市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 4 月 10 日(金)発行 No.056
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
米景気の立ち直りを確認できれば、ドル高へ
【高金利通貨】
トルコ中銀は難しいかじ取りを迫られている!?
【アウトルック】 米景気の立ち直りを確認できれば、ドル高へ
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円↑ 米景気が寒波や港湾ストからの立ち直りを見せれば、利上げ観測が再び高まり、
ドル高へ。ただし、122 円を目指すには力不足か
<材料>小売売上高(14 日)、ベージュブック(15 日)、フィラ連銀指数(16 日)
ユーロ/米ドル↓ギリシャ支援で合意すればユーロ買い材料だが、来週はその前の混迷が続きそう
<材料>ギリシャ支援交渉、ECB 理事会(15 日)
NZ ドル/円↑乳製品価格が上昇に転じれば、今年 1 月につけた 93 円台を目指す展開か
<材料>GDT(乳製品電子オークション、15 日)
資源国通貨↑↓中国の GDP が「7%」を下回れば、リーマン・ショック直後以来となり、
資源国通貨の下落要因になりそう。原油価格の動向にも要注意
<材料>中国 1-3 月期 GDP (15 日)、原油価格
◆↑↓→は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、結果を保証するものではありません)
今週のレビュー:米ドルは豪ドル以外の通貨に対して上昇。雇用統計前後の下落から反発
今週の為替相場は、米ドルが概ね上昇し、雇用統計前後の下落分を戻しました。
米ドル/円は、先週後半に雇用統計など弱めの米経済指標を受けて軟調推移したものの、週明けに NY ダ
ウが反発したこともあって反転。FOMC 議事録や日銀の決定会合は大きな材料とはならず、120 円台半ば
まで戻しました。ユーロは、米ドル堅調の裏返しで反落。引き続きユーロ圏と米国との金融政策の方向性の
違いが意識されました。ギリシャが 9 日期限の IMF 返済を履行したものの、今後も資金繰りに苦しむとの見方
も重石となったようです。ポンドも対ドルで下落しました。BOE(英中銀)は大方の予想通り、政策金利を据え
置きました。5 月 7 日の総選挙を前にした政治の不透明感がポンド安の背景にありそうです。
豪ドルは、7 日の会合で RBA(豪中銀)が「利下げ」との大方の予想に反して政策金利を据え置いたことで
急伸。5 月利下げの可能性は意識されたものの、比較的堅調に推移しました。NZ ドルは、RBA の決定後に
豪ドルに連れて買われる場面もありましたが、その後はやや軟調でした。カナダドルは、対米ドルで下落、対
円でも週後半には伸び悩みました。トルコリラは、9 日のバシュチュ TCMB(トルコ中銀)の講演を受けて、利下
げ観測が後退して買われる場面もありましたが、全般に軟調でした。南アランドは、対ドル、対円とも週後半
に軟調推移しました。
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来週のプレビュー:重要な鍵を握る米国の 3 月の小売売上高
米ドル/円は、強めの米経済指標が出てくれば 120 円台が定着し、堅調な展開となりそうです。ただし、直
近高値(3 月 10 日 122.01 円)を目指すには、利上げ観測が相応に高まる必要があるため、来週の指標だ
けでは力不足かもしれません。
最も重要な米経済指標は、14 日の 3 月小売売上高でしょう。2 月まで 3 か月連続マイナスとなっており、
大幅な反発が期待されます。既報の業界統計によれば小売売上高に関連する自動車販売台数は予想以
上の伸びでした。1-2 月に寒波の影響で低迷した後、3 月に大幅増だった昨年のパターンを繰り返せるか、
大いに注目です。NY 連銀やフィラ連銀の製造業景況指数は 4 月分で、もっとも発表の早いデータです。寒
波や西海岸の港湾ストの影響がはく落して反発が予想されます。逆に低調が続くようならドル高の悪影響を
警戒すべきかもしれません。15 日のベージュブック(地区連銀経済報告)では、最新の景況や賃金動向を
チェックすることになります。前回は、これまであまり見られなかった非熟練労働者の賃上げ圧力が報告され
ました。3 月の鉱工業生産や消費者物価、4 月のミシガン大学消費者信頼感なども発表されます。
米企業の 1-3 月期の決算発表にも要注意でしょう。輸出減や海外収益の目減りなどドル高の悪影響が強
く出るようなら、米株安・ドル安要因になりかねません。
ユーロは昨夏以降の対ドルでの下落基調は今年 3 月中旬でいったん終了したかもしれません。これまでの
原油安やユーロ安、ECB の QE の効果/株高などからドイツを中心にユーロ圏景気に改善の兆候もあり、ギリ
シャ支援の問題が解決すれば、ユーロは上昇に転じるかもしれません。ギリシャは、4 月 24-25 日のユーロ
圏財務相・中銀総裁会合(リガ、ラトビア)などでギリシャの改革案が承認され、IMF 支援の残り 72 億ドルが
実行されると期待しています。果たして思惑通りになるでしょうか。
