市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 12 月 11 日(金)発行 No.083
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
【高金利通貨】
FOMC 利上げ迫る、日銀追加緩和はあるか!?
豪ドル/円は再び上昇傾向強めるか、上値メドは?
【アウトルック】 FOMC 利上げ迫る、日銀追加緩和はあるか!?
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円↑ 米 12 月利上げが確実視される中、次の利上げ時期を探る展開に
<材料>NY 連銀指数、CPI コア(15 日)、FOMC(16 日)
ユーロ/米ドル↓ 足もと追加緩和観測後退も、原油安が続けば一層の緩和検討も
<材料>独・ユーロ圏 ZEW 景況感(15 日)、ユーロ圏首脳会議(17-18 日)
ポンド/円↑ 12 月は利上げ見送りも、経済指標上振れなら早期利上げ観測復活か
<材料>CPI、PPI(15 日)、失業率(16 日)
◆↑↓→は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、方向性を保証するものではありません)
今週のレビュー:原油安でリスクオフ。米ドル・資源国通貨下落、円強含み
今週の為替相場は、WTI 原油先物が約 7 年ぶりの安値水準に下落。リスクオフの高まりで米ドルや株式が
売られ、資源国通貨も軒並み安となりました。ただ、豪ドルは雇用統計の上振れで、NZ ドルは追加利下げの
打ち止め感台頭で、週後半にかけて反発しました。
米ドル/円は、週初に 123 円台半ばまで上昇しましたが、原油安と日米欧株価下落の進行で、週央には
一時 121 円ちょうどに近付く場面も。週後半にはリスクオフが後退、一時 122 円台へと戻しました。ユーロ/
米ドルは、ECB 理事会後のユーロ高の反動から、週初は一時 1.08 ドルを割り込みましたが、米ドル安進展
から一時は、11 月 3 日以来の 1.10 ドル台回復を果たしました。ポンド/円は、原油安で一時 184 円割れも、
10 日の BOE(英中銀)会合で政策据え置きが決定され、週末は 184 円台後半での推移となりました。
豪ドル/米ドルは、資源安で一時 0.72 ドルを割り込みましたが、豪 11 月雇用統計が市場予想を上回り、
週後半は一時 0.73 ドル超に。NZ ドル/米ドルは、10 日の RBNZ(NZ 中銀)会合で 0.25%の利下げが決定さ
れましたが、出尽くし感から上昇。先週末高値に近づきました。カナダドルは、対米ドルで 11 年半ぶり安値を
記録、対円でも一時 89 円ちょうどに近付き、9 月 29 日安値の 88.85 円更新が視野に入りました。
トルコリラ/円は、週前半は 42 円台での小動きに終始しましたが、週後半のリスクオフ台頭で一時 41 円台
前半へと下落しました。南アランド/円は、資源価格下落に加え、英格付け会社フィッチによる格下げ
(BBB-)で、一時 7.83 円と 2008 年 10 月以来の安値を記録しました。
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来週のプレビュー:
FOMC 利上げ迫る、日銀追加緩和はあるか!?
12 月 4 日にウィーンで開かれた OPEC 定時総会で減産合意に至らなかったことを受け、WTI 原油先物は
一段安。直近 12 月 10 日時点で 1 バレルあたり 36.76 ドルと、2009 年 2 月以来、約 7 年ぶりの安値へと
下落しました。
過去 10 年間(2006 年以降)の最安値(清算値)は 2008 年 12 月 19 日の 33.87 ドルで、市場では最安
値更新もありうるとの見方が浮上、リスクオフ気運の高まりに繋がりました。
しかし、CFTC(米商品先物取引委員会)による WTI 原油先物のポジション(買い越し額)は直近 12 月 1 日
時点で 20.8 万枚と、2014 年の最大値 45.9 万枚の半分未満と比較的少なく、直近ピークの 26.5 万枚
(10 月 13 日時点)から徐々に減少していることから、ポジション調整が進展しているようです。
日本の石油連盟は OPEC の決定について「現行生産量に大きな変化を生じるものではなく、原油需給へ
の影響は少ないと想定される」と述べており、急落した原油価格は落ち着きを取り戻すかもしれません。
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日本時間 17 日午前 4 時(現地 16 日)には、いよいよ FOMC 結果発表が行われます。
12 月 4 日発表の米雇用統計の上振れが記憶に新しいところですが、雇用面、物価面などからは利上げ
開始決定への障害はみられず、2006 年 6 月以来の米利上げは「秒読み」段階に入ったといえそうです。
従前より、FRB は「重要なのは利上げ開始のタイミングではなく、利上げのペースだ」とし、利上げ開始後の
追加利上げペースは「極めて緩やか」と表明しています。
FOMC で利上げが決定されれば、米ドル高が米国景気を圧迫する懸念や、新興国からの資金逃避を促す
可能性も考えられます。しかし、足もと徐々に強含みで推移する米経済指標などから、FRB は遅きに失する
