マンスリー・アウトルック(2016/9)

2016 年 8 月 26 日(金)発行 No.027
市場調査部レポート
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マンスリー・アウトルック(2016/9)
9 月の為替相場展望
為替相場の分水嶺となるか、日米の金融政策会合
<相場環境>
9 月の最大の注目は、20-21 日の日米の金融政策決定会合。金融緩和限界論もみられるなかで、日銀
は更なる大胆な追加緩和に踏み切るのか。「2%物価目標」の再定義の有無も気になるところ。FOMC での
利上げの可能性は高くないかもしれないが、「年内利上げ」がどの程度強く示唆されるか。さらには 2017 年
に向けて「複数回の利上げあり」との市場の観測が強まるか。
<主要通貨の動向>
・【全体観・米ドル】 戻りは限定的か? 98 円台までの下落も視野に
・【ユーロ】 ユーロ/円、緩やかな下降トレンドが継続しそう
・【ポンド】 ポンド/円、123 円台までの下落も視野に
<資源国・新興国通貨の動向>
・【豪ドル】 RBA の金融政策よりも、資源価格の影響大か
・【NZ ドル】 9 月は据え置いて、11 月に追加利下げか!?
・【カナダドル】 OPEC 加盟・非加盟国の非公式会合に注目
・【トルコリラ】 国内情勢の悪化や地政学リスクに注意
・【南アランド】 金価格の上昇はプラス材料も、政局不安が重石
◆主要経済指標・イベント
◆OIS(翌日物金利スワップ)に基づく金融政策見通し
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≪相場環境≫
8 月の為替相場は「夏枯れ」だったかもしれません。ただ、ブルームバーグが集計する 16 通貨のなかで、
円は対ドルでの実績変動率(8/26 までの 1 か月間)が南アランドに次ぐ大きさでした(以下、ブラジルレアル、
ポンド、NZ ドル、豪ドル、カナダドル、ユーロ等の順)。今後 1 か月の予想変動率でみても、円は南アランド、
ブラジルレアルに次ぐ 3 番目の大きさとなっており、9 月の材料次第では比較的大きく動くことが想定されて
いることが見て取れます。
9 月の最大の注目は日米の金融政策会合でしょう。その意味で、ドル円の予想変動率が大きいのも無
理はないかもしれません。
まず、20-21 日の日銀の金融政策決定会合では、7 月の会合で表明した「総括的な検証」の結果と政
策変更の有無が明らかになります。
市場では、「総括的な検証」の結果、限界が近づいている国債購入を日銀が縮小するとの見方も一時
台頭しましたが、黒田総裁や岩田副総裁は早々に「金融緩和の後退」を否定しました。
一方で、「2 年で 2%」の物価目標を「中期目標」に変更するとの見方は市場に根強くあります。2013 年
4 月に設定して以来、達成のメドが立っていないからです。
ただし、「中期目標」への変更は、日銀のコミットメントの低下を示唆することになるため、一段の円高を
招かないためにも、大胆な追加緩和とセットになる可能性がありそうです。
7 月の会合で、日銀は追加緩和に踏み切りましたが、市場は ETF 購入の増額だけでは「不十分」と判断
しました。会合前に 105 円前後で推移していたドル円は一時 100 円を割り込み、足元では 100 円近辺での
推移となっています。果たして、日銀はリカバリーショットを打てるのか、注目されます。
一方、時差の関係で日銀の会合に約半日遅れる形で、20-21 日に米 FOMC が開催されます。6 月の
BREXIT(英国の EU 離脱)決定に伴う金融市場の動揺が落ち着きをみせていることもあって、FRB 関係者か
らは利上げ接近を示唆する発言が相次いでいます。また、公定歩合議事録(7/25 開催)によると、12 地区
連銀のうち 8 つが公定歩合の引き上げを支持したことが明らかになりました。これも利上げ観測を高める要
因です(*)。
(*)公定歩合の変更は、各地区連銀がワシントンの FRB 本部に申請して承認されるという形をとるが、実際には FOMC での
政策金利変更に合わせて変更が承認されます。ただし、7 月に公定歩合引き上げを支持した地区連銀の総裁は、9 月の
FOMC で利上げを主張する可能性が高そうです。
9 月の FOMC で利上げが決定される可能性はゼロではないものの、さほど高くはないでしょう。年内の利
上げが示唆されるか(残る FOMC は 11 月と 12 月の 2 回)、さらには「次の利上げ」だけでなく、「その次」あ
るいは「さらにその次」の利上げが示唆されるかどうかが重要かもしれません。
8 月 25 日時点の FF レート(政策金利)先物に基づけば、市場が年内の利上げを織り込む確率は 57.4%
です。2017 年末までの利上げは 79.3%織り込まれていますが、そのうち利上げ 1 回が 37.0%であり、複数
