市場調査部レポート

2015 年 8 月 28 日(金)発行 No.015
市場調査部レポート
0
マンスリー・アウトルック(2015/9)
株安連鎖と為替相場の展望
~2015 年 9 月の見通し~
《ファンダメンタルズ》
株価の評価(バリュエーション)に基づけば、株価は自律的に下げ止まってもおかしくない。株安の連鎖が
止まれば、為替市場は徐々にリスクオンへ転換しそう。その場合、まずはリスクオフで大きく売られた通貨が
買い戻されるのが基本。一方で、これまでの金融市場の動揺が実体経済にどの程度のダメージを与えたか、
確認する必要はある。ダメージが大きければ、企業収益見通しの悪化を通じて株安が再開する可能性があ
り、再度のリスクオフに要注意。
<主要国の動向>
・【米国】 イエレン議長は「98 年のグリーンスパン」を見習うべきか
・【日本】 10 月以降に景気対策発動も
・【ユーロ圏】 ECB はインフレ見通しの変化次第で追加緩和!?
・【英国】 利上げの地均しは「仕切り直し」へ
<資源国・新興国の動向>
・【オーストラリア】 RBA 利下げ観測高まるも、今後後退する可能性あり
・【ニュージーランド】 RBNZ は追加利下げか!? 焦点は追加があるかどうか
・【カナダ】 利下げは 10 月総選挙の後が有力か
・【トルコ】 再選挙はエルドアン大統領のギャンブル
・【南アフリカ】 4-6 月期はマイナス成長、景気後退局面入りか
《テクニカル・予想レンジ》
・【ドル円 : 116.5 ~ 124.0 円】
下値は 21 日線かい離率マイナス 5.5%、上値はプラス 1σを想定
・【ユーロ円: 132.0 ~ 142.5 円】
下値はマイナス 0.5σ、上値はプラス 2σを想定
・【豪ドル円: 80.0 ~
90.0 円】
下値は 2012 年 10 月安値、上値はマイナス 1σを想定
・・・ほか当社取扱 11 通貨ペアのテクニカルポイントを解説
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≪ファンダメンタルズ≫
8 月は人民元切り下げや中国に端を発する株安の連鎖によって、市場が強いリスクオフに傾きました。
「恐怖指数」と呼ばれる VIX 指数は一時 50 を超え、リーマン・ショック直後の 2009 年 1 月以来の水準まで
上昇しました。円が全面高となり、通貨の強弱は、「円>ユーロ>ドル>ポンド>資源国通貨>新興国通
貨」の序列でした。円やユーロは、リスクオン時にみられたキャリー取引(円やユーロで資金を調達して外貨
資産に投資)の巻き戻しが上昇要因となりました。トルコリラは政局の不透明やテロなど独自の通貨安要因
もありました。
9 月は 8 月のようなリスクオフが継続するのか、あるいは足もとで株価の反発がみられるようにリスクオンに
転換するのかが重要なテーマとなりそうです。リスクオフ継続なら上記の通貨の序列となり、リスクオン転換
なら売られた通貨が買い戻されることで、上記と逆の序列が基本となるでしょう。
株価のバリュエーション(評価)の一つである PER(株価収益率)をみると、日経平均の PER は大幅続落し
た 8 月 25 日に過去 10 年間の中央値へと低下しました。欧米や中国株の PER も概ね同様の状況であり、
自律的に下げ止まってもおかしくない状況でした。このまま株安の連鎖が止まれば、市場は徐々にリスクオ
ンへと転換していくでしょう。
各国・地域の株価収益率(PER)
過去10年中央値 今年ピーク(日付)
8/25時点
米国
S&P500
16.60
18.86(7/17)
16.52
日本
TOPIX
19.10
19.05(6/24)
14.88
欧州
STOXX
13.57
22.16(3/20)
17.31
中国
上海総合
17.56
25.86(6/12)
14.92
PERは、株価を一株当たり利益で割った倍率。実績利益ベース
出所:Bloomberg
ただし、投資家心理はオーバーシュートする(行き過ぎる)傾向があるので、不安心理が払拭されるにはキ
ッカケが必要かもしれません。例えば、9月 4-5 日に開催される G20 財務大臣・中央銀行総裁会議(トルコ、
アンカラ)で、「各国当局が状況を監視し、必要があれば協調して行動する」というような強いコミットが表明
される場合でしょう。
一方で、株価の下落自体が、自己実現的に実体経済にダメージを与える可能性もあります。株価の下げ
が大きいほど、期間が長引くほど、個人消費や投資に悪影響が出てくるでしょう。企業収益が悪化すること
で、株価が上昇しなくても PER が上昇して、株価の割高がいつまでも修正されないという事態もありえます。
「PER=株価÷一株当たり利益」であり、その分母が小さくなるためです。その場合は、各国当局によって金
融政策や財政政策が発動されて実体経済の改善が展望できるまで、株価は下げ止まらないかもしれませ
ん。
いずれにせよ、これから発表される 8 月以降の経済指標でダメージの有無を確認する必要がありそうです。
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そうした意味からも、9 月 15-16 日の米 FOMC で利上げが開始される可能性は低下しています。FOMC は、