ギリシャは、9 日期限の IMF 返済を履行しました。ただ、14 日と 17 日の短期国債借り換えや、月末に向け
ての年金・公務員給料の支払いなど、資金繰りの苦しい状況は続きそうです。また、6 月末で支援が完了し
ても、7-8 月には ECB 保有のギリシャ国債が大量に償還されるため、新たな支援が必要になるとの見方も
根強くあります。
中国の 1-3 月期の実質 GDP にも要注意かもしれません。市場予想は前年比+7.0%と、リーマン・ショック
直後の 2009 年 1-3 月期(同+6.2%)以来の低い伸びが見込まれています。仮に 7%を割り込むようであ
れば心理的影響も大きく、資源国通貨の下落材料になるかもしれません。3 月の全国人民代表大会(全人
代)では、今年の成長率目標が「7%前後」と、6%台も視野に入れているとして話題になりました。
原油価格(WTI 先物)は 1 バレル=50 ドルでの攻防が続いています。今年に入って米国の稼働リグ数が
半減するなど、先行きの供給減を示唆する材料はあります。一方で、足もとでは米国の原油生産は増加し
続けています。また、イラン核協議が最終合意に達して IAEA(国際原子力機関)の査察後に経済制裁が解
除されれば、半年から 1 年後にはイランの原油輸出が目立って増えるかもしれません。需給の引き締まりに
よって原油価格が上昇すると考えるには、まだまだ不透明要因が多そうです。
(チーフアナリスト 西田明弘)
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【高金利通貨】 トルコ中銀は難しいかじ取りを迫られている!?
TCMB(トルコ中銀)に対して利下げ圧力をかけ続けていたエルドアン大統領は、3 月 11 日のバシュチュ
TCMB 総裁との会談を契機に沈黙を続けています。トルコリラは、大統領による利下げ圧力を嫌気し、3 月 6
日対ドルで過去最安値をつけましたが、このところ下げ止まっています。ただ、6 月の総選挙に向けて、大統
領が再び利下げ圧力を強める可能性もあるため、注意は必要でしょう。
◆TCMB の政策金利は依然として高いとの見解◆
TCMB は昨年 1 月にトルコリラ防衛のため、政策金利を 4.50%から 10.00%へ、5.50%の大幅な利上げ
を実施。その後、インフレ圧力の鈍化などを理由に昨年 5 月以降、計 2.50%の利下げを行いました。
TCMB の政策金利
(出所:Bloomberg)
これに対し、エルドアン大統領は、今年 2 月に TCMB が 0.25%の利下げに踏み切った翌日、「(現在の政
策金利は)経済の実態にふさわしくない」と批判。TCMB の政策金利は依然として高いとの見解を示しまし
た。
◆トルコの景気は低迷◆
エルドアン大統領が利下げを求める背景には、総選挙を前に低迷する景気を浮揚させたいとの思惑があ
るとみられます。
足もとのトルコの経済指標は弱い状況です。企業景況感をあらわす HSBC 製造業 PMI(購買担当者景気
指数)は、3 月に 48.0 となり、2012 年 4 月の統計開始以来最低を記録。景況判断の分岐点となる「50」を
3 か月連続で下回りました。また、鉱工業生産は前年比ベースで、昨年 1 月をピークに鈍化傾向にありま
す。
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トルコ HSBC 製造業 PMI
(出所:Bloomberg)
トルコ鉱工業生産(前年比)
(出所:Bloomberg)
◆TCMB は追加利下げに慎重にならざるを得ない状況◆
経済が低迷する中で、TCMB は前回 3 月の会合で政策金利を据え置きました。
TCMB がこれまで利下げに踏み切ってきた要因に、インフレ圧力の緩和があります。トルコの CPI(消費者
物価指数)は依然として TCMB のインフレ目標である+5%を上回っているものの、昨年 5 月の前年比
+9.66%をピークに鈍化傾向にありました。ただ、足もとで CPI の鈍化に歯止めがかかっています。このことで、
TCMB は追加利下げに慎重にならざるを得ない状況になっているようです。TCMB は 3 月の会合時で政策
金利を据え置いた背景として、「グローバルな市場の不安定と、食料品価格の上昇により、慎重な金融政
策が必要だった」ことを挙げました。
トルコ CPI 上昇率(前年比)
(出所:Bloomberg)
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◆利下げ圧力が再び強まれば、トルコリラに下押し圧力◆
インフレ動向を考えると、積極的な利下げには踏み切りにくいとみられる TCMB に対し、エルドアン大統領
が利下げ圧力を再び強めることも考えられます。政府が中銀に金融政策で圧力をかけることは通貨にとっ
てマイナス材料です。仮に大統領による利下げ要求が再開した後に、インフレ見通しの改善などから TCMB
が追加利下げに踏み切った場合、TCMB は政治圧力に屈したとの印象を与えかねず、トルコリラには強い下
押し圧力がかかるとみられます。
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