回の利上げは 42.3%です。市場は「利上げの必要性を過小評価している(ダドリーNY 連銀総裁)」ようにみ
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えます。
FOMC 声明文と同時に発表される FOMC 参加者の経済見通し(いわゆる「FOMC のドット」を含む)などで、
市場の利上げ観測がどうかわるか。今後、「複数回利上げあり」との見方が強まれば、ドルがサポートされそ
うです。
9 月の注目イベント
日米の金融政策会合以外にも、8 日に BOE(英中銀)の金融政策委員会、15 日に ECB の理事会が開
催されます。
BOE は、BREXIT(英国の EU 離脱)の悪影響を懸念して 8 月 4 日の会合で利下げと量的緩和(資産購
入)の再開を決定しました。ただ、足元までの経済指標は比較的良好であり、即座に追加措置が必要な状
況ではなさそうです。
7 月 21 日の ECB 理事会では、市場に過度な緩和期待が生じないようにすべきとの議論があったことが
議事録から明らかになりました。ECB が追加緩和に踏み切るとすれば、BREXIT の悪影響が経済指標などに
現れた場合に限られるかもしれません。
その他のイベントでは、4-5 日に中国・杭州で G20 財務相・中央銀行総裁会議が開催されます。共同
声明には、BREXIT をめぐる懸念の緩和が反映されそうです。世界的に金融緩和が強まっていることや、財
政と金融政策の協働などが討議されるかもしれません。
5 日のレーバーデー明けから、米大統領選挙キャンペーンが本格化します。共和党のトランプ候補は、7
月末の党大会の後に放言・暴言を連発し、党内からも批判を浴びていましたが、選対本部長の更迭に踏み
切りました。新任となった保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」のバノン会長は、「誹謗・中傷のプ
ロ」とされているようです。
トランプ候補は、襟を正すよりも、なりふり構わずに民主党のクリントン候補を「ネガティブ・キャンペーン
(中傷合戦)」に引きずり込もうとしているのかもしれません。手負いのトランプ候補は劣勢を強いられそうです
が、このままクリントン候補に敗北するかどうかは予断を許しません。ただ、「醜い選挙」になることは間違い
なさそうです。<チーフエコノミスト 西田明弘>
<主要通貨の動向>
【全体観・米ドル】 戻りは限定的か? 98 円台までの下落も視野に
≪相場環境≫で示した通り、26 日時点で振り返る 8 月相場は、まさに「夏枯れ相場」という表現に異論を
差し挟む余地のない動きとなっています。
8 月に入ってからのマーケット参加者の“ターゲット”は本日 26 日に行われるジャクソンホールでのイエレン
FRB 議長の講演内容であり、それまでに大きなリスクテイクをする必要性も合理性もなかったというのが正し
い見方なのかもしれません。
マーケット参加者の焦点は、イエレン FRB 議長のコメント内容が「タカ派的」なのか「ハト派的」なのかの二
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者択一となる中、チャートから勘案するドル/円相場の基本は引き続き上方硬直性相場が継続すると考え
ます。
以下、ドル/円・週足・スパンモデル®+21 週ボリンジャーバンドをご確認ください。
上記チャートより、1) 21MA(21 週移動平均線)が右肩下がりであること、2) ローソク足の上方に赤い雲
(=抵抗帯)があること、3) 遅行スパンの先端部分がローソク足の下方に位置していることから、緩やかな下
降基調がしばらく継続すると考えられます。
また、ローソク足が-1σ~-2σライン内を推移する「下降バンドウォーク」となっており、セオリー的には巡
航速度での下降基調となりそうです。
ドル/円の 9 月における月間コアレンジ予想は、上記チャートの-2σ~先行 1 スパン(≒98.20~105.00
円)が主体的なゾーンになると考えます。
作戦的なことを詳述すると、例えば上記チャートの-2σ~-1σラインのゾーンをメインレンジと想定し、機
動的な“らくトラ”を仕掛け、同-1σ~先行 1 スパン(ないしは 21MA ライン)のゾーンをサブレンジと想定し、
迎撃的な“トラップトレード”を仕掛けてみるのも一案と考えます。<チーフアナリスト 津田隆光>
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【ユーロ】 ユーロ/円、緩やかな下降トレンドが継続しそう
ユーロ/円の 9 月見通しについては、ドル/円同様、週足・スパンモデル®+21 週ボリンジャーバンドのそれ