実体経済にどの程度株安(や原油安)の影響が出てくるか十分に見極めたいはずです。仮に「据え置き」だ
としても、声明文がどう変化するか、それに対して市場がどう反応するか興味深いところです。
9 月に予定されている米中首脳会談では、領海問題、サイバーセキュリティ、人権や知的所有権などが
議論されるでしょうが、経済運営や株式市場、人民元なども重要なテーマとして浮上してきました。中国とし
ては首脳会談前に金融市場の動揺の震源地とはなりたくないでしょう。ただし、露骨な相場操縦とみられる
のも逆効果でしょうから、さじ加減は難しいかもしれません。
9 月 20 日にはギリシャの総選挙が予定されています。与党 SYRIZA(急進左派連合)からは、チプラス首
相に反発する議員が離脱して新党を結成しました。SYRIZA が過半数を取れない場合にチプラス首相は連
立工作をしないと表明しており、ギリシャ支援の前提となる経済改革が滞るかもしれません。ユーロの不安
定要因となりそうです。
金融市場が動揺しているだけに、各国中央銀行の会合も通常以上に要注目でしょう。9 月 10 日の RBNZ
(NZ 中銀)の会合では利下げが確実視されています。22 日の TCMB(トルコ中銀)や 23 日の SARB(南ア中
銀)の会合では通貨防衛のために利上げに踏み切るかが注目されそうです。
9月の金融政策発表スケジュール
日付
1日
3日
9日
10日
10日
15日
16日
22日
23日
中央銀行 国・地域
政策変更の可能性
RBA
豪州
2.00%⇒1.75%へ利下げ
ECB
欧州
追加緩和?
BOC
カナダ 0.50%⇒0.25%へ利下げ
RBNZ
NZ
3.00%⇒2.75%へ利下げ
BOE
英国
0.50%⇒0.75%へ利上げ
BOJ
日本
追加緩和?
FRB
米国
0.125%⇒0.375%へ利上げ
TCMB
トルコ 通貨防衛のための利上げ?
SARB 南アフリカ 通貨防衛のための利上げ?
確率
12.9%
NA
29.1%
100%
0.0%
NA
28.5%
NA
NA
「確率」はOIS(翌日物金利スワップ)に基づく市場予想(8/27時点)
「政策変更の可能性」は筆者の定性判断を含む
出所:Bloombergより作成
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<主要国の動向>
【米国】 イエレン議長は「98 年のグリーンスパン」を見習うべきか
98 年 9 月 4 日、グリーンスパン FRB 議長(当時)は講演で、「米国はいつまでも繁栄のオアシスではあり
えない」と語りました。前年のアジア通貨危機、直前のロシア危機などによって、日本や欧州経済が打撃を
受ける一方で、順調な成長を続けていた米国経済に関して注意を喚起したものでした。
実際、それから 1 か月もしないうちに FRB は利下げに転じ、1 か月半の間に緊急を含む 3 度の利下げを
敢行しました。アジア(中国)経済の落ち込みや、株安連鎖をはじめ世界的な金融市場の動揺など、現在の
局面を当時と重ね合わせる見方も浮上しています。イエレン議長はグリーンスパン議長を見習って、利上げ
ではなく、緩和すべきでしょうか。QE4(量的緩和第 4 弾)に踏み切るべきでしょうか。
98 年当時と現在では決定的な違いがあります。98 年の利下げ開始の直前に、大手ヘッジファンド LTCM
(ロングターム・キャピタル・マネジメント)が事実上破たんしたことです。NY 連銀は大手金融機関の首脳を招
集して総額 36.3 億ドル(当時のレートで約 5000 億円)の救済をまとめ上げました。
そして、LTCM 救済から 6 日後の FOMC で利下げが決定されました。その後の 2 回を含めた一連の利下
げは、潜在的な金融危機に対する「予防的」利下げとの位置付けでした。そして、金利が低下したことや、外
国資金が流入して折からの IT 株ブームに拍車がかかったことで、米景気は力強い拡大を続けました。その
結果、FRB は、最後の利下げからわずか 7 か月後には一連の利上げを開始しました。
相場がこれだけ急激に動いたので、どこかに大きな損失が隠れていないとは言い切れません。また、今後の
相場状況によっては経済が大きくダメージを受ける可能性もあるでしょう。そのため FRB が年内に利上げに
踏み切る可能性は低下しているでしょうが、現時点で「金融緩和」を想定するのは時期尚早でしょう。
【日本】 10 月以降に景気対策発動も
4-6 月期の実質 GDP 成長率は前期比年率で-1.6%と、消費税増税の影響があった昨年 4-6 月期と
7-9 月期を除けば、13 年 10-12 月期以来のマイナスとなりました。7-9 月期は反発するとみられますが、
景気下振れ懸念は払拭されそうもありません。当面、安倍政権は安全保障関連法案の成立を優先すると
みられ、また、9 月下旬には自民党総裁選も予定されています。15 年度補正予算の策定をにらんで景気
対策が検討されるとしても 10 月以降となりそうです。もっとも、その時点で金融市場の動揺が収まっていな
い、あるいは株安や円高の悪影響が表面化しているようであれば、展望レポートの発表(10/30)を踏まえて、
金融政策と財政政策の合わせ技での景気対策が打ち出されるかもしれません。
【ユーロ圏】 ECB はインフレ見通しの変化次第で追加緩和!?
