『 本の通信株、原点回帰へ』

2016年1⽉18⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『⽇本の通信株、原点回帰へ』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
先⽇、沖縄県の⽯垣島に家族で⾏ってきました。ここは沖縄本島より台湾に近い⼈⼝5万⼈弱の島です。ショッピングセン
ターや外⾷のチェーン店は島の南部にありますが、どの店も島で⼀軒しかないのどかな町です。でも島の⼈はもともとのん
びりしており、逆に店を選ぶことをあきらめればコンパクトにまとまっている住みやすい街だそうです。⾞を⾛らせている
と、ただ1つだけ何度も⾒る看板があります。⽯垣島に3軒もある、携帯電話のauショップです。⽇本の最⼤⼿のNTTド
コモは2軒、ソフトバンクは1軒しかなく、auの充実ぶりは際⽴っています。
実は沖縄の携帯電話トップシェアはauなのです。キャリアはKDDIではなく、沖縄セルラー電話というKDDIの⼦会
社の上場会社です。沖縄でのauのシェアは50%と断トツで、通話品質もトップのようで、沖縄では携帯電話といえばauな
のだそうです。
全国とは異なる通信キャリアのシェア構造のためか、契約獲得への販促費も熾烈です。以前は⼀家でMNPを使うとキャッ
シュバックが数⼗万円ということもあったほどの⼤きさだと聞いていました。時間もあったのでauの店を3軒回ってみたの
ですが、最新のiPhone 6sへの販促はキャッシュバックが5万円を超えていました。実は東京でもいつにも増してキャン
ペーンを⾏っていましたが、旧機種であるiPhone 6が対象であったり、iPhone 6sならiPhone 5sの下取りが前提となって
いたりするため、最新機種でのキャッシュバック規模はおそらく⽇本⼀だと感じました。
1年前、当コラムで「⽇本の通信、均質化元年を迎える!」を紹介しました。その前の2014年までは、各キャリアは
iPhoneの採⽤の有無、保有帯域の違いや基地局数をアピールし、いかに⾃社が他社に⽐べてつながりやすく通信速度が速
いかを競っていました。それも今は昔、2015年は仕事柄、携帯ショップを⾒て回るのを⽇課にしている私でさえ、速度の
アピール競争はほとんど聞かなくなりました。予想通り、端末⾯でも通信品質⾯でも均質化が進んだのです。
また、料⾦体系の⾯でも、ドコモが2014年に導⼊したカケホーダイプランが、キャリアの標準プランとなりました。だい
たいデータ通信込みの料⾦は5GBで7,000円、2GBで6,500円と横並びの⽔準になりました。
このように通信品質、料⾦体系、主⼒機種といったこれまでユーザーがキャリア選びの⽐較対象としていたファクターの競
争がほとんど収束し、キャリアサービスの均質化が完成しました。確かに細かく⾒れば、例えばゴルフ場での接続では、
auのKDDIは4Gのことが多く、ソフトバンクはほとんど3G通信などの違いを感じることもあります。また地⽅の⼀部
ではトラフィックの少ないところでももれなく基地局を設置しているキャリアを選ぶ消費者がいるかもしれませんが、都⼼
でのモバイル通信だけみればもはや差は感じなくなりました。
そんな⽇本の通信業界にとって、最後となるかもしれない契約獲得競争が起こっています。そのきっかけは総務省の「携帯
電話の料⾦その他の提供条件に関するタスクフォース」の取りまとめです。ここでは⼤⼿キャリアの基本プランが最低2G
Bから、税抜き6,200円からとなっている点を問題視しており、5,000円以下の廉価プランの提供と、MVNOの普及を促
しています。また販促費の使い⽅や解約時の料⾦などこれまで携帯業界が築いてきた仕組みに疑問を投げかけています。
東京でも11⽉頃から、キャリアの乗り換えキャンペーンの規模が各社で拡⼤しましたが、総務省の指針により1⽉ごろ変更
が予想されるキャリアの販促⽅針が影響していると思います。今後は各社が現在⾏っている⽉々サポートと呼ばれる毎⽉の
2,000円〜3,000円の販促費を減らすのと同時に、通信料が1GBで、総⽀払額が5,000円以下の廉価プランの投⼊を発表
しました。モバイル通信量が少ないユーザーはこちらのプランにシフトすることが予想されますが、端末への販促が減ると
いうことは、端末購⼊を伴う乗り換えは⽉額⽀払いが膨らみます。この5,000円以下という値付けは予想以上にお得感のな
い価格設定となりました。
昨年は通信品質と料⾦の均質化が進んだ1年でした。今年は、昨年までMNPでの乗り換え時の差別化要因であった、乗り
換え販促費の均質化が進みそうです。結局端末の変更を⾏おうと思うと予想以上に費⽤がかかるため、普通のユーザーは現
在の端末を使い続けたくなりそうです。次期iPhoneはあまり販売動向が芳しくないiPhone 6s以上に苦戦しそうです。
⼀⽅、販促費合戦が収まることで、キャリアの業績は安定化が予想されます。ただこれまで端末切り替え時は、キャリアに
とって新たなサービス課⾦を獲得する⼤きなチャンスでした。キャリアの株価上昇は単価の反転期待と数量増が引っ張って
きたのですが、端末切り替えが減ることでこの変化もこれまでより緩やかになることが予想されます。
結果、今回の総務省の指針はキャリアの株価の転機となることが予想されます。フィーチャーフォンからスマートフォン化
による安定成⻑株から、本来の安定収益株としての評価に市場の⽬線が変わっていきそうです。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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