ぞれのテクニカルメルクマールを確認しながら見ていきたいと思います。以下、同チャートをご覧ください。
上記チャートより、1) 21MA(21 週移動平均線)が右肩下がりであること、2) ローソク足の上方に赤い雲
(=抵抗帯)があること、3) 遅行スパンの先端部分がローソク足の下方に位置していることから、ドル/円同
様ユーロ/円も緩やかな下降基調がしばらく継続しそうです。
また、ローソク足が-1σ~-2σライン内を推移する「下降バンドウォーク」となっており、これもまたドル/
円同様、巡航速度での下降基調となりそうです。
ユーロ/円の 9 月における月間コアレンジ予想は、上記チャートの-2σ~先行 1 スパン(≒109.00~
116.70 円)が主体的なゾーンになると考えます。
ドル/円同様、9 月におけるユーロ/円の作戦アイデアの一つとして、上記チャートの-2σ~-1σライン
のゾーンをメインレンジと想定し、機動的な“らくトラ”を仕掛け、同-1σ~先行 1 スパン(ないしは 21MA ライ
ン)のゾーンをサブレンジと想定し、迎撃的な“トラップトレード”を仕掛けてみるのも一案と考えます。
<津田>
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【ポンド】 ポンド/円、123 円台までの下落も視野に
ポンド/円の 9 月見通しについても、ドル/円・ユーロ/円同様、週足・スパンモデル®+21 週ボリンジャー
バンドのそれぞれのテクニカルメルクマールを確認しながら見ていきたいと思います。以下、同チャートをご
覧ください。
上記チャートより、1) 21MA(21 週移動平均線)が右肩下がりであること、2) ローソク足の上方に赤い雲
(=抵抗帯)があること、3) 遅行スパンの先端部分がローソク足の下方に位置していることから、ポンド/円も
下降基調が継続しそうです。
ドル/円・ユーロ/円と同様、ポンド/円のローソク足も-1σ~-2σライン内を推移する「下降バンドウォー
ク」となっており、当面は当該ソーンを中心とした値動きが展開しそうです。
ポンド/円の 9 月における月間コアレンジ予想は、上記チャートの-2σ~先行 1 スパン(≒123.50~
141.00 円)が主体的なゾーンになると考えます。
ドル/円・ユーロ/円と同様、9 月におけるポンド/円の作戦アイデアの一つとして、上記チャートの-2σ~
-1σラインのゾーンをメインレンジと想定し、機動的な“らくトラ”を仕掛け、同-1σ~先行 1 スパン(ないしは
21MA ライン)のゾーンをサブレンジと想定し、迎撃的な“トラップトレード”を仕掛けてみるのも一案と考えま
す。
あくまでトレード戦略におけるご参考にしていただければ幸いです。<津田>
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<資源国・新興国通貨の動向>
【豪ドル】 RBA の金融政策よりも、資源価格の影響大か
RBA(豪中銀)は 8 月 2 日の会合で、政策金利を 0.25%引き下げ、過去最低の 1.50%にすることを決
定しました。利下げは 5 月以来、今年 2 回目です。
8 月 16 日に公表された議事録によると、今回の利下げはインフレや経済成長を押し上げることが狙いで、
豪住宅市場への懸念が後退したことで、より利下げに動きやすくなったようです。
議事録は、「最近(4-6 月期)の CPI(消費者物価指数)によって、インフレ率がしばらくの間、低水準にとど
まる可能性が高いことが確認された」と指摘し、「経済見通しは前向きで、より力強い経済成長の余地があり、
利下げによって支援できる」と説明。住宅市場については、「家計部門のレバレッジ拡大と住宅価格の急激
な上昇に関連するリスクが低下した」との見解が示されました。
9 月 6 日に RBA の会合があります。8 月の利下げは低インフレが一因だったことを踏まえると、RBA は 10
月下旬に発表される 7-9 月期のインフレ率のデータを待つとみられます。9 月の会合では、政策金利を
1.50%に据え置きそうです。市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)では、RBA が 9
月に政策金利を据え置く確率が 91.3%、0.25%の利下げの確率が 8.7%織り込まれています(8 月 25 日
時点)。OIS を参考にすると、「据え置き」がほぼ織り込まれているため、その通りの結果になれば、豪ドルに
大きな反応はみられない可能性があります。
9 月の豪ドルは、RBA の金融政策よりも鉄鉱石など資源価格の動向により影響を受けやすいかもしれま
せん。資源国通貨である豪ドルにとって、資源価格の上昇はプラス材料、下落はマイナス材料です。
<アナリスト 八代和也>
【NZ ドル】 9 月は据え置いて、11 月に追加利下げか!?