株安連鎖や原油安に関して、コンスタンシオ ECB 副総裁は、「インフレ見通しに大きなリスクがあるならば、
追加措置をとる」と明言しました。ユーロ圏の消費者物価(前年比)は今年 4 月にようやくマイナス圏を脱し
たばかりです。食料やエネルギーなどを除くコアも上向きとなっていますが、4 月で 0.95%と ECB の目標 2%
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を大きく下回っています。
ECB による現在の QE(量的緩和)は 2016 年 9 月を一応の期限としていますが、物価動向によっては増
額や延長の可能性もでてきそうです。
ユーロ圏の消費者物価上昇率
5
(前年比%)
総合
4
ECBの目標
コア
3
2
1
0
-1
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
コアは、エネルギー、食品、アルコール飲料、たばこを除く
出所:Bloombergより作成
【英国】 利上げの地均しは「仕切り直し」へ
8 月 6 日に開催された BOE(英中銀)の MPC(金融政策委員会)では、政策の現状維持が決定されました。
ただ、今回から即日公表となった議事録によれば、1 人の委員が利上げを主張しました。また、直後の記者
会見でカーニー総裁は、「利上げにふさわしい時期は接近しつつある」、「市場の織り込みは浅すぎる」などと
述べました。市場では米国より少し遅れて来年 2 月ごろに利上げするとの見方が有力となりました。
しかし、金融市場の動揺を受けて、足もとで利上げ観測は後退しています。OIS(翌日物金利スワップ)によ
れば、来年 2 月までに利上げが実施される確率は 3 割程度まで低下しています。労働市場のひっ迫による
賃金上昇の兆候が今後強まっていくのか、株安や原油安によって物価に下押し圧力が加わらないかなどを
チェックしつつ、改めて利上げの地均しが行われることになりそうです。
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<資源国・新興国の動向>
【オーストラリア】 RBA 利下げ観測高まるも、今後後退する可能性あり
RBA は 8 月 4 日に政策金利を 2.00%に据え置くことを決定。その時の声明で、一段の豪ドル下落の必
要性に言及した文言を削除しました。また、7 日の四半期金融政策報告で、2017 年 6 月の基調インフレ率
予想を+2~3%と、5 月時点の+1.75~+2.75%から引き上げるとともに、失業率は従来予想をやや下回る
水準でピークに達するとの見通しを示し、追加利下げの必要性が低下したことを示唆。これを受けて、市場
では RBA の追加利下げ観測が後退。豪ドル/円は 11 日に一時 92.64 円へと上昇しました。
しかしその後、中国が事実上の人民元切り下げに踏み切り、さらに中国株の急落を発端に世界の金融市
場の混乱が発生。豪ドル/円は 2 年 9 か月ぶり、豪ドル/米ドルは 6 年 4 か月ぶりの安値を記録しました。
豪州最大の貿易相手である中国の景気の悪さが浮き彫りになったことや株安を受けて、RBA の追加利
下げ観測が再び高まりました。
市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)では、RBA が年内に利下げを実施する確
率は人民元切り下げ前の 10 日時点で 37.2%織り込まれていましたが、25 日時点で 66.2%へと上昇しまし
た。市場のメインシナリオが 2 週間程度で、「据え置き」から「利下げ」へと変化したことが確認できます。
ただ、中国や日米欧の株安にいったん歯止めがかかったことで、金融市場は落ち着きを取り戻しつつある
ように見えます。RBA の利下げ観測は後退することも考えられ、そうなれば豪ドルは上昇しそうです。
市場が織り込む RBA の利下げの確率
*OIS(翌日物金利スワップ)を用いて算出
出所:Bloomberg より作成
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【ニュージーランド】 RBNZ は追加利下げか!? 焦点は追加があるかどうか
中国株の急落を発端に世界の金融市場の混乱が発生したことで、NZ ドルは急落。8 月 24 日に NZ ドル/
円は 2 年 9 か月、NZ ドル/米ドルは 6 年 3 か月ぶりの安値をつけました。その後、株安が落ち着いたことで、
NZ ドル/円や NZ ドル/米ドルは反発しました。
9 月の NZ ドルは、10 日の RBNZ(NZ 中銀)政策金利発表が最大の相場材料になりそうです。RBNZ は前
回 7 月 23 日の会合で追加利下げを示唆したことや、NZ 最大の輸出品である乳製品の価格は 8 月 18 日
のオークションで 11 回ぶりに反発したものの、依然として低水準であることから、RBNZ は 10 日の会合で
0.25%の追加利下げを決定するとみられます。
ただ、市場は 10 日の会合での 0.25%利下げをほぼ確実視しており、その通りの結果になれば、利下げそ
のものはそれほど材料視されないとみられます。
焦点は、声明で追加緩和の可能性が示されるかどうかです。前回の声明では、「現時点では、若干の追
加緩和を行う可能性が高いと思われる」との見方が示されました。乳製品価格は低水準であり、また豪州と
並ぶ輸出先である中国経済の減速懸念を考えると、RBNZ は依然として利下げ余地があることを示すかもし
れません。その場合、NZ ドルの重石となりそうです。ただ、市場は RBNZ の政策金利は来年 4 月時点で
