市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 3 月 12 日(木)発行 No.053
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
各国の経済政策イベントをにらむ一週間に
【高金利通貨】 RBNZ 利下げの可能性は低い!? トルコ中銀は?
【アウトルック】 各国の経済政策イベントをにらむ一週間に
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円↑ FOMC で「忍耐強く」が消えても、「ハト派」的なトーンが残る可能性も !?
<材料>FOMC、フィラデルフィア連銀景気指数(18 日)
ユーロ/米ドル↓ギリシャ支援延長も、チプラス政権には厳しい条件が課せられそう。
<材料>EU 首脳会議(19~20 日)
トルコリラ/円↓大統領の利下げ圧力と TCMB(トルコ中銀)のリラ防衛がぶつかり合う展開?
<材料>TCMB 政策金利(17 日)
NZ ドル/円→政策金利据え置きも利下げ圧力が残る形に?今後の経済指標にも要注目。
<材料>10-12 月期経常収支(18 日)、10-12 月期 GDP(19 日)
◆↑↓は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、結果を保証するものではありません)
今週のレビュー:米雇用統計上振れで米ドル独り勝ち
今週の為替相場は米雇用統計の上振れ、ECB の QE(量的緩和)開始から、米ドルが全面高となりました。
米ドル/円は、欧米金利差拡大から一時 122 円を超えましたが、日米欧の株価下落で反落。ただ、年央
の利上げ開始が意識され、底堅く推移しました。ユーロは、ECB による QE が 9 日から開始、独 10 年債利
回りは過去最低となり、米 10 年債利回りとの差は 1989 年以降で最大となりました。ユーロ/米ドルは約 12
年ぶりの安値を記録しました。ポンドは BOE(英中銀)の金融政策委員が、英国の経常赤字は高水準で、ポ
ンド急落のリスクがあると述べたことから、対米ドルで 20 ヵ月ぶりの安値となりました。
豪ドルは、米ドル高進展から、対米ドルでは年初来安値を更新しました。対円での下げは限定的でした。
NZ ドルは、粉ミルクに毒物を混入するとの脅迫があったことが嫌気され、対米ドル、対円ともに下落。ただ、
NZ 中銀が 12 日に政策金利を据え置いたことで、やや反発しました。カナダドルは、WTI 原油先物が再び軟
調となり弱含み。トルコリラは、トルコ中銀がドル建て、ユーロ建ての 1 週間物貸出金利を引き下げ、一時大
幅に反発しました。その後リスクオフ台頭で反落しましたが、46 円を挟んだレンジ推移となりました。新興国
通貨軟調と計画停電の影響が懸念される南アランドは対米ドルで一時 13 年ぶりの安値を記録しました。
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来週のプレビュー:FOMC をはじめ経済政策イベントが目白押し
来週は、18 日の米 FOMC を筆頭に、各国で経済政策がらみのイベントが多い一週間です。
まず、17 日には日銀が目標金利を発表、同日 15 時半からは黒田総裁の定例会見が行われます。2 月
の決定会合後の会見では、景気の先行きについて輸出の持ち直しや在庫調整進展を背景に「緩やかな回
復基調を続けている」と述べ、物価面でも「2015 年度を中心とする期間に 2%程度に達する可能性が高
い」と、従来どおりの主張を繰り返しました。これらを踏まえ、市場が注目する追加緩和の可能性について
「直ちに追加的なことを考える必要はない」と明言しました。ただし、9 日発表の 10-12 月期 GDP が下振れ
するなど景気回復の確かさに揺らぎが生じているため、記者との質疑応答で先行きの景気判断と追加緩和
の可能性について、どのような言及があるかに注目が集まりそうです。
同じく 17 日(日本時間 21 時)には TCMB(トルコ中銀)が政策金利を発表します。エルドアン大統領が大幅
利下げを求めて TCMB 批判を続けていることがトルコリラ下落の要因となる一方、ドル建て、ユーロ建て貸出
金利の引き下げなど、リラ防衛に向けた動きも活発化しており、予断を許さない状況です。会合で利下げが
実施されるようなら、トルコリラが一段安する可能性に注意する必要があるでしょう。
翌 18 日には FOMC の金利誘導目標が発表されます。報道機関向けの会見が無かった 1 月とは違い、
会合後のイエレン FRB 議長の会見が予定されている点でも、注目度が高いイベントとなります。市場予想を
大幅に上回った米 2 月雇用統計をうけて、「(利上げ開始まで)忍耐強く(待てる)」との文言が声明文から
