市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 10 月 16 日(金)発行 No.077
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
【高金利通貨】
米利上げ観測の後退と米企業決算に要注意
RBNZ は利下げをいったん休止か
【アウトルック】 米利上げ観測の後退と米企業決算に要注意
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円↓ 年内の米利上げ開始が危ぶまれるなか、米企業決算の下振れに要注意。
<材料>住宅着工件数(20 日)、中古住宅販売件数(22 日)
ユーロ/米ドル↑ ECB 理事会は据え置き予想も、「ハト派」メンバーが増加すればユーロ安も。
<材料>ECB 政策金利発表(22 日)、独・ユーロ圏製造業 PMI(23 日)
豪ドル/円→ 週初 19 日に中国経済指標が山積。20 日の RBA(豪中銀)議事録にも留意。
<材料>中国小売・鉱工業・GDP(19 日)、RBA 議事録(20 日)
◆↑↓→は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、方向性を保証するものではありません)
今週のレビュー:米経済指標下振れで、米ドルが弱含み推移
今週の為替相場は、先週後半以降の米ドル売りの流れが続くなか、日米欧の株価下落や、中国景気の
後退懸念、米経済指標の下振れなどにより、米ドルが弱含みで推移しました。
米ドル/円は、週初からジリジリと上値下値とも切り下げ。14 日発表の米 9 月小売売上高が市場予想を下
回ったことなどから米 10 月利上げ観測が後退。一時 118.06 円と 8 月 24 日以来の安値を記録しました。
ユーロ/米ドルは、一時 1.1492 ドルと、節目とみられていた 9 月 18 日高値 1.1457 ドルを上回りましたが、
週末には緩和観測が浮上。1.13 ドル台後半へと押し戻されました。ポンド/円は、一時 182 円を下回りまし
たが、14 日の英 6-8 月失業率が市場予想を下回り、週末には 184 円台を回復しました。
豪ドルは、中国の 9 月貿易収支で輸入額が落ち込んだことをうけて下落。ただ、週後半は米ドル軟調から
対米ドルで堅調、対円でも下げ止まりました。NZ ドルも、中国貿易収支でやや下げたものの、翌日以降は力
強く反発。対米ドルで一時 0.6899 ドルと 6 月 26 日以来の高値を記録しました。カナダドル/円は、週前半
は円高進行から軟調推移を余儀なくされましたが、週後半はやや下げ止まり感がみられました。
トルコリラ/円は、先週までの大幅上昇の反動と、10 日に発生したテロ事件の影響から、一時 40.26 円に
下落。ただ、週後半は対米ドルで反発し、対円も 41 円台前半で推移しました。南アランド/円は、週前半は
リスクオフ台頭から一時 8.80 円に下落しましたが、週後半は下げ止まり、9 円台前半に値を戻しました。
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来週のプレビュー:
米利上げ観測の後退と米企業決算に要注意
10 月 16 日現在、米ドル/円は依然として、8 月 24 日に示現した「大陰線(黒色のローソク足)」の範囲内
の推移(118.4-121.9 円)が続いています(NY 終値ベース)。ただ 15 日には一時 118.06 円と、8 月 24 日
以来の安値を記録、上述の「大陰線」の範囲の下限を割り込みました。
米ドル/円(日足、2015/8/20 – 10/16) (出所:M2J)
118.4~121.9 円のレンジ下限を一時割り込む・・・
足もとの米ドル/円の軟調は、(1)米国経済指標の下振れによる米 10 月利上げ観測の後退、(2)中国の
経済指標下振れによる同国景気減速懸念、(3)日米欧株価指数の不安定、が主な要因とみられます。
まず(1)については、今月に入り、1 日の 9 月 ISM 製造業景況指数、2 日の 9 月雇用統計、5 日の 9 月 ISM
非製造業景況指数、6 日の 8 月貿易収支、14 日の 9 月小売売上高、15 日の 10 月ニューヨーク連銀と
フィラデルフィア連銀景気指数など、米国の経済指標が軒並み市場予想を下回る結果となりました。
利上げに前向きな「タカ派」である米セントルイス地区連銀のブラード総裁は 13 日に「十分な経済指標が
そろわないため、10月の利上げは困難になる可能性がある」との見方を示しました。
市場では、年内の利上げが見送られるのではとの観測も高まっており、米ドルの上値が一層重くなる可能
性も考えられそうです。来週発表の米経済指標にも、念のため注意が必要でしょう。
