CLOSEUP REPORT 「PBがイノベーションを作り出す時代がやってきた!」

2016年5⽉30⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『PBがイノベーションを作り出す時代がやってきた!』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
先⽇、雑貨や家電のプライベートブランド(以下PB)を製造、販売する企業の本社訪問に⾏ってきました。品川
駅近くの本社に着くと、度肝を抜かれました。⾯積はさほど広くはないのですが、建物は宮殿のようで、そのエン
トランスは普通の3階分を吹き抜けにした豪華なつくりでした。応接に通されると超⼤企業にしかないセカンド受
付があり、窓から⾒える景⾊ははるかかなたまで視線を遮る建物はなく、眼下には多くの電⾞が⾒え、鉄道オタク
には垂涎の絶景でした。
この会社は⾷品や雑貨から家電まで幅広く製造販売する企業です。⼤⼿のナショナルブランド(以下NB)と機能
性はほぼ同じですが、これまで⾃社のブランドはあまり前⾯にださず値段で勝負してきました。特にデザインや表
⾯の素材で⾒劣りするため、所有する満⾜感を求めない実利層をターゲットにしてきました。ところがここ数年で
この企業の考え⽅が⼤きく変わりました。以前は⼤阪の会社らしく実利の追求をよしとしてきましたが、社内にデ
ザイナーをかかえ権限を与えることでやる気をださせ、さらに品質にこだわり始めたのです。
もともとやってみてから考えるタイプの会社で、企画から発売までNBメーカーでは考えられないくらいの簡素で
スピード感のあるプロセスにより商品を市場に出してきました。この会社のデザイナーの⾃由度は⾼く、⾃分の夢
をすぐに形にできます。そしてもしヒットすれば成果はボーナスとしてすぐ跳ね返ってきます。⼤⼿メーカーから
の転職があるなど、働くには最⾼の会社です。3フロアーに及ぶ商品の展⽰場を⾒せてもらいましたが、驚いたの
はそのクオリティです。10年前のこの会社の商品イメージは、プラスチック感満載で置く場所を選ぶ商品だらけ
でした。ところが部屋に⼊った瞬間、「いいな」と感じさせる商品で溢れていました。特にオーディオや扇⾵機な
どは、独⾃のデザインで、是⾮買いたいと思わせるものでした。
彼らがこれほどまでに独創性と品質を兼ね備えた商品を企画するようになったのは、⼤⼿家電メーカーのブランド
⼒の弱体化と無縁ではないと思います。以前は家電に⼊っているマイコンや⾦型などはコストが⾼く量が売れない
場合は開発費を賄え切れず、資本⼒のある⼤⼿メーカーで市場が寡占されていました。ところがコンピュータの⾰
新がスマホに収斂しハードからソフト重視に転換したように、家電の世界も機能⾯だけで差別化が難しくなったの
です。マイコンや⾦型製造の敷居が低くなった今、安定性と⼤きな組織によるアドバンテージがなくなりました。
意思決定が速くアイデアが浮かんだらすぐ実現できる組織が、イノベーションを⽣み出せる時代が到来したのです。
家電のように消費者のNBへのブランド志向が弱まっている業界では、組織と経営理念が⼤⼿の先を⾏っているP
Bメーカーが、イノベーションを牽引する時代がやってきたようです。
⼀⽅PBが増えてもNBが依然として⼒を持っており、今後もプレゼンスを維持し続けるとみられるのが⾷品業界
です。⾷に安全は絶対条件であり、消費者から信頼されるには⻑い時間がかかります。⼤⼿コンビニのPBは信頼
感の醸成には成功しつつありますが、味の追求と値上げを繰り返した結果、PBの良さであった値段がNB以上に
なる場合もあります。今後値段に⾒合った価値をどれだけ提供できるかが重要となる時代が到来しました。
前述の雑貨・家電のPBに強い会社のデザイナーや開発者は、市場成⻑⼒にしても⾃⾝の収⼊にしても前途洋々に
⾒えますが、そんなに⽢くないようです。⾃分の企画した商品が失敗すると、給与が減額されるそうです。そして
この宮殿のような本社は、リーマンショックの時に破たんした不動産会社の本社を居抜きで買ったそうです。その
後リニア新幹線の計画も持ち上がり、資産価値もうなぎ上りだそうです。株と⼀緒で⾒栄を張らず(株ならバリュ
エーション無視のグロース株)、じっと我慢し割安な時に買えるよう資⾦を準備した企業(割安成⻑株)が最後は
勝つようです。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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