著でした。 「山高ければ、谷深し」ならぬ、「谷深ければ、山高し」といったところです。 一方、いわゆる「メジャー通貨」の中で、ポンド/円の上昇率の高さが際立ちました。上記「レビュー」で触れ たとおり、8 日夕に損保大手の三井住友海上火災保険が英損保大手のアムリンを 6,420 億円で買収すると 発表。買収のためにポンドを大量に調達するとの観測が高まり、同日のポンド/円相場が 15 時少し前から動 意づいたことが他のクロス円にも波及、円安の流れが加速しました。 この大型 M&A の話題は、8 日の午前中に複数の大手通信社が観測記事を配信していましたが、同日は 上海株が一時前日安値を下回り、日経平均が終値、ザラバ(取引時間中を指す相場用語)とも 8 月安値を 下回っていました。東証大引けにかけて上海株が下げ幅を縮小、日本時間 15 時頃には前日比プラス圏に 戻し、上げ幅を拡大したこともリスクオフ後退気運を高め、円安を加速させたといえそうです。 翌 9 日には日経平均は前日比 1,343 円高、歴代 6 位の上昇幅を記録し、円相場も軒並み下落しました。 2 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. しかし 9 日の米国株が下落し、恐怖指数といわれる VIX 指数が急上昇するなど、「米国発のリスクオフ」が 台頭すると、リスク回避の円買いが再び増加。 翌 10 日の日経平均は一時 18,000 円を割り込むなど、週前半のリスクオフ後退ムードがしぼみました。 前ページと同様のグラフを、「先週末(4 日)NY 市場終値から、10 日安値(15 時時点)」で描いたものが、 以下のグラフです。 9/4 NY 市場終値から 10 日安値までの騰落率 (出所:M2J) NZ ドル/円、南アランド/円の上昇率が 0.5%未満に落ち込んだほか、とくにトルコリラ/円は前週末比マイ ナス 0.9%に落ち込み、9 月 7 日に付けた年初来安値(38.89 円)に近づく動きをみせました。 リスクオフ気運が高まると、リスク意識の変化を反映し易い新興国・資源国通貨が大きく売られ、リスクオフ 気運が後退すると、大きく下落した新興国・資源国通貨が反発するという正に「教科書通り」の相場展開が みられたわけです。来週も日米欧・中国の株価動向が為替市場の大きな材料となるでしょう。 来週は、15 日に日銀、17 日に FOMC(米連邦公開市場委員会)が政策金利を発表します。 日銀については、追加緩和を望む声も聞かれるものの、各種経済指標が安定して推移していることから、 政策据え置きが予想されます。会合後の黒田日銀総裁会見では、追加緩和の是非が問われた場合に、 必要性を否定する発言があれば、円買いの勢いがやや増すかもしれません。 FOMC は、「9 月利上げ」の可否が焦点となりますが、ここもとの金融市場の大きな揺れや、先の G20(主要 20 ヵ国財務相・中央銀行総裁会議) 共同声明に「米利上げへの懸念」が織り込まれたことから、利上げに 慎重な「ハト派」が増えている可能性もありそうです。「9 月利上げ」見送りなら、米ドルは弱含みそうです。 (シニアアナリスト 山岸永幸) 3 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. 【高金利通貨】 RBNZ 利下げに踏み切り、追加利下げを示唆 RBNZ は 9 月 10 日、政策金利を 3.00%から 0.25%引き下げ、2.75%とすることを決定しました。利下げ は今年 6 月、7 月、9 月と 3 会合連続です。 RBNZ の政策金利の推移 出所:Bloomberg ◆追加利下げを示唆◆ 声明では、利下げについて「経済の鈍化や、将来の CPI(消費者物価指数)上昇率を平均で目標中央値 である 2%近くに維持する必要性によって正当化される」と表明。「現時点では若干の追加利下げを行う可 能性が高いとみられる」とし、追加利下げを示唆しました。 RBNZ は政策金利の目安になると考えられている 90 日物銀行手形金利の見通しを公表。来年 7-9 月 期までに 2.6%へ低下するとの見方が示されました。RBNZ の政策金利は今回の会合で 2.75%となったこと から、現時点で RBNZ はさらに 1 回の利下げを見込んでいるようです。 4 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. 90 日物銀行手形金利 出所:RBNZ ◆次回 10 月 29 日会合で追加利下げか◆ 追加利下げのタイミングについては、RBNZ は今回の声明で「新たに出てくる経済データ次第」とし、ヒント は与えませんでした。 RBNZ の政策運営に大きな影響を与える CPI(消費者物価指数)上昇率をみると、依然として RBNZ の目 標を大幅に下回っている状態です。 CPI 上昇率(前年比) 出所:Bloomberg 5 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. また、NZ の輸出全体の約 3 割を占め最大の輸出品である乳製品の価格は、需給の悪化から昨年 2 月 をピークに大幅に下落。8 月には 12 年半ぶりの安値をつけました。乳製品価格の下落は NZ 経済にとって 打撃となっており、RBNZ は今回、2016 年 1-3 月期の GDP 成長率見通しを前回 6 月の前年比+3.3%か ら+2.2%へと下方修正しました。 乳製品価格は足もと持ち直しているものの、依然として低水準であり、引き続き経済成長への下押し圧力 となりそうです。 乳製品価格(GDT 価格指数) 出所:GDT RBNZ の次回政策会合は 10 月 29 日です。それまでに多くの NZ の経済指標が発表されます。 <次回会合までに発表される主な NZ 経済指標> ・9 月 17 日:4-6 月期 GDP ・9 月 30 日:9 月 ANZ 企業景況感 ・10 月 16 日:7-9 月期 CPI *9 月 15 日、10 月 6 日、20 日:GDT(乳製品電子オークション) これらの結果を見極めて、RBNZ は 10 月 29 日の会合で、追加利下げに踏み切るかどうかの判断を下す と考えられます。経済見通しの悪化や低水準である乳製品価格、目標を下回る CPI 上昇率を踏まえると、 乳製品価格の大幅な上昇や、CPI がよほど強い数字にならなければ、10 月 29 日の会合で 0.25%の追加 利下げに踏み切るとみられます。 市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)では、9 月 10 日時点で RBNZ が 10 月 29 日に利下げを行う確率を 4 割程度織り込んでいます。 (アナリスト 八代和也) 6 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. 来週の主要経済指標・イベント 当社予想 9月15日 市場予想 前回値 【日】日銀目標金利発表 金融政策は据え置きが予想される。ただし、日銀は物価見通しの下方修正を検討しており、10 月30日の会合&展望レポート発表に向けて、追加緩和期待が高まるか。 17:30 【英】消費者物価指数 前年比(8月) 0.1% -0.1% 0.1% 労働市場のひっ迫により賃金上昇率が高まっており、BOE(英中銀)はインフレ率が高まるとの 見方を強めている。 21:30 【米】小売売上高 前月比(8月) 0.7% 0.3% 0.6% 8月の自動車販売台数は約10年ぶりの高水準で、小売売上高全体を押し上げた模様。ガソリン 価格の下落はマイナス要因。金融市場の動揺の影響が出てくるか。 9月16日 21:30 【米】消費者物価コア指数 前年比(8月) 1.8% 1.9% 1.8% 食料とエネルギーを除くコアは2%をやや下回る推移が続いている。ただし、FRBが重視する PCE(個人消費支出)コアは1%台前半での推移。 9月17日 7:45 【NZ】GDP 前期比 季調済(4-6月期) 【NZ】GDP 前年比 季調済(4-6月期) 0.4% 2.4% 0.6% 2.5% 0.2% 2.6% RBNZは10日に利下げを行い、追加利下げを示唆した。GDPが予想比下振れた場合、次回10月 会合での利下げ観測が強まる可能性あり。 9月18日 3:00 【米】FOMC金利誘導目標発表 3:30 【米】イエレンFRB議長会見 0~0.25% 0.25~0.50% 0~0.25% 「据え置き」を予想。経済見通しが発表され、議長の会見も予定されている。「利上げ」のタイミン グ・条件に関する示唆はあるか。利上げに踏み切る場合は、「小幅」「ゆっくり」を強調か。 市場予想はBloomberg、9月11日10:00現在。発表日時は日本時間。 2016年2月までの金融政策の市場予想 政策金利% 利下げ 現状維持 利上げ 米国 0-0.25 0% 33% 67% 英国 0.50 12% 60% 29% NZ 2.75 70% 30% 0% カナダ 0.50 42% 58% 0% ユーロ圏 0.05 76% 24% 0% 豪州 2.00 58% 42% 0% OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。9月10日時点 出所:Bloombergより作成 7 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. <執筆者> 山岸 永幸(やまぎし ながゆき) 市場調査部 シニアアナリスト 1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。 1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均 衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、 様々なメディアに出演し、活躍中。 八代 和也(やしろ かずや) 市場調査部 アナリスト 2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入 社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした 「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。 8 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. All rights reserved. This Report is for Authorized Recipients Only and Not for Public Distribution. 本資料ご使用上の留意点 本資料は当社が信頼できると考えるデータをもとに作成されておりますが、機械作業上データに誤りが発生する可能性もあり、 当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示したすべての内容は、当社の作成時点での判断を示し ているに過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものでは ありません。また、投資等に関するアドバイスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行し ている、或いは今後発行する可能性があります。本資料の利用に際してはお客様御自身でご判断くださいますようお願い申し 上げます。 お取引に関しての注意事項 ●取引開始にあたっては契約締結前書面をよくお読みになり、リスク・取引等の内容をご理解いただいた上で、ご自身の判断 にてお願いいたします。当社の外国為替証拠金取引は、元本および収益が保証されているものではありません。また、取引総 代金に比較して少額の資金でお取引を行うため、多額の利益となることもありますが、通貨価格の変動や金利動向の変化に より預託した資金以上の損失が生じる可能性があります。 また、外貨事情の急変、外国為替市場の閉鎖等、不可抗力と認められる事由により外国為替取引が不能となる可能性があ ります。 ●取引手数料は価格上乗せ方式で、新規および決済取引のそれぞれに必要となります。手数料額は 1,000 通貨単位当たり 10~100 円(対ドル通貨は 0.1~1 ドル)で、通貨ペア及び諸条件により異なります。 ●当社が提示するレートには、買値と売値に差(スプレッド)があります。流動性が低くなる場合や、天変地異、戦争等による相 場の急激な変動が生じた場合、スプレッドが広がることがあります。 ●取引に必要な証拠金額は、個人のお客様の場合取引総代金の 4%、法人のお客様の場合取引総代金の 2%となります。 当資料に関するお問い合わせは、下記へお願いします。 カスタマーデスク 0120-455-512 (9:00~22:00 土日を除く) 株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J) 金融商品取引業 関東財務局長(金商)第 2797 号 (加入協会) 一般社団法人金融先物取引業協会 9 Copyright © 2015 MONEY SQUARE JAPAN, INC. 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