市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 4 月 3 日(金)発行 No.055
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
米ドル/円の方向感は米雇用統計次第か
【高金利通貨】 NZ ドル、介入の可能性は意識しておく必要あり!?
お知らせ:
市場調査部レポート(ウィークリー・アウトルックとマンスリー・アウトルック)は今週より金曜日発行となります。
【アウトルック】 米ドル/円の方向感は米雇用統計次第か
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円→ 米雇用統計発表後は、イベント通過で再びレンジとなる可能性も。
<材料>ISM 非製造業景況指数(6 日)、FOMC 議事要旨(8 日)
ユーロ/米ドル→米ドルの上値が重ければ、戻りを試す展開に。
<材料>欧 2 月小売売上高(8 日)
豪ドル/円↑7 日に利下げがなければ、ここもとの下落幅を取り戻す流れに。
<材料>RBA(豪中銀)政策金利、小売売上高(7 日)
ポンド/円↑足もとの経済指標上振れもあり、年内利上げの余地がありそう。
<材料>10-12 月期経常収支(18 日)、10-12 月期 GDP(19 日)
◆↑↓は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、結果を保証するものではありません)
今週のレビュー:米ドル/円は週初上昇も、米経済指標下振れで伸び悩み
今週の為替相場は、3 月 18 日の FOMC 以降、上値、下値を切り下げてきた米ドル/円が反発しました。
米ドル/円は、週前半はイエレン FRB 議長講演(3 月 27 日)での「年後半の利上げ」示唆発言が意識され、
120 円台前半での動きが続きました。しかし、ADP 雇用統計など米経済指標の下振れから、週後半は再び
119 円台に押し戻されました。ユーロは、米ドル売り・ユーロ買いの反動と、ギリシャ財政懸念の再燃で週前
半は軟調。ただ、週後半は米ドルの伸び悩みでリバウンドしました。ポンドは BOE(英中銀)のカーニー総裁が
3 月 27 日に、「次の政策変更は利上げになる可能性が高い」との見解を示したことから一時 178 円台へと
上昇。10-12 月期 GDP の上振れもポンド高を支えました。週後半は、やや軟調に転じました。
豪ドルは、4 月 7 日の RBA(豪中銀)政策金利発表を控え、利下げ観測の高まりから下落。鉄鉱石価格の
下落も豪ドル安に繋がりました。NZ ドルは、豪ドルの下落に連れ安する形から、対米ドル、対円ともに下落。
カナダドルは、WTI 原油先物が一時 50 ドル台を回復し、小幅ながら上昇しました。
トルコリラは、とくに材料が無いなか、先週の大幅下落の反動で上昇。南アランドは、一時対円で 9.80 円を
割り込みましたが、すかさず反発。週後半には、一時 10 円台へと戻しました。
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来週のプレビュー:米雇用統計次第で米ドル/円に方向感が生じる可能性
来週は、週初 6 日が英、豪、NZ、南ア、香港の市場が連休となり(香港は 7 日も休場)、流動性(取引高)
低下から、週前半の、とくにアジア・オセアニア市場は鈍い動きとなりそうです。
ただ、日本時間 3 日 21 時半に発表される米雇用統計の結果が良好であれば、米ドル/円は上値を探る
展開となり、3 月 20 日以来の 121 円台回復を果たすかもしれません。今後、3 月 18 日(前回 FOMC 開催
日)高値 121.37 円を超えることができれば、次の上値節目と目される 3 月 10 日高値 122.01 円の更新も
視野に入ることになりそうです。
逆に、米雇用統計がネガティブな結果に終わると、年央の米利上げ観測が後退し、米ドル/円は下落する
可能性が高いとみられます。米ドル/円週足で、26 週線は直近 4 月 2 日時点で 117.35 円にありますが、
今月いっぱいの下値メドとして、同線をやや下回る 117 円ちょうど辺りを目指す動きになるかもしれません。
イエレン FRB 議長は 27 日の講演で、「(物価が目標に向かっていると)合理的に確信できた時」とのフォワ
ード・ガイダンスについて、「労働市場の改善が続くことが重要」であり、「賃金や物価の上昇率が実際に加速
することは必ずしも必要ではない」と解説しました。賃金の伸びや、インフレ率上昇が利上げへの必要条件と
従来考えられていましたが、今回の発言で年央利上げへのハードルは、やや下がったという解釈も出来そう
です。米 2 月雇用統計では非農業部門雇用者数は大幅に増加しましたが、賃金の伸びが低かったことが
利上げ観測の後退に繋がりました。今回は、雇用者数の伸びに市場の関心が集まりそうです。
7 日には RBA(豪中銀)政策金利発表が行われます。レビューで触れたとおり、利下げ観測の高まりから、
豪ドルは軟調を余儀なくされてきましたが、利下げが見送られ、政策据え置きとなれば、豪ドルは反発しそう
です。利下げ見送りで豪ドル/円が反発する場合には、週足一目均衡表の先行スパン下限 93.44 円(4/2
現在)が戻りのメドと目されます。逆に、利下げ決定で豪ドル/円が下落する場合は、2 月安値の 89.39 円を
割り込む可能性が想定されるでしょう。
8 日には日銀が金融政策を発表します。市場予想は政策据え置きですが、1 日に発表された 3 月短観で
大企業製造業の景況感が前回比横ばいとなったほか、大企業全産業設備投資が前年度比マイナスとな
るなど、総じて弱い内容だったことをうけて、日銀ならびに黒田総裁の景気判断に変化がみられるかどうか
がポイントとなりそうです。4 月は 30 日にも決定会合が行われ、半年に一度の「経済・物価情勢の展望」(展
望レポート)が公表されます。同レポートの結果を踏まえて政策変更の是非が議論されるとみられ、注目度
は 30 日の方が高いかもしれません。
9 日には BOE(英中銀)が政策金利を発表、今回は金利据え置きが予想されています。レビューで触れた
カーニー総裁の利下げに否定的な発言に加え、2 月小売売上高指数や 10-12 月 GDP など英経済指標の
上振れなどから、年内利上げの可能性もありうるとみられます。足もと、方向感が定まりにくいポンド/円も、
決定会合後は堅調さを取り戻すかもしれません。
(シニアアナリスト 山岸永幸)
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【高金利通貨】 NZ ドル、介入の可能性は意識しておく必要あり!?
