市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 10 月 9 日(金)発行 No.076
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】 「頼りないリスクオン」はいつまで続く!?
【高金利通貨】
乳製品価格反発により、NZ ドルはしっかりした展開か
【アウトルック】 「頼りないリスクオン」はいつまで続く!?
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円→ 経済指標を受けて「年内利上げ」観測が復活するか
<材料>小売売上高・ベージュブック(14 日)、CPI・製造業関連(15 日)
豪ドル/円→ 各国株価の影響を受ける状況が続きそう
<材料>雇用統計(15 日)
NZ ドル/円↑ CPI が利下げ観測を一段と後退させるかどうか
<材料>CPI(16 日)
◆↑↓→は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、方向性を保証するものではありません)
今週のレビュー:米雇用統計の軟調を受けて利上げ観測後退
先週末の 9 月の米雇用統計が総じて弱い内容だったこと、さらには FOMC 議事録で低インフレや世界景気
への懸念が示されたことで、FRB の利上げ観測が一段と後退、ドルが全面安の展開でした。NY ダウや日経
平均など株価が上昇し、典型的なリスクオンの相場展開でした。ドル円は、7 日に日銀が金融政策の現状
維持を決定したことでやや円高に振れる局面もありましたが、ほぼ予想通りだったため小動きでした。
その一方で、豪ドルや NZ ドル、南アランド、トルコリラといった高金利通貨が対ドル、対円ともに目立って上
昇しました。豪ドルは、RBA(豪中銀)が 6 日の会合で政策金利の据え置きを決定し、年内は同様の決定が
なされるとの見方が強まったことが好感されました。NZ ドルは、オークション(GDT)での乳製品価格が 8 月
上旬以降反転上昇を続けていることが後押しとなりました。トルコリラは、米利上げ観測の後退に加えて、ク
ルド系過激派 PKK が 11 月 1 日の総選挙を前に、10 月 11 日にも停戦を発表するとの見方が出てきたこと
が上昇要因となりました。
ポンドは、英国の 8 月の鉱工業生産など経済指標の好調を受けて堅調に推移。8 日に BOE(英中銀)が
金融政策の据え置きを決定したことで、一時下落しましたが、すぐに戻しました。ユーロは、ドイツの 8 月の製
造業受注、鉱工業生産、輸出などの軟調が弱気材料でしたが、「ドル安」の裏返しで底堅く推移しました。カ
ナダドルは原油価格の上昇を受けて堅調でした。
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来週のプレビュー:米経済データが「年内利上げ」観測を復活させるか
今週は、日銀や BOE(英中銀)の会合があり、また FOMC や ECB 理事会の議事録が公表されました。いず
れの中央銀行も、世界景気の下振れや、それに伴う物価の下押し圧力への懸念を強め、やや「ハト」化して
いるようです。そのため、金融政策の方向性の差(の変化)が為替相場の材料となりにくくなっているように
思われます。
FOMC 議事録(9/16-17 開催分)では、労働市場が「完全雇用」という目標に達した、あるいは達しつつあ
るとの認識が示されました。その一方で、3 年以上も 2%の目標を下回りつづけている物価が目標に向かう
と予想していたものの、世界経済や金融市場に対する懸念から、物価の予想に自信が持てないことが、利
上げを見送った理由だったことが明らかになりました。
9 月の FOMC 以降、金融市場は比較的落ち着いていますが、一方で米経済指標は軟調なものが増えて
います。年内利上げの可能性は残されているものの、それが現実のものとなるためには経済指標の改善、と
りわけ賃金上昇などで物価目標の達成に FOMC が自信を深めることが必要なのでしょう。
来週は、米国の重要な経済指標が幾つか発表されます。それらの内容次第では「年内利上げ」観測が再
び高まるかもしれません。要注目でしょう。
14 日に 9 月の小売売上高。雇用・所得環境は良好であり、個人消費が景気をけん引しています。既報の
9 月の自動車販売台数は年率 1,800 万台と、約 10 年ぶりの高水準でした。一方で、ガソリン価格は 9 月に
下落しており、小売売上高を押し下げる要因となりそうです。自動車とガソリンを除いて堅調が維持されるか
(8 月は前月比+0.3%)がポイントとなりそうです。
同じく 14 日にベージュブック(地区連銀経済報告)。前回(9 月 2 日)は、「ほとんどの地域や部門で拡大
が続いた。全体のペースは前回と同じ」と総括されました。ただ、詳細にみると、製造業の「減速」と賃金の
「加速」が報告されていました。そうした状況が一段と進んだのかどうかに注目です。
15 日に 9 月の CPI(消費者物価)や、鉱工業生産など製造業関連指標。食料とエネルギーを除く CPI コ