RBNZ は 8 月 11 日、政策金利を 2.25%から 0.25%引き下げ、過去最低の 2.00%にすることを決定し
ました。
声明では、先行きの金融政策について、「われわれの現在の予想や想定は、将来のインフレ率が目標レ
ンジの中央付近で確実に落ち着くようにするために、追加の政策緩和(=利下げ)が必要になることを示唆
している」と表明、追加利下げの可能性を示しました。
NZ ドルについては、「TWI(貿易加重指数)は、6 月の金融政策報告における想定よりも著しく高い」と指摘。
「通貨高が輸出および輸入の競合部門にさらなる圧力を加えており、世界的な低インフレとともに貿易財部
門のマイナスのインフレ率を引き起こしている」との見解を示したうえで、「NZ ドル高はインフレ目標の達成を
難しくする。NZ ドルの下落が必要」と強調しました。
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ウィーラー総裁は 8 月 23 日の講演で、追加利下げを改めて示唆する一方、「急速な利下げは、持続不
可能な成長加速や生産能力面の制約を招く可能性があるとともに、すでに過熱が深刻化している不動産
市場をさらにあおることになる」と指摘、連続利下げに慎重な姿勢を示しました。
RBNZ の年内の政策会合は 9 月 22 日と 11 月 10 日の 2 回です。マクダーモット総裁補佐は 8 月 11
日、追加利下げを改めて示唆する一方、「金融政策報告とともに金利を動かすことが望ましい」「金融政策
報告は、政策スタンスを効果的に伝達する良い機会」との見解を示し、追加利下げは 9 月よりも、次の金融
政策報告が公表される 11 月の可能性が高いことを示唆しました。マクダーモット総裁補佐やウィーラー総
裁の発言を踏まえると、RBNZ は 9 月の会合では、政策金利を 2.00%に据え置きそうです。
市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)が 8 月 25 日時点で織り込む、RBNZ の利
下げの確率は 9 月が 33.3%、11 月が 69.6%。利下げは、9 月よりも 11 月の可能性が高いと見ていること
が確認できます。OIS を参考にすると、9 月の利下げがある程度織り込まれていることから、RBNZ が政策金
利を据え置いた場合、NZ ドルが上昇する可能性があります。<八代>
【カナダドル】 OPEC 加盟・非加盟国の非公式会合に注目
カナダドルは依然として原油価格の動向に影響を受けやすい状態です。下のグラフは、米ドル/カナダド
ルと原油の代表的な指標である米 WTI 先物の値動きを重ねたもので、両者はおおむね似た動きをしている
ことが確認できます。資源国通貨であるカナダドルにとって、原油価格の上昇はプラス材料、原油価格の下
落はマイナス材料になります。
出所:Bloomberg より作成
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原油価格は 8 月に入り、反発傾向にあります。9 月の OPEC(石油輸出国機構)加盟国と一部の非加盟
国との非公式会合で、原油の増産凍結で合意するとの期待が背景です。非公式会合は、9 月 26~28 日
に開催される国際エネルギーフォーラムにあわせて行われる予定です。非公式会合の結果がカナダドルの
動向に影響を与える可能性があります。
9 月 7 日の BOC(カナダ中銀)の会合では、政策金利の 0.50%への据え置きが決定されそうです。注目
点は、声明における金融政策に関する文言になりそうです。文言が変化した場合、カナダドルが反応する可
能性があります。前回 7 月は、「リスクバランスは、現在の金融政策スタンスが適切となる領域にとどまって
おり、BOC 理事会は政策金利を 0.50%に据え置くことが適切と判断した」でした。<八代>
【トルコリラ】 国内情勢の悪化や地政学リスクに注意
TCMB(トルコ中銀)は 8 月 23 日、3 つの政策金利のうち、1 週間物レポ金利(主要政策金利)と翌日物
借入金利を据え置く一方、翌日物貸出金利を 0.25%引き下げることを決定しました。
声明では、7 月半ばのクーデター未遂事件が市場の指標に与えた悪影響は、おおむね反転したと指摘。
引き締め的な流動性スタンスや慎重なマクロプルーデンス政策、そして 2015 年 8 月に発表したロードマッ
プで示した政策措置の効果的な活用が、ショックに対するトルコ経済の耐性を強めているとの見解を示した
うえで、「単純化に向けた措置を進めることを決定した」と表明しました。
TCMB は 3 つの政策金利を最終的に「一本化(=単純化)」する方針を示しています。その一環として、
金利コリドー(翌日物貸出金利と翌日物借入金利の差)を狭める措置を今年 3 月に開始、8 月まで 6 会合
連続で翌日物貸出金利を引き下げました。
今回の決定により、翌日物貸出金利は 8.50%、1 週間物レポ金利は 7.50%になりました。今後も 1 週間
物レポ金利を据え置いて、翌日物貸出金利を過去 2 か月と同様に 0.25%ずつ引き下げるとすれば、翌日
物貸出金利はあと 4 回で 1 週間物レポ金利と同じ水準になります。市場の関心は今後、翌日物貸出金利
の引き下げ完了後に、TCMB が次にどのような措置を講じるのかに移るかもしれません。