2.50%以下になる確率を 7 割程度織り込んでいます。仮に 10 日に 0.25%の利下げが行われるとすると、
市場は少なくともあと 1 回 0.25%の利下げがあるとみているようです。追加利下げの確率もかなり織り込まれ
ていることから、利下げ観測を材料に NZ ドルが大きく売られるような状況でもなさそうです。NZ ドルは、上値
は重いが下値もしっかりの展開になるかもしれません。
市場が織り込む来年 4 月時点の RBNZ 政策金利の確率
*2015 年 8 月 25 日時点、OIS(翌日物金利スワップ)を用いて算出
出所:Bloomberg より作成
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【カナダ】 利下げは 10 月総選挙の後が有力か
原油価格が再び下落に転じたことで、カナダ経済への悪影響が懸念されます。BOC(カナダ中銀)は 7 月
15 日の会合でサプライズの利下げ(0.75%⇒0.50%)に踏み切りました。市場では追加緩和の観測が根強
く、早ければ 9 月 9 日の会合で実施される可能性もありそうです。OIS(翌日物金利スワップ)によれば、9 月
の利下げは 4 割程度が市場に織り込まれています。
もっとも、カナダでは 10 月 19 日に総選挙が予定されています。BOC は、選挙結果に影響を与えかねない、
選挙直前の追加利下げには慎重になるでしょう。10 月 21 日の会合、あるいはそれ以降の会合での利下げ
の可能性の方が高そうです。世論調査によれば、与党保守党と、新民主党と自由党の二大野党が三つ巴
(ドル・カナダドル)
カナダドルと原油価格
1.50
(ドル/バレル)
20
カナダドル:左目盛
1.40
原油価格:右逆目盛
1.30
↑
カナダドル安
原油安
40
60
1.20
80
1.10
100
1.00
0.90
120
2010
2011
2012
2013
2014
2015
出所:Bloombergより作成
の接戦となっています。
【トルコ】 再選挙はエルドアン大統領のギャンブル
第一党 AKP のダウトオール首相は、政権連立交渉を断念。エルドアン大統領が再選挙を指示し、投票日
は 11 月 1 日に決まりました。大統領は AKP の単独過半数を目指していますが、再選挙で事態が好転する
かは判然としません。
最近の世論調査でも、AKP の支持率は 40%台前半にとどまっています。一方で、クルド系の HDP の支持
率は 10%を超えています。得票率でも 10%超となれば、6 月の総選挙同様に AKP から議席を奪う可能性
が高そうです。投票日までの暫定内閣には、議席を持つ全政党が参加することになっています。第二・第三
党の CHP と MHP が協力を拒んでおり、再選挙前にも政治不安が一段と高まる可能性があります。
世界の金融市場が動揺し、またトルコの国内外で地政学リスクが高まっている中での「政治不在」は、トル
コリラにとって大きな弱気材料です。TCMB(トルコ中銀)が利上げに踏み切れば、トルコリラはサポートされる
かもしれませんが、前述の状況下で中央銀行が機動的に政策を発動するのは難しいかもしれません。
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【南アフリカ】 4-6 月期はマイナス成長、景気後退局面入りか
4-6 月期の実質 GDP は前期比年率-1.3%とマイナスでした。プラチナや銅などの資源価格低下に加え
て、電力不足で計画停電が相次いだことも影響したようです。それらが景気を下押しする状況に大きな変化
はなく、そのまま景気後退局面に入った可能性がありそうです。また、一部の賃金交渉が物別れとなり、鉱
山を中心にストライキが発生する懸念も高まっています。
7 月 23 日、SARB(南ア中銀)は政策金利をそれまでの 5.75%から 6.00%に引き上げました。通貨下落
によるインフレ圧力の高まりへの対応でした。しかし、南アランドはこれにはほとんど反応せず、世界的な株安
や資源価格の下落を受けて、足もとでは一段と下落しています。
8 月 24 日、南アランドの急落を受けて、SARB は、「為替レートは市場で決まるべきだが、市場の秩序立っ
た機能が脅かされるケースや、金融安定化のために、外為市場に関与することを検討するかもしれない」と
の声明を発表しました。「介入」ではなく、「関与」と表現したのは、限られた外貨準備では有効な介入は難し
いということでしょう。追加利上げを含めた措置が検討されるのかもしれません。ただし、景気後退局面入りし
た可能性があることは、金融政策の運営を難しくしそうです。
(チーフアナリスト 西田明弘)
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
9月1日
当社予想
49.8
10:00 【中】PMI製造業(8月)
市場予想
49.6
前回値
50.0
昨年12月以降50±0.2ポイントの狭いレンジで推移しており、方向感はほとんどない。「財
新」版PMIは8月速報値が前月から大幅に低下して、株安の引き金となった。
13:30 【豪】RBA政策金利発表
2.00%
2.00%
2.00%
最大の貿易相手である中国経済の減速は懸念材料。足もとの金融市場混乱の実体経
済への影響を見極める必要があり、政策金利は据え置かれると予想。焦点は、声明で今
後の金融政策について何らかのヒントが示されるかどうか。8月は特に言及されず。
23:00 【米】ISM製造業景況指数(8月)
53.5
52.8
52.7
7月は「生産」「新規受注」などの内訳は比較的良好だった。一方で、「輸出」はドル高の
影響で3か月連続の低下だった。
9月3日
3:00 【米】ベージュブック公表