削除され、6 月以降の利上げ開始が示唆されるかどうかが最大の注目点とみられます。ただ 2 月雇用統計
では時間当たり賃金の伸びが小幅にとどまり、雇用の「質」を重視するイエレン議長が利上げに慎重な「ハト
派的」な姿勢をみせる可能性もあります。米ドル高加速、失速の両方のシナリオが想定されるでしょう。
経済イベント以外のポイントとしては、ここもと下落が目立つ「新興国通貨」の動向が挙げられます。今週に
入り日米欧の株価が大幅に下落、リスクオフが台頭したことでリスク意識の変化を反映し易い新興国通貨が
軟調となりました。対米ドルで、南アランドは 13 年ぶりの安値、トルコリラも最安値更新が続きました。南アは
資源価格下落や計画停電の影響懸念、トルコはエルドアン大統領からの利下げ圧力など、個別要因はある
ものの、米利上げの「副作用」への警戒の表れとも受け取れるでしょう。
豪ドルや NZ ドルなど、「資源国・新興国通貨」として一括りにされ易いオセアニア通貨にも、資源国通貨の
揺れが波及し、連鎖安を引き起こす可能性も想定されるため、十分な注意が必要と思われます。
(シニアアナリスト 山岸永幸)
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【高金利通貨】 RBNZ 利下げの可能性は低い!? トルコ中銀は?
RBNZ(NZ 中銀)は 3 月 12 日に政策金利を 3.50%に据え置くことを決定しました。昨年 7 月に 0.25%
の利上げを行って以降、これで 6 会合連続の据え置きです。
◆CPI は 2%に戻るとの見通しを示す◆
RBNZ は声明で、今後の金融政策について「将来の政策金利の調整が上昇あるいは低下になるかは、今
後の経済データ次第」と指摘、金融政策スタンスは前回 1 月と同様に中立(利上げと利下げ、どちらもあり得
る)であることが示されました。
RBNZ の金融政策に影響を与える CPI(消費者物価指数)については、今年 1~3 月期に前年比ゼロ%近
辺まで一段と低下し、年内にわたり低水準にとどまるものの、中期的(具体的には 2017 年)にはインフレ目
標(+1~3%)中央値の 2%に戻るとの見通しが示されました
NZ の CPI 上昇率(前年比)
RBNZ の予想
(イメージ)
*赤枠は RBNZ のインフレ目標
(出所:Bloomberg)
◆インフレ期待が政策のカギ◆
RBNZ は今回の声明で、低いインフレ期待の影響を注視するとし、利下げが正当化される条件としてイン
フレ期待の大幅な低下を挙げました。
RBNZ が四半期毎に発表している今年 2 月のインフレ期待調査によると、今後 2 年間のインフレ率予想は
+1.80%となり、前回 11 月調査時の+2.06%から低下、1999 年 5 月調査以来の低水準を記録しました。
今後 2 年間のインフレ率予想は、昨年 5 月調査時の+2.36%を直近のピークに低下傾向にあります。
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インフレ率予想(今後 2 年間)
(出所:Bloomberg)
◆現時点では RBNZ が利下げを行う可能性は低い◆
CPI が RBNZ のインフレ目標の下限を下回っていることが、市場の利下げ観測の一因となっています。ただ、
CPI は中期的には 2%に戻ると RBNZ は予想しており、この状況で RBNZ が利下げに踏み切る可能性は低い
とみられます。
1~3 月期の CPI は 4 月 20 日に発表されますが、前述のように RBNZ は前年比ゼロ%近辺まで低下す
るとの見通しを示しています。10~12 月期の+0.8%から一段と低下したとしても、ゼロ%を大幅に下回るよ
うなことにならなければ、それだけで RBNZ が利下げに踏み切る可能性は低く、次回 4 月 30 日の会合では
政策金利は現行の 3.50%に据え置くとみられます。
今後政策変更があるとすれば、CPI がインフレ目標を下回り、またインフレ率予想も低下傾向にあることか
ら考えて、「利上げ」よりも「利下げ」の可能性の方が高いとみています。ただし、利下げが現実味を帯びてく
るのは、CPI が RBNZ の見通しを下回る前年比ゼロ%以下となり、また RBNZ のインフレ期待調査で今後 2
年間のインフレ率予想が+1%(CPI における RBNZ のインフレ目標の下限)に近づくか、下回った時かもしれ
ません。次回の RBNZ のインフレ期待調査は 5 月 19 日に発表される予定です。
(アナリスト 八代和也)
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◇トルコリラ反発、エルドアンは中央銀行の独立性を尊重するか?
