好きになれば変化は肌で感じます!

2016年5⽉9⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『好きになれば変化は肌で感じます!』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
フォルクスワーゲンに続き、三菱⾃動⾞⼯業でも偽装問題が発覚しました。今回の問題は以前三菱⾃動⾞が引き
起こしたリコール隠しと異なり、取り換えれば済む問題ではないため、経営に⼤きなダメージを与えるのは間違
いなく、株式としてはその推移を⾒守るしかありません。
ただ私は三菱⾃動⾞には好印象を持ってきました。正確に⾔うとこの会社の「⼈」が好きです。そしてエンジニ
アにはとても良い会社です。
私が⼤学の機械⼯学科の学⽣だった1990年代中頃、⼤学4年の夏休みに1か⽉近く、三菱⾃動⾞に毎⽇実習に⾏
き、⼤変お世話になりました。川崎にあるトラック⼯場では2週間かけてエンジンをバラし、それを組⽴て、⾃
動⾞の様々なパーツの仕組みを現場の指導員の⽅に親切に教えてもらいました。岡崎にある研究所では内燃機関
の最先端の原理を開発者に熱⼼に講義していただきました。また喜連川のテストコースでは当時の憧れのスポー
ツカーであったGTOでプロドライバーの運転する時速200kmを越える世界を体験させてもらい、バンクに押し
付けられるGを思い出します。社員の⽅も三菱のエンブレムに誇りを持ち、やさしく伸び伸びとした雰囲気を感
じました。
四⼗代以上の⼈は覚えていると思いますが、1990年代の三菱⾃動⾞は⾶ぶ⿃を落とす勢いの会社でした。それを
牽引したのが⼀世を⾵靡したパジェロのヒットです。三菱⾃動⾞は戦前の三菱造船(現三菱重⼯)の流れを汲み、
戦後に三菱重⼯⾃動⾞部が独⽴した会社です。⾃家⽤⾃動⾞というより産業⽤⾞両に強く、現在はダイムラーグ
ループですが三菱ふそうのトラックや商⽤⾞に強みを持っていました。その流れからパジェロはトラックベース
の頑丈だが重いラダーフレームを採⽤しています。1982年の初代発売時は硬派なオフロードカーでした。ただサ
スペンションを乗⽤⾞のように独⽴懸架するなど当時としては斬新な⾞で、パリダカールラリーでの活躍もあり
⾼価な⾞でしたが、バブルの勢いとともに⼤ヒットしました。三菱⾃動⾞のすごいところは、このような⾃由な
発想を実⾞で実現してきたところです。これ以外でも量産⾞では世界初となる直噴エンジン(GDI)を1996年に
ギャランに搭載したり、ホンダが売りにしていたVTECに対抗する可変バルブタイミング&リフト機構(MIVEC)
を1990年代に実⽤化するなど、⼩規模メーカーとは思えない技術開発⼒を発揮していました。
このアグレッシブで先進的な技術開発を可能にしたのが、仕事を任せる組織⾵⼟です。相対的に⼩さい⾃動⾞会
社でありながら軽⾃動⾞からトラックまでフルラインナップで持つが故に、社員の裁量の余地は⼤きく、がんば
れば他社以上に多くの業務経験を積むことができます。またGTOやランサーエボリューションなど尖った⾞を開
発できることが、理科系の学⽣にとって三菱の魅⼒でした。
ただ2014年に⾞好きには衝撃的な発表がありました。1992年以降、国内外で強烈なブランドを築き上げてきた、
ランサーエボリューションの発売終了を発表したのです。確かに近年の販売台数はピーク時の10分の1以下でし
たが、未だに廉価で買えるスーパーカーとして根強い⼈気があります。この事実は私には、三菱の経営の変化を
感じさせました。前回の不祥事の影響でマネジメントに社外の⼈材が送り込まれたことにより、数字や利益優先
になったのかもしれません。また開発費がまわらなくなったのかもしれません。いずれにせよ技術開発に夢を
持っている私にとって、株式としての三菱⾃動⾞の魅⼒は⼤きく損なわれ、それ以降私の中では敢えて投資する
対象ではなくなりました。
このような企業⾵⼟の変化は商品を良く知れば感じられます。本気で⾒れば⾒るほど敏感に感じられます。表⾯
的な数字だけでなく、企業⾃体を好きになることは投資の⼤きなヒントとなります。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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