前回(7/15発表)は、景気回復の継続が報告され、賃上げの事例が散見された。最新の
景気、とりわけ労働市場や物価の判断が注目される。ただし、足もとの金融市場の動揺
の影響は完全にはカバーされていないはず。
16:00 【トルコ】消費者物価指数 前年比(8月)
7.10%
6.81%
資源価格の下落が物価抑制要因として働く一方で、リラ安が輸入物価の上昇を通じて
徐々に物価を押し上げよう。いぜれにせよ、中銀の目標(5%)を上回る状況が続く。
20:45 【EU】ECB政策金利発表
0.05%
0.05%
0.05%
21:30 【EU】ドラギECB総裁会見
金融政策は現状維持とみられる。25日にコンスタンシオ副総裁が「インフレ見通しに大き
なリスクがあれば追加的措置をとる」と述べており、同様の意向が表明されるか。
9月4日
G20財務相・中央銀行総裁会議(トルコ・アンカラ、5日まで)
世界的な株安や相場変動の急激さに対して、何らかの見解が発表されるか。前回の
「我々は、引き続き、金融市場の変動を監視し、必要な行動をとっていく」は一般的な表
現。
21:30 【米】非農業部門雇用者数変化(8月)
19.0万人
20.5万人
21.5万人
【米】失業率(8月)
5.3%
5.3%
5.3%
夏場は、学生のサマージョブや教職員の影響で統計がブレやすい。ここ数年は予想に比
べて少なめに出る傾向がある。
市場予想はBloomberg、8月28日10:00現在。発表日時は日本時間。
2016年2月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
40%
60%
英国
0.50
11%
63%
26%
NZ
3.00
100%
0%
0%
カナダ
0.50
60%
40%
0%
ユーロ圏
0.05
69%
29%
2%
豪州
2.00
75%
25%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。8月27日時点
出所:Bloombergより作成
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【2015 年 9 月の通貨ペア別予想レンジ】
通貨ペア
ドル円
コメント
ユーロ円
コメント
ユーロドル
コメント
豪ドル円
コメント
豪ドルドル
コメント
NZドル円
コメント
NZドルドル
コメント
カナダドル円
コメント
ポンド円
コメント
南アランド円
コメント
トルコリラ円
コメント
予想レンジ
116.5 ~ 124.0
下値は21日線かい離率マイナス5.5%、上値はプラス1σを想定
132.0 ~ 142.5
下値はマイナス0.5σ、上値はプラス2σを想定
1.08 ~ 1.22
下値はマイナス1σ、上値は週足先行スパン上限を想定
80.0 ~ 90.0
下値は2012年10月安値、上値はマイナス1σを想定
0.69 ~ 0.76
下値は先行きのマイナス3σ、上値は週足基準線を想定
69.0 ~ 82.0
下値は2012年3月高値を想定、上値はマイナス1σを想定
0.58 ~ 0.69
下値はマイナス3σ、上値は週足基準線を想定
85.0 ~ 94.0
下値は2012年3月高値を想定、上値はマイナス1σを想定
180.0 ~ 196.0
下値はマイナス1σ、上値はプラス1.5σを想定
8.5 ~ 9.5
下値は2009年1月安値、上値はマイナス1σを想定
37.5 ~ 43.5
下値は38円をやや下回る水準、上値は週足基準線を想定
(2015/8/27時点)
(シニアアナリスト 山岸 永幸)
※このレンジ予想はテクニカル指標を基に客観的に判断しており、相場の行方を決定付けるものではございません。
最終的な投資判断はご自身の意思決断によりお取引頂きますようにお願いいたします。
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《テクニカル》
1.ドル円 (予想レンジ: 116.5 ~ 124.0 円)
[ドル円ボリンジャーバンド] (週足、2015/4/19~2015/8/27、出所:FX Chart Square)
+3σ
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
-3σ
・ドル円の週足ボリンジャーバンド(周期 26 週)で、週足が一時マイナス 3σ(シグマ)に近づく場面がみられま
した。ただ、2012 年以降はマイナス 3σを割り込んだ例がなく、同線は堅い下値支持線として機能しまし
た。27 日現在、リスクオフの後退から、週足はマイナス 1σをやや超える水準に回復しました。
・26 週線は 27 日時点で 121.77 円にあり、ほぼ横ばいで推移しています。この水準を上回れば次の節目は
プラス 1σ(同 123.83 円)となりそうですが、9 月利上げの確度が低下したことで上昇ピッチは鈍くなるかも
しれません。123 円台回復には、やや日にちが掛かりそうです。
一方、8 月 24 日安値 116.14 円を下回る可能性は低下したと推測されますが、「中国発のリスクオフ」が
再燃する可能性は払しょくできず、再び 116 円台を試すことも選択肢に残す必要があるでしょう。
・下値節目としては、昨年 7 月 10 日安値から今年 6 月 5 日高値までの上げ幅の「38.2%押し」で 116.39
円、または 21 日線かい離率マイナス 5.5%(2013 年以降の最大値)で 116.46 円、などが挙げられます。
・一方、上値節目としては、プラス 1σ(8/27 時点 123.83 円)、または今年 8 月 18 日 (米ドル/円が大幅