ただし、トルコリラは TCMB の金融政策以上に、同国の国内情勢や地政学リスクなどに敏感に反応するか
もしれません。エルドアン大統領が独裁色を強めることへの懸念は依然としてあります。8 月 24 日には、トル
コ軍がシリアとの国境を越えて、IS(イスラム国)の拠点を攻撃しました。国内情勢の悪化や地政学リスクが
高まることは、トルコリラにとってマイナス材料です。引き続き注意が必要かもしれません。<八代>
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出所:Bloomberg より作成
【南アフリカランド】 金価格の上昇はプラス材料も、政局不安が重石
8 月のランド/円は、金価格の上昇を背景に、月初から堅調に推移し、12 日には約 3 か月半ぶりの高値
をつけました。しかし、その後 23 日に「南アフリカ警察の特別捜査部門が、ゴーダン財務相に出頭命令を出
した」との報道を受けて急落しました。翌 24 日に、ゴーダン財務相が出頭を拒否したと伝わったものの、か
ねてより同国の財政再建をめぐりズマ大統領との対立が懸念されていたこともあり、市場ではゴーダン財務
相が交代するのではとの懸念が浮上しています。ゴーダン氏が財務相を続けるのか、それとも交代するのか
に注目です。南アフリカの財政再建を主導し、市場からの信認が厚いゴーダン氏が財務相にとどまることが、
ランドにとってプラスと思われます。
9 月 22 日の SARB(南アフリカ中銀)の会合では、政策金利の 7.00%据え置きが決定される可能性が高
いとみられます。<八代>
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来週の主要経済指標・イベント
8月29日 21:30 【米】PCEコアデフレーター 前年比(7月)
当社予想
市場予想
前回値
1.7%
1.5%
1.6%
今年1月以降のドル実効レートの下落や、賃金上昇圧力の上昇などが、じわじわと消費者物
価に波及する可能性がある。
8月30日 23:00 【米】消費者信頼感指数(8月)
97.0
97.0
97.3
8月31日 18:00 【ユーロ圏】消費者物価指数 速報値 前年比(8月)
0.3%
0.3%
0.2%
10:00 【中】PMI製造業(8月)
50.1
49.9
49.9
10:45 【中】財新製造業PMI(8月)
50.4
50.2
50.6
9月1日
中国経済はモノからサービスへの移行中。製造業の軟調が続いているが、今年3-6月に50
以上となるなど、底打ちの兆候も散見される。
23:00 【米】ISM製造業景況指数(8月)
53.0
52.0
52.6
ISM指数は昨年1年を通して鈍化傾向だったが、資源価格の底打ち傾向もあって、今年に
入って上向きのトレンドを継続中。
9月2日
21:30 【米】非農業部門雇用者数変化(8月)
【米】失業率(8月)
20.0万人
18.0万人
25.5万人
4.8%
4.8%
4.9%
NFPの年初来平均は18.6万人のペース。8月が2万人以上なら3か月移動平均でそのペー
スは崩れない。ただし、少なくとも10万人以上増えないと、失業率には上昇圧力が加わるか
も。
市場予想はBloomberg、8月26日9:00現在。発表日時は日本時間。
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<執筆者>
西田 明弘(にしだ あきひろ)
市場調査部 チーフエコノミスト マクロ経済・マーケット全般
1984 年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを
経て、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテ
ジストとして高い評価を得る。2012 年 9 月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市
場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2J の WEB サイトで「市場調査部レポート」、
「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑
誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
津田 隆光(つだ たかみつ)
市場調査部 チーフアナリスト マーケット全般、米ドル担当
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)。主に国際商品市況の
マーケット業務に従事し、2008 年 1 月マネースクウェア・ジャパン入社。シニアテクニカ
ルアナリストとして独自のアレンジを取り入れた各種テクニカル分析レポートを執筆する
傍ら、セミナー講師やラジオ NIKKEI 番組コメンテーターなどを務める。2016 年 4 月、
市場調査部チーフアナリストに就任。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト 豪ドル、NZドル、トルコリラ、南アランド担当
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 13 年。
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