事態を避けるために利上げ実施に踏み切り、その代わりに追加利上げペースについて「ハト派」的な姿勢を
改めて示すことでショックを和らげるとみられます。
16 日の FOMC 結果発表では、FOMC 参加者各個人の政策金利予想(いわゆる「ドット」)が更新されます。
前回 9 月時点での予想の中央値は「2016 年に 4 回利上げ」でしたが、今回は全般に下方にシフトするもの
と予想されます。追加利上げの時期が思ったよりも遠いと市場が捉えれば、米ドルが下落する可能性もあり
ますが、予想の中央値が市場予想を上回れば、米ドルは強含みで推移しそうです。
また、来週は週初 14 日に 10-12 月期日銀短観が公表されます。12 月 1 日の法人企業統計で設備投
資額が市場予想を大きく上回り、それを反映して 8 日発表の 7-9 月期 GDP が上方修正されたことからは、
大企業全産業設備投資(前年比)は強めで推移、大企業製造業業況判断も前回の 12 を上回るかも知れ
ません。
17-18 日には日銀金融政策決定会合が開かれ、日銀短観も判断材料として重要視されそうです。設備
投資だけでなく、景気指数(CI)、消費者態度指数、現金給与総額の伸び、CPI の推移、雇用情勢など、足も
との経済指標には堅調なものが多く、現時点では追加緩和を行う必要性は低いとみられます。
黒田日銀総裁は 8 日に、企業経営者らが集まる会合で挨拶し、「物価の基調は着実に改善しており日本
をデフレ状況だと思う人は少なくなっている」と述べ、デフレ脱却を目指した大規模な金融緩和の効果を強
調しました。今後の金融政策については、「必要であればちゅうちょなく政策の調整を行う」との従来どおりの
発言を繰り返すに留まりました。18 日の決定会合では、追加緩和見送りが決定されると推測されます。
市場関係者からは引き続き日銀の追加緩和期待が強く、緩和見送り決定で円高や日本株安が誘引され
る可能性はあります。ただ、米ドル/円が一時 121 円ちょうどに迫り、日経平均先物が 19,000 円割れとなる
など、ポジション調整が事前に進展した形跡がみられるため、揺れは一時的に終わるかもしれません。
米 12 月利上げが実施されることで、米利上げを巡る不透明感が後退するとともに、利上げが実施できる
米経済の堅調を印象づける効果が発生することが考えられます。米金融引き締めを嫌う米国株や新興国
の株価下落圧力は、そうしたポジティブな要素で和らげられる可能性もありそうです。
(シニアアナリスト 山岸永幸)
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【高金利通貨】 豪ドル/円は再び上昇傾向強めるか、上値メドは?
RBA(豪中銀)は 12 月 1 日の会合で、政策金利を過去最低の 2.00%に据え置きました。声明では、政
策金利を据え置いた理由を「経済状況改善の見通しがここ数か月で若干強まったため」と説明。「インフレ
見通しを踏まえ、需要を支えるために適切ならば一段の政策緩和(=利下げ)余地がある」との見解を改め
て示しました。
声明の最後を「引き続き見通しを評価し、現在の政策スタンスが持続可能な成長と目標に沿ったインフレ
率を達成するために最も効果的かどうか判断する」と締めくくり、今後の経済指標や金融に関する情報を注
視する姿勢を示しました。
豪州の最近の経済指標は概ね堅調です。11 月の NAB 企業景況感は 10.2 と、10 月の 9.8 から改善し、
11 月の AIG 製造業 PMI は 52.5 と、2013 年 10 月以来の高水準となりました。とりわけ、労働市場の力強
さが目立っており、11 月の雇用統計では、失業率が 5.8%と、10 月の 5.9%から改善し、2014 年 4 月以
来の低水準を記録。雇用者数は前月比+7.14 万人と、2000 年 7 月以来の大幅増となりました。雇用者数
の内訳をみると、フルタイム就業者数が前月比+4.16 万人、パートタイム就業者数が同+2.97 万人と、とも
に 10 月の+3.84 万人、+1.77 万人から伸びが加速。労働参加率は 2012 年 9 月以来の高水準となり、総
じて強い内容でした。
豪雇用者数
出所:Bloomberg より作成
RBA は 11 月 6 日の四半期金融政策報告で、失業率は 2016 年を通じて 6.0-6.25%のレンジで推移し
た後、徐々に低下するとの見通しを示しました。11 月の失業率は 5.8%なので、RBA の想定より速いペース
で低下しています(1 月のピーク時には 6.4%)。また、雇用者数は 2 か月で 12.75 万人と大幅に増加しまし
た。
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豪統計局は 11 月の雇用統計発表後に、10 月と 11 月分は新たに含まれたサンプルの就業率と労働参
加率が平均より高かったことを明らかにし、12 月分でサンプルを入れ替える可能性に言及しました。10、11
月分は今後大幅に修正される可能性はありますが、今回の結果を額面どおりに受け取れば、“経済見通し
の改善を理由に政策を据え置いた”RBA が追加利下げを行う必要性はさらに低下したとみられます。
市場は追加利下げをあまり見込んでいないようです。市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金
利スワップ)では、12 月 10 日時点で来年 7 月までに RBA が利下げを行う確率が 38.7%、据え置きは