アは 8 月に前年比+1.8%で、ジリジリと 2%へ接近しているようにみえます。FRB が重視している物価指標は、
PCE(個人消費)価格指数で、そちらは 1%台前半での推移が続いています。ただ、CPI の伸びが高まるよう
であれば、FOMC が 2%の物価目標達成への自信を深めるかもしれません。
鉱工業生産は先月発表の 8 月分が前月比-0.2%、ニューヨーク連銀とフィラデルフィア連銀の製造業景
況指数は同じく 9 月分がいずれもマイナスでした。ドル高や世界景気の減速、エネルギー産業の設備投資
減少などによって、製造業の低迷が鮮明になるなか、それらの指標に改善がみられるかに注目したいところ
です。
16 日に 10 月のミシガン大学消費者信頼感(速報)。9 月まで 3 カ月連続で前月に比べて低下しており、
9 月の水準は昨年 10 月以来の低さでした。金融市場がやや落ち着くなかで、消費者マインドにも改善がみ
られるか。
今週の金融市場は総じてリスクオンの展開でした。ただ、その理由が米利上げ観測の後退であり、その背
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景に世界経済に対する懸念や金融市場の動揺があることにかんがみれば、市場のリスクオンはかなり「頼り
ない」と言わざるを得ません。冒頭で述べたように、FRB 以外にも、日銀、ECB、BOE なども景気や物価の下
振れに対する懸念を強めているようです。世界経済あるいは中国を含めた主要国経済に関するニュース、
これから本格化する米企業の 4-6 月期決算発表を受けた株価動向などで、金融市場のムードがリスクオフ
に転換する可能性にも注意が必要でしょう。
なお、中国では、10 月中に 2016-20 年の経済 5 カ年計画を検討する「五中全会」が開催される予定で
す。19 日発表の 7-9 月期 GDP の下振れが懸念されるなかで、何らかの景気対策が検討されるか、あるい
は前向きの経済改革が打ち出されるかなどにも注目したいところです。「五中全会」の日程は不明ですが、
前回 2010 年は 10 月 15-18 日の開催でした。来週辺りに開催されるかもしれません。
(チーフアナリスト 西田明弘)
【高金利通貨】 乳製品価格反発により、NZ ドルはしっかりした展開か
◆乳製品価格は利下げ前の水準を回復◆
乳製品価格が急反発しています。10 月 6 日に開催された乳製品電子オークション(GDT)で、乳製品国
際指標である GDT 価格指数は 837 と、前回 9 月 15 日の 761 から大幅に上昇しました。
GDT 価格指数は、昨年 2 月の 1482 をピークに下落を続け、今年 8 月 4 日のオークションでは 514 と、
12 年半ぶりの安値をつけました。中国の需要鈍化懸念やロシアが EU からの農産物輸入禁止措置を講じた
ことが主因です。しかしその後、GDT の主催者であるフォンテラがオークションにおける販売量を減らす方針
を示したことをきっかけに反発へと転じました。今回で 4 回連続の上昇となり、8 月 4 日からの上昇率は
60%に達しました。
乳製品は NZ 最大の輸出品(輸出全体の約 3 割を占める)であり、その価格動向は経済に影響を与えま
す。
乳製品価格(GDT 価格指数)
出所:Global Dairy Trade(GDT)
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そのため、RBNZ(NZ 中銀)は乳製品価格を注視しています。RBNZ は今年 6 月、7 月、9 月の 3 会合連
続でそれぞれ 0.25%引き下げましたが、利下げ理由のひとつに「乳製品価格の下落」を挙げました。
前回 9 月 10 日の政策会合時の声明では、若干の追加利下げを行う可能性が示されました。ただ、乳製
品価格はその後急上昇し、今年 6 月の利下げ開始前を上回る水準まで回復してきました。
下の表は、今年に入ってからの GDT 価格指数(乳製品価格)の推移です。
GDT 価格指数(2015 年 1 月~)
出所:Global Dairy Trade(GDT)
GDT 価格指数は、上述の通り、直近の 10 月 6 日のオークションでは 837 となりました。RBNZ は今年 6
月 11 日の会合から利下げを開始しましたが、その直前に行われた 6 月 2 日のオークションでは 683 でした。
さらに遡って、政策金利を据え置く一方、利下げを示唆した今年 4 月 30 日の会合前の 4 月 15 日のオー
クションでは GDT 価格指数は 757 でした。
◆利下げ観測は後退◆
もちろん、RBNZ は乳製品価格のみを見て、金融政策を決定せず、CPI(消費者物価指数)上昇率といった
経済指標なども踏まえて政策判断を下すでしょう。
ただ、一連の利下げの一因となった乳製品価格が 6 月の利下げ開始前を上回る水準まで回復してきた
ことで、RBNZ は利下げを小休止し、しばらく様子見の姿勢へと変化する可能性があります。次回 10 月 29