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(2)については、13 日発表の中国の 9 月貿易収支で輸入額が大幅に落ち込んだことが取沙汰されました。
ただ、米ドルベースの貿易収支は前年比 603.4 億ドル黒字と、市場予想(482.1 億ドル黒字)を上回っており、
前月分の同 602.4 億ドルからも若干黒字幅が増加しています。輸入額の低下も、足もとの原油安が大きく
影響しており、原油価格が回復すれば輸入額も回復するとみられます。
それ以前から、米ドル/円は徐々に上値を切り下げる展開となっていたこともあり、中国の景気減速懸念は
直接的に米ドル/円の下落を誘ったとはいえないかもしれません。
来週は週初 19 日に 9 月の小売売上高と鉱工業生産、第 3 四半期 GDP など、中国の経済指標発表が
相次ぎます。これらの経済指標が市場予想を下回ると、中国景気への懸念が再燃する可能性がある一方、
再来週 10 月 26-29 日に開かれる「五中全会」(第 18 期党中央委員会第5回全体会議、2016 年以降の
経済政策の指針となる「第 13 次 5 カ年計画」が主要議題)で景気浮揚策が打ち出されるのではとの期待が
高まり、むしろ中国株の下支え要因になる可能性も考えられるでしょう。
(3)については、10 月 5 日以降、6 営業日連続で終値ベース 18,000 円超えを続けていた日経平均が、
14 日には一時 400 円超の下落幅となり、10 月 2 日以来の終値 18,000 円割れとなりました。
前述の(1)によって円高・米ドル安が進行したことや、(2)でグローバルな景気減速懸念が高まったことも、
日経平均の下げを加速させたといえそうです。
また、米国で本格化している「米国企業決算」も、日米株価を不安定にさせている要因のひとつです。
13 日に決算を発表した米半導体大手インテルの 7-9 月期決算は、純利益が前年同期比 6%減と不調
でした。同社株との関連が深い日本のハイテク銘柄も、翌日の東京市場で大幅安し、14 日の日経平均を
押し下げる主因となりました。
来週も多くの米国企業決算が行われる予定ですが、とくに 21 日のアボット、バイオジェン、22 日のイーライ
リリーなど、米大手薬品メーカーの決算が 21-22 日に相次ぎます。先日、大筋合意に達した TPP(環太平
洋パートナーシップ協定)では、バイオ医薬品開発データの保護期間が最短 5 年、最長 8 年と、米国の主張
する 12 年に届きませんでした。創薬メーカーの利益率低下から、上記企業の業績見通しが悪化し、株価が
下落する可能性が考えられます。
また、22 日のキャタピラー、フリーポート・マクモランなど、鉱山機械や鉱山会社には、資源価格の低迷に
よる業績圧迫懸念がつきまとうとみられ、バイオ株同様に株価下落に対する注意が必要でしょう。
その他の経済イベントでは、21 日にトルコ中銀とカナダ中銀、22 日に ECB の政策金利発表が行われます。
それぞれ政策据え置きが予想されており、決定結果で市場が揺れる可能性は低いかもしれません。
ただ、ECB 会合後のドラギ ECB 総裁会見で、ユーロ圏の先行き景気の見通しや、ECB の追加緩和の可能
性について何らかの言及があれば、ユーロ相場を動かす材料として捉えられそうです。
(シニアアナリスト 山岸永幸)
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【高金利通貨】 RBNZ は利下げをいったん休止か
10 月 16 日に発表された NZ の 7-9 月期 CPI(消費者物価指数)は前年比+0.4%となり、4 四半期連続
で RBNZ のインフレ目標である+1~3%を下回りました。
RBNZ は景気見通しの悪化や低インフレを理由に、今年 6 月、7 月、9 月に計 0.75%の利下げを実施しま
した(現在の政策金利は 2.75%)。 前回 9 月 10 日の政策会合時の声明では、若干の追加利下げが示唆
されました。
RBNZ は追加利下げに踏み切るかは経済指標次第と表明していますが、インフレ目標を採用する RBNZ に
とって目標を下回る CPI は利下げ圧力へとつながります。
NZ の CPI 上昇率(前年比)
出所:Bloomberg
ただ、その一方で、その他の経済指標はやや明るい兆しもみられています。乳製品価格は、8 月以降急
反発しました。乳製品国際価格の指標となる GDT 価格指数は 8 月 4 日のオークションで 12 年半ぶりの低
水準を記録したものの、その後主催者であるフォンテラが GDT における販売量を減らす方針を示したことで、