当社予想
1.2%
4月14日 21:30 【米】小売売上高 前月比(3月)
市場予想
1.0%
前回値
-0.6%
2月は3か月連続で大幅マイナスだったが、3月は寒波からの反動で反発か。同じような状況
で昨年3月は前月比+1.5%の大幅増だった。既報の自動車販売台数は増加
IMF世界経済見通し
4月15日 11:00 【中】GDP 前期比 季調済(1-3月期)
【中】GDP 前年比(1-3月期)
1.4%
7.0%
7.0%
1.5%
7.3%
中国景気の減速感が強まっており、当局はテコ入れ策を実施している模様。前年比7%を割
り込むならば、追加刺激策に対する期待が強まりそう
20:45 【EU】ECB政策金利発表
21:30 【EU】ドラギECB総裁会見
0.05%
0.05%
0.05%
今のところECBはQE(国債等の購入)を淡々と続ける方向か。記者会見では、ギリシャ情勢、
とりわけギリシャの民間銀行向けのELA(緊急流動性支援)についての質問が出そう
21:30 【米】NY連銀景気指数(4月)
22:15 【米】鉱工業生産指数 前月比(3月)
23:00 【加】BOC政策金利発表
8.0
-0.1%
0.75%
7.0
-0.3%
0.75%
6.9
0.1%
0.75%
OIS(翌日物金利スワップ)によれば、8割以上が据え置き予想。「次の一手」は利下げとの見
方が多いが、ポロズ総裁は明確なヒントを与えず
4月16日
3:00 【米】ベージュブック(地区連銀経済報告)公表
最新の経済・物価状況。寒波や港湾ストからの立ち直り、ドル高・原油安の影響、雇用や賃
金の動向などをチェックすることに
21:30 【米】住宅着工件数 年率(3月)
23:00 【米】フィラデルフィア連銀景気指数(4月)
100.0万戸
9.0
104.0万戸
5.0
89.7万戸
5.0
15日のNY連銀指数と並んで、発表が最も早い4月分の指標の一つ。3月は低調だったが、4
月は改善が期待できそう。2014年の平均は18.6、15年1-3月の平均は5.5
4月17日 21:30 【米】消費者物価コア指数 前年比(3月)
1.6%
1.7%
1.7%
ガソリン価格の下落によって2月の総合指数は前年比0.0%。ドル高や資源価格下落の影響
は、食料とエネルギーを除くコア指数にも表れそう
23:00 【米】ミシガン大学消費者信頼感指数 (3月)
95.0
93.7
93.0
市場予想はBloomberg、4月10日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年9月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
69%
31%
英国
0.50
21%
72%
7%
NZ
3.50
56%
44%
0%
カナダ
0.75
51%
49%
0%
ユーロ圏
0.05
66%
34%
0%
豪州
2.25
91%
9%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。4月9日時点(英国のみ8日時点)
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
西田 明弘(にしだ あきひろ)
市場調査部 チーフアナリスト
1984 年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを
経て、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテ
ジストとして高い評価を得る。2012 年 9 月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市
場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2J の WEB サイトで「市場調査部レポート」、
「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑
誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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●当社が提示するレートには、買値と売値に差(スプレッド)があります。流動性が低くなる場合や、天変地異、戦争等によ
る相場の急激な変動が生じた場合、スプレッドが広がることがあります。
●取引に必要な証拠金額は、個人のお客様の場合取引総代金の 4%、法人のお客様の場合取引総代金の 2%となりま
す。
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カスタマーデスク
0120-455-512 (9:00~22:00 土日を除く)
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金融商品取引業
関東財務局長(金商)第 2797 号
(加入協会) 一般社団法人金融先物取引業協会
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