日の政策会合では政策金利を据え置くことも考えられます。
市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)では、RBNZ が 10 月に政策金利を据え置
く確率が 68.6%、0.25%の利下げを行う確率が 31.4%織り込まれています(10 月 8 日時点)。
NZ ドル/円は 10 月 8 日に 80 円台へと上昇し、8 月 24 日以来、1 か月半ぶりの高値をつけました。乳
製品価格が急反発し、RBNZ の利下げ観測が後退するなど、NZ ドルを取り巻く環境がポジティブな方向に
変化していることを考えると、NZ ドル/円は引き続きしっかりとした展開になりそうです。
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
当社予想 市場予想 前回値
0.1%
0.2%
0.0%
10月13日 17:30 【英】消費者物価指数 前年比(9月)
8月のCPIは前年比0.0%、コアは同1.0%と落ち着いていた。ただし、
BOE(英中銀)は労働需給のひっ迫と賃金圧力を懸念しており、来春ごろ
の利上げを想定している模様。
10月14日 21:30 【米】小売売上高 前月比(9月)
0.5%
0.2%
0.2%
9月の自動車販売台数は10年ぶりの年率1,800万台超と好調だった。一
方で、ガソリン価格の下落はマイナス要因。金融市場動揺の影響はある
か。
10月15日 3:00 【米】ベージュブック(地区連銀経済報告)公表
中国経済減速、エネルギー産業の投資減少、ドル高等の影響がどの程度
みられるか。労働市場や賃金の動向はどうか。10/27-28のFOMCの資料
となる。
9:30 【豪】雇用者数変化(9月)
1万人 0.71万人 1.74万人
【豪】失業率(9月)
6.2%
6.2%
6.2%
スティーブンスRBA総裁は9月18日に、失業率は上昇に歯止めがかかった
との認識を示した。雇用者数変化は、月々のブレが極端に大きく、実勢を
反映しているとは言い難い。それでも、為替市場は反応するので要注意。
過去6か月の平均は+2.23万人。
21:30 【米】消費者物価コア指数 前年比(9月)
1.9%
1.8%
1.8%
1%台前半での推移が続くPCE(個人消費)コア価格指数に比べて、CPI
(消費物価)コアはジリジリと目標の2%に接近しているようにみえる。
21:30 【米】NY連銀製造業景気指数(10月)
-10.00
23:00 【米】フィラデルフィア連銀景気指数(10月) -5.0
-7.50
-2.0
-14.67
-6.0
最も早いタイミングで発表される製造業景況感。9月のISM指数でも示され
た製造業の低迷に歯止めがかかるか。
10月16日 6:45 【NZ】消費者物価指数 前年比(7-9月期)
0.3%
0.3%
0.4%
消費者物価指数上昇率は、RBNZのインフレ目標の下限である+1.0%を下
回っている状態。市場予想比下振れれば、29日の会合での追加利下げ観
測が高まりそう。
市場予想はBloomberg、10月9日10:00現在。発表日時は日本時間。
2016年3月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
40%
60%
英国
0.50
17%
61%
21%
NZ
2.75
73%
27%
0%
カナダ
0.50
28%
51%
21%
ユーロ圏
0.05
81%
19%
0%
豪州
2.00
71%
29%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。10月8日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
西田 明弘(にしだ あきひろ)
市場調査部 チーフアナリスト
1984 年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを
経て、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテ
ジストとして高い評価を得る。2012 年 9 月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市
場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2J の WEB サイトで「市場調査部レポート」、
「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑
誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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関東財務局長(金商)第 2797 号
(加入協会) 一般社団法人金融先物取引業協会
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