RBNZ(NZ 中銀)は 3 月 12 日に政策金利を据え置きました。声明では、NZ ドル高を改めてけん制しまし
たが、その表現に若干の変化がみられました。
◆RBNZ は貿易加重ベースでの NZ ドル高を指摘◆
RBNZ は NZ ドルについて、1 月 29 日の声明では「NZ ドルは最近弱まったが、依然として正当化できず、
持続不可能」との見解を示しました。それが 3 月 12 日の声明は、「貿易加重ベースでは、NZ ドルは依然と
して正当化できないほど高く、持続不可能」へと変わり、“貿易加重ベース”の NZ ドル高を指摘しました。
下のグラフは、貿易加重ベースの NZ ドル、いわば NZ ドルの総合力を示したものですが、これをみると昨
年 7 月をピークに若干低下しているものの、NZ ドルは依然高止まりしていることが確認できます。
NZ ドル貿易加重指数(2007 年~)
(出所:RBNZ)
RBNZ は為替介入を行う基準として、為替レートが極端な位置にあり、RBNZ が経済ファンダメンタルズか
ら“正当化できない”ことを挙げています。“正当化できない”は為替介入のキーワードの 1 つで、実際に
RBNZ は 2013 年 4 月と昨年 8 月に NZ ドル売りの為替介入を実施したことが確認されており、特に昨年 8
月は 2007 年 7 月以来最大規模でした。
NZ ドル/米ドルは RBNZ の為替介入と利上げ休止などにより、昨年 7 月から今年 2 月までの 7 か月間で、
0.88 米ドル台から 0.71 米ドル台へと大幅に下落しました。ただ一方で、米ドル以外で NZ ドル高が進み、対
豪ドルや対ユーロでは足もと過去最高値圏で推移しています。
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◆貿易加重指数は過去 2 回の介入時に近い水準◆
RBNZ の過去 2 回の為替介入実施時の NZ ドル貿易加重指数は、79 前後でした。ここ 1 か月はおおむ
ね 77~80 で推移しています。RBNZ の利下げ観測の高まりなどから NZ ドル貿易加重指数が低下すれば為
替介入の可能性は低くなると思いますが、過去 2 回を参考にすれば、依然として為替介入の可能性は意
識しておいた方が良いかもしれません。
NZ ドル貿易加重指数(2013 年~)
(出所:RBNZ)
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
4月6日
当社予想
57.0
23:00 【米】ISM非製造業景況指数(3月)
市場予想
56.6
前回値
56.9
昨年後半の平均は57.7。1-2月の寒波の影響から持ち直すことができるか。既報の製
造業景況指数は期待外れだった
4月7日
4月8日
13:30 【豪】RBA政策金利発表
2.25%
2.25%
2.25%
RBAは1-3月のCPI(4/22発表)をみてから5月に利下げの是非を判断したいと推察され
るが、鉄鉱石価格の下落を背景に4月も際どい判断となりそう。OIS(翌日物金利スワッ
プ)によれば、市場は80%程度の確率で利下げを予想
【日】日銀金融政策発表(+黒田日銀総裁の会見)
景気や物価にやや下振れ感もあるが、黒田総裁は「(追加利下げは)今は必要ない」と
の姿勢を繰り返しそう。4月30日の「展望レポート」の発表に向けて追加緩和観測が高
まる可能性はある
4月9日
3:00 【米】FOMC議事録公表(3月17-18日開催)
フォワードガイダンスを「忍耐強く」から「合理的に確信できた時」に変更した背景や、利
上げ開始後の追加利上げのペースなどに関する議論が明らかに
20:00 【英】BOE政策金利発表
【英】BOE資産購入目標
0.50%
0.50%
0.50%
3 7 5 0 億ポンド 3750億ポンド 3750億ポンド
金融政策の「現状維持」が予想される。インフレ率が下振れしており、一部で利下げ観
測も浮上している。しかし、「次の一手」は、すぐではないまでも、利上げか
市場予想はBloomberg、4月3日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年9月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
70%
30%
英国
0.50
38%
57%
5%
NZ
3.50
61%
39%
0%
カナダ
0.75
56%
44%
0%
ユーロ圏
0.05
64%
36%
0%
豪州
2.25
98%
2%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。4月2日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
山岸 永幸(やまぎし ながゆき)
市場調査部 シニアアナリスト
1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス
トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。
1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均
衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ
ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、
様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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金融商品取引業
関東財務局長(金商)第 2797 号
(加入協会) 一般社団法人金融先物取引業協会
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