(3 月 12 日付スポットコメントを転載)
昨日の欧米市場でトルコリラは対ドル、対円ともに反発しました。1 月の経常収支の赤字幅が予想を下回っ
たことに反応しました。トルコリラはいったん反落したものの、その後はジリジリと値を上げました。
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夕方から始まったエルドアン大統領と TCMB(トルコ中銀)のバシュチュ総裁との会談を受けて、大統領が中
央銀行の独立性を尊重するとの見方が広がったためです。
もっとも、上記の会談の内容が明らかになったわけでも、公式の声明が発表されたわけでもありません。現
段階では、あくまで市場の「思惑」に過ぎません。
エルドアン大統領は、6 月 7 日の総選挙で与党の現有勢力に上乗せし、憲法を改正して大統領権限の強
化を狙っているとされています(議会の 5 分 3 の議席+国民投票が必要)。そのため、景気にテコ入れしよう
と TCMB に利下げ圧力をかけてきました。
エルドアン大統領は、バシュチュ総裁から、景気、インフレ、政策金利、トルコリラ相場などについて説明を受
けたとみられます。大統領は十分に納得したうえで、中央銀行への利下げ要求を後退させるでしょうか。
まずは 17 日の TCMB 会合に向けて、エルドアン大統領が金融政策に関して沈黙を守るのか、そして足もと
までのトルコリラ安に鑑みて 17 日に TCMB が「慎重な」政策運営を続けることを表明できるか、注目したいと
ころです。
(チーフアナリスト 西田明弘)
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来週の主要経済指標・イベント
3月16日 21:30 【米】ニューヨーク連銀製造業景気指数(3月)
当社予想
10.00
市場予想
8.00
前回値
7.78
3月の景況感を示す最も早い指標の一つ。冬場の寒波の影響がはく落することで、昨年
平均(12.0)に接近するか
3月17日
【日】日銀金融政策発表
現状維持が決定されよう。黒田総裁は、「(追加緩和は)今は必要ない」「必要であれば
躊躇しない」と従来のコメントを繰り返しそう
9:30 【豪】RBA議事録発表(3月3日開催分)
RBA(豪中銀)は2月に利下げした後、3月に政策金利を据え置いた。3月の議事録からは
追加利下げに関する材料を探ることに
21:00 【トルコ】TCMB政策金利
7.50%
7.50%
【トルコ】翌日物貸出金利
10.75%
10.75%
【トルコ】翌日物借入金利
7.25%
7.25%
2月のCPIは前年比で加速。同コアは減速したものの、引き続き中銀の目標を大きく上
回った。リラ安への対応もあり、エルドアン政権の利下げ圧力に抗して「据え置き」を決め
られるか
3月19日 3:00 【米】FOMC金利誘導目標発表
0-0.25%
0-0.25%
0-0.25%
声明文から「忍耐強く」が消える可能性あり。これにより金融政策のフリーハンド(自由裁
量)を手に入れるが、同時に6月利上げが決まっているわけではない点を強調か。ただ、
市場は利上げ開始「秒読み」と解釈しよう。ドル高要因だが、株価が不確定要素
【EU】EU首脳会議(~20日)
議題の一つはギリシャ問題。チプラス首相に対して支援条件の詳細決定と順守の圧力が
加わりそう。支援は4か月延長されたが、4月末までの対応を求められている
21:30 【米】フィラデルフィア連銀景気指数(3月)
12.0
8.0
5.2
冬場の寒波の影響がはく落することで、昨年平均(18.6)に接近するか
市場予想はBloomberg、3月12日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年9月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
46%
54%
英国
0.50
16%
59%
25%
NZ
3.50
40%
60%
0%
カナダ
0.75
54%
46%
0%
ユーロ圏
0.05
62%
38%
0%
豪州
2.25
89%
11%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。3月11日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
山岸 永幸(やまぎし ながゆき)
市場調査部 シニアアナリスト
1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス
トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。
1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均
衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ
ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、
様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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金融商品取引業
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