53.1%、利上げが 8.5%織り込まれています。12 月 3 日時点では、利下げが 43.0%、据え置きが 57.0%、
利上げが 0%でした。
市場のメインテーマが各国の金融政策となっている中で、RBA の利下げ観測が後退し、さらにわずかなが
ら利上げが織り込まれていることは、豪ドルの支援材料となりそうです。
豪ドル/円は 12 月 4 日に、一時 90.66 円へと上昇。8 月 20 日以来、3 か月半ぶりの高値をつけた後、
原油安を背景とした資源国通貨売りの影響で下落しました。原油をはじめとする資源価格の動向に注意は
必要なものの、再び上昇傾向を強める可能性はあります。
豪ドル/円の日足チャートをみると、12 月 4 日は 200 日移動平均線で上値を抑えられた格好です。200
日移動平均線(10 日時点で 90.58 円)が当面の上値メドとなりそうです。200 日移動平均線を超えれば、8
月 11 日高値の 92.64 円に向けて、一段と上昇するかもしれません。
豪ドル/円(日足)
出所:M2J FX Chart Square より作成
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
当社予想
11
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12月14日 8:50 【日】日銀短観 大企業製造業業況判断
【日】日銀短観 大企業製造業見通し
市場予想
11
11
前回値
12
10
2013年半ばから、業況判断は10台前半、見通しは10前後での推移が続いてい
る。エネルギー安・円安はプラス材料だが、最近の景況感に大きな影響は与えて
いない模様。
12月15日 9:30 【豪】RBA議事録公表(12月1日開催分)
1日の政策会合では、経済状況改善の見通しがここ数か月で若干強まったとして
政策金利を据え置く一方、追加利下げの可能性を残した。今後の金融政策につ
いて新たな手がかりが示されるか。
18:30 【英】消費者物価指数 前年比(11月)
0.0%
0.0%
-0.1%
食料やエネルギーを除くコアは1%前後、総合はゼロ近辺での推移が続いてい
る。BOE(英中銀)は11月にインフレ見通しを下方修正した。
22:30 【米】NY連銀製造業景気指数(12月)
22:30 【米】消費者物価コア指数 前年比(11月)
-8.00
1.9%
-5.50
2.0%
-10.74
1.9%
PCEコアが前年比1%台前半で推移する一方で、CPIコアはFRBの物価目標であ
る2%にジリジリと接近中。ただし、FRBが重視するのはPCEコア。
12月16日 28:00 【米】FOMC金利誘導目標発表
28:30 【米】イエレンFRB議長会見
0.25-0.50%
0.25-0.50%
0-0.25%
利上げ開始はかなり高い確率で織り込まれている。その後の利上げペースに関
するヒントが出るか。「ドット」に注目。
12月17日 22:30 【米】フィラデルフィア連銀景気指数(12月)
0.00
2.00
1.90
世界景気の減速、ドル高、資源安が米製造業部門の重石になっている。
12月18日
【日】日銀金融政策発表
15:30 【日】黒田日銀総裁会見
10月の展望レポートで物価目標の達成時期の予想を2016年度後半に先送り。
「現時点で追加緩和は必要ない」との黒田総裁の姿勢に変化はなさそう。
市場予想はBloomberg、12月11日10:00現在。発表日時は日本時間。
2016年5月までの金融政策の市場予想
利下げ
現状維持
利上げ
米国
政策金利%
0-0.25
0%
4%
96%
英国
0.50
40%
49%
11%
NZ
2.50
25%
75%
0%
カナダ
0.50
34%
66%
0%
ユーロ圏
0.05
100%
0%
0%
豪州
2.00
34%
66%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。12月10日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
山岸 永幸(やまぎし ながゆき)
市場調査部 シニアアナリスト
1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス
トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。
1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均
衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ
ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、
様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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金融商品取引業
関東財務局長(金商)第 2797 号
【加入協会】 日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会
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