2016年8⽉22⽇ ⽇本株ファンドマネージャーの視点 『IoTと中⼩型株』 ※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。 ありとあらゆるモノがインターネットに接続し情報を交換するIoT(Internet of Things)の概念は新しいものではありません。IoT という⾔葉⾃体は1999年から存在します。ただ、最近急速に注⽬を集めているのはなぜでしょうか。それは技術⾰新とコストダウ ンの進展です。特に通信モジュールが⼩型化しコストが急激に下がったことと、スマートフォンの普及と低消費電⼒化がIoTを加速 させています。スマートフォンに3軸加速度センサーなどが搭載されることで、量産効果によってセンサーのコストダウンが進み、 コストが下がりモノへの搭載が進むことでネットに接続する機器が増え、さらにネットにつながる魅⼒が⾼まるという、IoTの好循 環が始まっているのです。 ⽇本の中⼩型株にも、IoTをビジネスチャンスと捉え、積極的に取り組む企業がたくさんあります。 IoTのプロセスを単純化すると、①センサーでモノから情報を取得→②インターネットを経由しクラウド上でデータを蓄積→③クラ ウド上でデータを分析→④分析結果をフィードバックという流れになります。まず①で思いつくのは様々なセンサーです。温度、湿 度、照度、加速度といったおなじみのものから、⾳圧、紫外線センサーといったものまで、⼈間が知覚できるものだけでなく、すべ ての物理学的な事象がセンシングされてきています。これらを開発するのは資本⼒のある⼤⼿電⼦部品メーカーが中⼼ですが、⽇本 の中⼩型企業はその周辺で⾶躍を⽬指して地道に開発をしています。 また、すべてのIoTには電源が必要です。エアコンといった家電ならコンセントから電源が供給されますが、IoTが⽬指す「モノ」 とは電源環境がない末端の機器が重要となります。そこで必要となるのが⻑く持つ電池です。さらに⾃家発電である、動きや振動、 環境からエネルギーを取り出す「エネルギーハーベスティング」も注⽬されています。スイッチを押した時の圧⼒、温度差の利⽤、 LEDのエネルギー密度の低い光でも発電できるデバイス開発、微⼩電磁波などの技術⾰新により、センサーや通信モジュールの消費 電⼒量が⾶躍的に⼩さくなったため活⽤できるエネルギー源が多様化しました。 また、IoTは必ず通信をします。通信をするためには、周波数を安定的に⽣成するタイミングデバイスが必須です。通信する種類と 数だけタイミングデバイスが必要ですが、これまで⽔晶振動⼦が中⼼でした。この分野は⽇本企業が強く市場規模は3000億円を超 えると⾔われており、最近は新技術であるシリコンを材料にしたMEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)タイミングデバイ スがシェアを上げ始めています。このタイミングデバイスはまだニッチ市場のため中⼩型の企業が取り組んでいますが、温度特性、 コスト⾯と微⼩化のしやすさからウェアラブルスマートフォンでの採⽤が始まっており、今後IoT機器の増加に⽐例して爆発的に市 場が拡⼤する可能性があります。ソフトバンクの掲げるARMのIoTのチップすべてに、1個以上のタイミングデバイスが⼊ることを 考えると、今後の成⻑の夢は広がります。 また②や③では、ソフトウェア関連で私が調べただけでも60社以上の中⼩型上場企業がIoTに取り組んでいます。この中からいくつ かの企業では、IoTの収益化に成功する勝ち組がでてくると考えています。 特に中⼩型企業でチャンスがありそうなのが、クラウドとIoT機器の接続領域です。ここの問題は末端のエッジ端末とクラウドを接 続する規格です。この⼤⼿企業がつくったセンサー群を結びつけるソフトウェアの世界は、経営戦略の⾃由度の⾼い中⼩型株の活躍 する余地はありそうです。 ④については蓄積したデータを分析する領域です。ここも現状は混とんとしていますが、⼈⼝知能(AI)がエンジンとして重要とな ります。これまでのノイマン型のコンピュータはプログラムを与えることで初めてコンピュータは機能します。ただAIを使った脳型 コンピュータは、蓄積したビックデータを使って⾃らアルゴリズムを作り出し進化していきます。AIはニューラルネットワーク(神 経回路網)と密接に関連しており、1990年代から何回かブームがありました。いずれもすぐ下⽕になりましたが、今回はグーグル など⼤⼿資本が多額の資⾦を投じており、過去と⼤きく異なります。ムーアの法則で微細化が進むと、2018年頃にはワンチップに 搭載可能なトランジスタが⼈間の脳の300億個を超えると⾔われています。⼈間の脳を超える時、これまでの常識が変わるかもしれ ません。グーグルなどの⼤⼿の開発⼒に対抗できるソフトウェア関連の中⼩型企業が以外な急成⻑をするかもしれません。 IoTはデバイスにしてもソフトウェアにしても、これまでと次元の異なる数量が期待されます。そこで数量増の恩恵を受けられる、 地道な技術⼒のある企業を探していきたいと思います。 株式運⽤部 永⽥ 芳樹 ■当資料は情報提供を⽬的として⼤和住銀投信投資顧問が作成したものであ り、特定の投資信託・⽣命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するもの ではありません。■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成 しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当 資料に記載されている今後の⾒通し・コメントは、作成⽇現在におけるレ ポート作成者の判断に基づくものであり、事前の予告なしに将来変更される 場合があります。■当資料内の運⽤実績等に関するグラフ、数値等は過去の ものであり、将来の運⽤成果等を約束するものではありません。■当資料内 のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 大和住銀投信投資顧問株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第353号 加入協会 一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
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