続落する直前の日) 終値で 124.39 円などが算出されます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のドル円の予想レンジを、116.5 ~ 124.0 円としました。
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2.ユーロ円 (予想レンジ: 132.0 ~ 142.5 円)
[ユーロ円ボリンジャーバンド] (週足、2015/4/19~2015/8/27、出所:FX Chart Square)
+3σ
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
-3σ
・ユーロ円週足のボリンジャーバンドで、7 月中旬以降、週足は 26 週線を超えて推移。足もとはドル軟調も
寄与し、プラス 1σを超える場面がみられました。
・各線の間隔の縮小傾向 = ボラティリティ(変動率)低下は足もとも続いており、「レンジ相場」追認の形と
なっています。各線はほぼ横ばいで、上にも下にも方向感が出にくく、プラス 1σを超える水準では上値が
伸び悩む公算が大きいとみられます。
・今後、「中国発のリスクオフ」が再燃し、ドルが軟調になれば、ユーロ/円はプラス 2σに近づく可能性もある
でしょうが、世界的な株安や資源価格下落によるリスクオフは、他通貨同様ユーロにもネガティブな影響を
与えると推測されます。「ユーロ独り勝ち」は長続きせず、リスク回避姿勢の高まりで円高圧力が高まると、
ユーロ円も下落を余儀なくされる場面がありそうです。
・下値節目としては、今年 4 月 14 日安値から 6 月 4 日高値までの上げ幅の「61.8%戻し」で 131.78 円、
またはマイナス 0.5σ(8/27 時点 132.48 円)、などが挙げられます。
・上値節目としては、プラス 2σ(同 141.99 円)、または 21 日線かい離率プラス 4.2%(今年の最大値)で
142.84 円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のユーロ円の予想レンジを、132.0 ~ 142.5 円としました。
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3.豪ドル円 (予想レンジ: 80.0 ~ 90.0 円)
[豪ドル円] (月足、2008/6~2015/8、出所:FX Chart Square)
2013/4
105.37
2008/10
55.05
・豪ドル円は、豪経済との関係が深い上海株急落による連想売りと、原油など資源価格の一段安から資源
国通貨売りが嵩み、一時 82.12 円と 2012 年 11 月以来の安値を記録しました。
・元来、豪ドルはリスク意識の変化を反映し易い性質を持つといわれ、リスクオフが高まると豪ドルの下げが
拡大する傾向がみられます。直近 27 日時点では日米欧株価の反発などからリスクオフが後退し、豪ドル
円も戻りに入っていますが、再び世界の株価が動揺すれば、それ以上に豪ドル円が下落する可能性もあり
そうです。
・ただ、豪ドル円が大幅に続伸した 2012 年 10 月以降の上げ局面のスタート(約 81 円)に、直近安値 82.12
円が近づいたことからは、出尽くし感の台頭から一段安は避けられるかもしれません。
・下値節目としては、2008 年 10 月安値から 2013 年 4 月高値までの上げ幅の「50%押し」で 80.21 円、
または 2012 年 10 月安値 79.40 円、などが挙げられます。
・上値節目としては、週足ボリンジャーバンドのマイナス 1σ(8/27 時点 90.43 円)、または週足一目均衡表
の基準線で 89.68 円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月の豪ドル円の予想レンジを、80.0 ~ 90.0 円としました。
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4.NZ ドル円 (予想レンジ: 69.0 ~ 82.0 円)
[NZ ドル円] (月足、2008/6~2015/8、出所:FX Chart Square)
2014/12
93.99
2009/2
44.25
・NZ ドル円は、上海株の急落による資源国・新興国通貨下落の影響と、主要輸出品である乳製品価格の
一段安から、一時 2012 年 12 月以来の水準に下落しました。
・ただ、8 月 18 日に開催された乳製品電子オークション(GDT)で、乳製品国際価格の指標となる GDT 価
格指数が前回から 14.8%上昇したことで、乳製品価格の影響を受け易い NZ ドルには下げ抵抗力が生じ、
上海株が急落する直前の 8 月 17 日から 8 月 25 日までの NZ ドル円の下落率は 5.9%と、豪ドル円の
7.6%よりも低い数値となりました。
・NZ ドル円の週足ボリンジャーバンドで、一時マイナス 3σ(8/27 時点 74.42 円)を大きく下回る下げに見舞
われたものの、足もとはマイナス 2σ(同 78.38 円)近辺に戻しており、同線を上回ると、次の戻りメドはマイ
ナス 1σ(同 82.20 円)になりそうです。
・下値節目としては、2009 年 2 月安値から 2014 年 12 月高値までの上げ幅の「50%戻し」で 69.12 円、
または 2012 年 3 月高値 69.06 円、などが挙げられます。
・上値節目としては、マイナス 1σ(8/27 時点 82.20 円)、または週足一目均衡表の基準線で 81.41 円、
などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月の NZ ドル円の予想レンジを、69.0 ~ 82.0 円としました。
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5.カナダドル円 (予想レンジ: 85.0 ~ 94.0 円)
[カナダドル円] (月足、2011/7~2015/8、出所:FX Chart Square)
2014/12
106.49
2011/10
72.15
・カナダドル円は、原油価格の一段安をうけて一時 87.42 円と 2013 年 1 月以来の安値を記録しました。
・週足ボリンジャーバンドでは各線の間隔が拡がり、足もとの「下げトレンド」を追認する形となっています。8 月
27 日時点でマイナス 3σは 88.94 円にありますが、カナダドル円は 90 円前後での推移が続いており、原
油価格の動向次第では、マイナス 3σを割り込む可能性も考えられるでしょう。
・ここもとは、「上海株下落」「資源価格下落」「円高」がセットになっている傾向があり、「中国発のリスクオフ」
局面ではカナダドル円の下落が目立ち易いかもしれません。それらの要因が後退すれば、マイナス 1σの
94 円台回復も視野に入りますが、落ち着きを取り戻すには、やや時間が掛かりそうです。
・下値節目としては、2011 年 10 月安値から 2014 年 12 月高値までの上げ幅の「61.8%戻し」85.27 円、
または 2012 年 3 月高値 84.94 円、などが挙げられます。
・上値節目としては、週足ボリンジャーバンドのマイナス 1σ(8/27 時点 94.18 円)、または週足一目均衡表
の基準線 94.25 円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のカナダドル円の予想レンジを、85.0 ~ 94.0 円としました。
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6.ポンド円 (予想レンジ: 180.0 ~ 196.0 円)
[ポンド円ボリンジャーバンド] (週足、2015/3/22~2015/8/27、出所:FX Chart Square)
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
・ポンド円の週足ボリンジャーバンドでは、各線の間隔は僅かながら拡大傾向にあり、今年 4 月以降の上昇ト
レンドを追認する形となっています。
・世界的な株価下落や、原油価格の下落などにより、ポンド円も一時、今年 5 月以来の水準に押し戻された
ものの、ユーロ円を除いて、他の主要国通貨に比べてポンド円の下落率は小さく、「中国発のリスクオフ」の
影響も比較的軽微に止まっています。
・ポンド円の週足一目均衡表では、相場の方向感を示すといわれる基準線が昨年 11 月以降、右上がり傾
向の推移が続いています。BOE(英中銀)の年内利上げ観測後退が足もとのポンド下落に繋がりましたが、
「中国発のリスクオフ」が落ち着くにつれて、ポンド円は上値を試す展開となりそうです。
・下値節目としては、マイナス 1σ(8/27 時点 180.60 円)、または週足一目均衡表の先行スパン上限で
179.53 円、などが挙げられます。
・上値節目としては、プラス 1.5σ(同 196.44 円)、または 2015 年の年初来高値(6/24)195.85 円、などが
挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のポンド円の予想レンジを、180.0 ~ 196.0 円としました。
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7.南アランド円 (予想レンジ: 8.5 ~ 9.5 円)
[南アランド円] (月足、2008/2~2015/8、出所:FX Chart Square)
2009/1
2012/10
8.46
8.65
・南アランド円は、リスクオフの高まりによる、資源国・新興国通貨売りの流れに巻き込まれ、一時 8.73 円と
2012 年 10 月以来の安値水準となりました。
・今回のような急落局面では、資源国・新興国通貨の流動性が急低下することがあり、薄商いの中、価格も
大きく下落し易い傾向がみられます。とくに大きく下落した 8 月 24 日の早朝には、ファンド筋からまとまった
売りが出たとの噂もあり、下振れが増大したとみられます。
・南アは世界有数の金の産出国ですが、輸出品のなかでは、クロムなどのレアメタル、鉄鉱石、石炭などの
鉱物資源の比率が大きく、ここもとの資源価格下落が南アランドの下落に結び付いています。
これら資源価格の回復待ちから、南アランド円はしばらく軟調を余儀なくされるかもしれません。
・下値節目としては、2012 年 10 月安値 8.65 円、または 2009 年 1 月安値 8.46 円、などが挙げられます。
・上値節目としては、マイナス 1σ(8/27 時点 9.67 円)、または週足一目均衡表の基準線 9.50 円、などが
挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月の南アランド円の予想レンジを、8.5 ~ 9.5 円としました。
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8.トルコリラ円 (予想レンジ: 37.5 ~ 43.5 円)
[トルコリラ円ボリンジャーバンド] (週足、2014/10/5~2015/8/27、出所:FX Chart Square)
+3σ