前回 10 月 6 日のオークションまで 4 回連続で上昇。8 月の安値からの上昇率は 63%に達しました。乳製
品価格は、6 月以降の利下げの背景にある景気見通し悪化の主な要因でした。
9 月の ANZ 企業景況感調査はマイナス(-18.9)となりましたが、8 月(マイナス 29.1)から改善しました。
改善したのは、6 か月ぶりです。
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乳製品価格(GDT 価格指数)
出所:GDT(Global Dairy Trade)
RBNZ のウィーラー総裁は 10 月 14 日に、「最近の経済指標は一段と心強い内容となっている」と指摘。
また、「低金利が住宅需要に及ぼす影響と、インフレ加速につながる可能性に引き続き留意している」、「借
り入れコストが投資抑制につながっているか、世界経済が大幅に鈍化した場合の利下げ余地の必要性につ
いても検討することが重要」と述べました。
ウィーラー総裁の発言をみると、利下げのハードルは過去 3 回に比べて上がっているようにみえます。10
月 29 日の会合では、政策金利が据え置かれる可能性がより高まったかもしれません。
市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)では、RBNZ が 10 月の会合で政策金利を
2.75%に据え置く確率が 70.6%、0.25%の利下げを行う確率が 29.4%織り込まれています(10 月 15 日
時点)
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
当社予想 市場予想 前回値
6.3%
6.8%
7.0%
10月19日 11:00 【中】GDP 前年比(7-9月期)
4-6月期は、サービス、とりわけ金融仲介(株取引?)が成長に大きく寄与
する一方で、鉱工業・建設の伸びは6%にとどまった。7-9月期は株取引
の縮小もあって、景気減速が鮮明になりそう。
10月20日 9:30 【豪】RBA議事録公表(10月6日開催分)
10月6日の政策会合の声明は、9月とほぼ同じ内容だった。議事録では、
今後の金融政策について新たな手掛かりが示されるのかどうかに注目。
10月21日 20:00 【トルコ】トルコ中銀政策金利発表
7.50%
7.50%
7.50%
9月のCPIは前年比7.95%と、8月の7.14%から加速。エネルギー価格が
低迷する一方で、リラ安が物価を押し上げ。しかし、総選挙を間近に控え
ており、政策変更の可能性は小さい。
23:00 【加】BOC政策金利発表
0.50%
0.50%
0.50%
1-3月期、4-6月期と2期連続でマイナス成長となり、景気後退局面入りし
た公算大。それでも、利下げ予想はごくわずか。
10月22日 20:45 【EU】ECB政策金利発表
21:30 【EU】ドラギECB総裁会見
0.05%
0.05%
0.05%
VW問題もあり、好調だったドイツ景気にも陰り。追加緩和期待は根強いも
のの、ドラギ総裁らは時期尚早とのスタンス。
市場予想はBloomberg、10月16日10:00現在。発表日時は日本時間。
2016年4月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
50%
50%
英国
0.50
26%
44%
30%
NZ
2.75
69%
31%
0%
カナダ
0.50
25%
75%
1%
ユーロ圏
0.05
82%
18%
0%
豪州
2.00
82%
18%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。10月15日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
山岸 永幸(やまぎし ながゆき)
市場調査部 シニアアナリスト
1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス
トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。
1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均
衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ
ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、
様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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