『成 株に変質する最後のバリュー株!』

2015年11⽉30⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『成⻑株に変質する最後のバリュー株!』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
秋も深まる中寒くなると増えてくるのが、⻑らく⽇本の年度末の恒例⾏事となっている道路の舗装⼯事です。私が⽇々利⽤する
道路も今年は⼀段と⼯事が多く、平⽇だけでなく休⽇も⼀時通⾏⽌めになることが増えてきました。道路利⽤者としては効率的
な⼯事をお願いしたいところですが、これらを請け負うのが道路舗装会社です。
株式市場での道路舗装会社の株は⻑年割安なバリュエーションに放置されてきました。その理由は、⺠間需要が少なく、国と都
道府県、市町村の公共投資に依存するため、公共投資削減による需要減をダイレクトに受けること、そして技術⾰新が乏しく感
じられることが原因だと思います。この業界では技術⾰新はなかなか起こりにくく⾒えますが、地道な努⼒が続けられています。
⾼速道路に採⽤されている⽔たまりのできないアスファルト道路や、50年張り替え不要なセメントを⽤いたコンクリート道路、
環境に優しい道路など、安全運転と燃費向上に縁の下から貢献する研究開発が⾏われています。特にタイヤとダイレクトに接す
るのが道路なので、⽅式によっては2-3%といった燃費改善が期待でき、⾃動⾞会社は世界の⾼効率舗装に投資した⽅が良い
と思えるほどです。影のESG関連株といえると思います。
(2001年度〜2012年度)
5.5%
道路舗装で⼀般的なのが、⽯油を原料とするアスファルト舗装です。⼯事が
道路事業費に占める舗装修繕費の比率
容易で通⾏⽌め解除までの時間が短く、また乗り⼼地も良好なので⽇本の中
5.0%
道路事業費に占める舗装新設費の比率
⼼的な材料となっています。⽋点はすり減りやすい点で、5-10年ごとに
4.5%
張り替えが必要となりますが、これは定期的な需要があるともいえます。
需要を考えると公共投資は⻑期的に減少してきました。ただ東⽇本⼤震災と
4.0%
その翌年の安倍政権誕⽣以降、20年に及ぶ減少局⾯から下げ⽌まり、今後
3.5%
は増加も予想されます。また特筆すべきは道路事業の中で張り替えなどの
修繕費率の上昇です。図のように新設費の割合は概ねフラットなのでこの修
3.0%
繕費の増加は、公共投資の中で道路へのお⾦の使い⽅が変化していることを
2.5%
⽰しています。
実は道路舗装会社にとってこの変化は重要です。道路舗装会社は新設も修繕
2.0%
も⾏いますが、利益率が⾼い⼯事は、基礎部分の出来上がっているアスファ
2001
2003
2005
2007
2009
2011 (年度)
ルト⾯の張り替えのみを⾏う修繕だからです。⼈⼝減社会に向け新設から維
(出所)⼀般社団法⼈ ⽇本道路建設業協会データより
持管理へ公共投資が⼤きく変化する中、さらなる追い⾵となるのは来年以降
⼤和住銀投信投資顧問作成
本格受注が⾒込まれる東京五輪関連の道路投資です。五輪関連銘柄というと
まず思いつくのが、スタジアムなどの箱物事業です。この関連銘柄は⼤⼿ゼネコンですが、実は業界規模を考えると最もメリッ
トを受けるのは道路業界だと思います。2020年の五輪に向けて東京の主要道路では、アスファルトを張り替えと景観を害す
る電柱の地中化といった⼤規模な再整備が期待されます。その業務を請け負うのが道路舗装会社なのです。道路⼯事材料は重く
鮮度が重要なので、⼯事現場の近くにプラントがあることが必要です。ただバブル崩壊以降需要減の中、⽣産能⼒は縮⼩してお
り、そろそろ計画的に⼯事を始めないと五輪に間に合わなくなります。
また外国⼈のインバウンド需要急増が現実になった今、⽇本全国で投資加速が期待されるのが街並みの整備です。例えば世界遺
産に登録されて以降、富⼠⼭周辺は外国⼈観光客が急増しています。それにつれて周遊路線バスの運⾏は3年前の30分間隔が
今や15分間隔になっているそうで、潤ってきた⺠間観光業者が20年ぶりに投資を始めたそうです。きれいになった観光地が
⽇本⼈観光客を呼びこむなど、好循環が始まっています。このような街並みの整備で重要なのが、きれいな道路と電柱の地中化
です。ここでも全国の道路舗装会社の活躍の場が広がっていくことが期待されます。
コスト⾯ではアスファルト道路の原料はストレートアスファルトと乳剤ですが、両⽅とも原油由来です。そのため原油価格がダ
イレクトに利益に反映されます。道路舗装会社は国の補正予算の恩恵を受けてきたゼネコンと異なり、都道府県や市町村からの
受注が多く極端な下期型の収益構造でした。ところが今回の中間決算では中堅の道路舗装会社で好調な決算を発表する会社が⽬
⽴ちました。私はコストメリットや利益率の⾼い修繕⼯事の増加が、中⻑期的に始まってきたためだと考えています。来年以降
の売上の伸びしろを考えると、収益率の⾼まった道路関連株は今後さらなる利益率の改善を⾒込めると判断しています。
ゼネコンを中⼼とした建設株のバリュエーションは、東⽇本⼤震災と⾃⺠党政権以降、今年の初めの当コラムで指摘したとおり
利益率の改善が顕著となり上昇してきました。これに⼤きく寄与したのが改正品確法ですが、今後は利益額の変化はフラットに
なることを想定します。それに⽐べ道路舗装株は最⾼益をうかがう会社がある中、⽇本のバブル期の株価⽔準からはるかに戻り
が弱い銘柄が多く、今後利益額の増加とともに割安株からの脱却が⾒込まれると思います。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
■当資料は情報提供を⽬的として⼤和住銀投信投資顧問が作成したものであ
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