+2σ
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
-3σ
+3σ
・トルコリラ/円は、「中国発のリスクオフ」による新興国・資源国通貨売りの影響に加え、11 月の総選挙決定
など政局不透明感の高まり、ISIS(イスラム国)や非合法武装組織クルド労働者党(PKK)との紛争激化など
トルコ国内におけるリスク要因の増大から一段安。一時 38.96 円と、過去最安値を更新しました。
「中国発のリスクオフ」が後退しても、トルコ固有のリスク要因は残り続けることから、トルコリラ円に下落圧力
が掛かり易い状態が続くと推測されます。
・トルコリラ円の週足ボリンジャーバンドでは、足もとはマイナス 3σまで戻していますが、各線の間隔が拡がる
= 「下げトレンド」追認の形となっており、当面は弱含みの推移が続く可能性が考えられます。
8/25 発行の「注目のチャート トルコリラ/円の当面の下値節目は?」で触れたとおり、過去例からは今後
半年ほどの間に、最大で 32 円をやや下回る程度の下落も想定されるため、注意が必要でしょう。
・下値節目としては、昨年 1 月安値から同年 12 月までの上昇幅の半分(5.55 円)を昨年 1 月安値から引い
た 37.38 円、が挙げられます。
・上値節目としては、26 週ボリンジャーバンドのマイナス 1σ(8/27 時点 43.78 円)、または週足一目均衡表
の基準線 43.35 円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のトルコリラ円の予想レンジを、37.5 ~ 43.5 円としました。
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(その他の通貨)
9.ユーロドル (予想レンジ: 1.08 ~ 1.22 ドル)
・下値の節目は、週足ボリンジャーバンドのマイナス 1σ(8/27 時点 1.0803 ドル)、または今年 7 月安値の
1.0808 ドル。
・上値の節目は、2012 年 7 月終値の 1.2302 ドル、または週足一目均衡表の上限 1.2225 ドル。
10.豪ドルドル (予想レンジ: 0.69 ~ 0.76 ドル)
・下値の節目は、週足ボリンジャーバンドのマイナス 3σ(同 0.6953 ドル) が今後 1 ヵ月で 0.01 ドル下落す
ると推測される分を差し引いた 0.6853 ドル、2009 年 4 月安値 0.6853 ドルも同値。
・上値の節目は、26 週線(同 0.7614 ドル)が今後 1 ヵ月で 0.01 ドル下落すると推測される分を差し引いた
0.7514 ドル、または週足一目均衡表の基準線 0.7601 ドル。
11.NZ ドルドル (予想レンジ: 0.58 ~ 0.69 ドル)
・下値の節目は、マイナス 3σ(同 0.5837 ドル)、または 2000 年 10 月安値から 2011 年 8 月高値までの
上げ幅の「61.8%戻し」で 0.5786 ドル。
・上値の節目は、週足ボリンジャーバンドのマイナス 0.5σ(同 0.6880 ドル)、または週足一目均衡表の基準
線で 0.6875 ドル。
(シニアアナリスト 山岸 永幸)
※このレンジ予想はテクニカル指標を基に客観的に判断しており、相場の行方を決定付けるものではございません。
最終的な投資判断はご自身の意思決断によりお取引頂きますようにお願いいたします。
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<執筆者>
西田 明弘(にしだ あきひろ)
市場調査部 チーフアナリスト
1984 年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを
経て、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテ
ジストとして高い評価を得る。2012 年 9 月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市
場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2J の WEB サイトで「市場調査部レポート」、
「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑
誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
山岸 永幸(やまぎし ながゆき)
市場調査部 シニアアナリスト
1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス
トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。
1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均
衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ
ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、
様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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関東財務局長(金商)第 2797 号
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