型株、ガバナンスの変化が始まった!

2016年10⽉3⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『⼩型株、ガバナンスの変化が始まった!』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
最近、私が⻑年カバレッジをしてきたいくつかの⼩型株に、⼤きな変化がありました。
1社⽬は東⽇本の地⽅の⾷品会社です。この会社は⽇本⼈なら誰でも知っているお菓⼦を製造販売する会社です。ここ数年売
り上げ成⻑が加速しており、円安を乗り越え利益成⻑してきました。ただ地⽅に本社があり、これまで積極的にIR活動を
⾏ってきませんでした。このような企業の特徴は、PERといった株価バリュエーションが相対的に低位なことです。この会社
の場合、⾷料品の同業他社がPERで25倍程度に評価されている中、現在でも10倍台半ばで評価されていますが、さすがに他
社に劣らない増益率のため、緩やかに株価が上昇してきました。
この会社にはここ3年で6回程、IR⾯談をお願いしてきたものの、毎回断られていました。ところが今回初めて訪問取材の許
可をいただきました。まだ訪問は先なのですが、先⽅の担当役員の⽅からは事前に「いろいろよろしくお願いします。」と⾔
われており、不安を持ちながらも会社として相当な覚悟をもって⾯談を受けたのが垣間⾒られます。
実はこのような会社は、誰も⾒ていない⼩型株ではいくつもあります。別の東証2部上場の⾷品会社も私と⾯談すると、必ず
IRについて今後どうすれば良いかと聞いてきます。他の機関投資家からIR依頼がないのかほとんど会っていないようで、毎
回説明会や資料内容についてアドバイスを求めてきます。ただ説明会も⾏いたいのですが集客などの懸念もあり、なかなか踏
ん切りがつかないようです。それも当然で会社として満を持して説明会を設定し社⻑がプレゼンするのに、聞く⼈が少ないと
事務⽅は恰好がつきません。私は初めて開催する会社は多くの⼈が集まりますとアドバイスをしているのですが、実際の開催
は来年度になるかもしれません。
次にご紹介するテックセクターの⼩型株の会社は、先⽇初めて同社の北陸⼯場⾒学会を開催しました。ただ遠⽅のため宿泊す
る必要があり、参加者は私を含めて3名しかおらずこじんまりとした⾒学会でした。私は前⽇に現地に⾏かないと取材できな
い2社の企業訪問を⾏ったため有意義でしたが、⼩型株に興味がないファンドマネージャーやアナリストは、わざわざ1社の
地⽅の⼯場のために2⽇も潰せないのかもしれません。
ただこの⼯場⾒学は⼤変役に⽴ちました。近接する3つの⼯場を順番に回ったのですが、各⼯場⻑⾃ら詳細に事業内容を解説
いただきました。特に興味を持ったのが地元での役割です。その地⽅ではこの会社で働くか公務員をやるか、農業をやるかし
か働き⼝がありません。この会社はその地⽅の雇⽤を⽀えるためになくてはならない企業で、働いている⽅はまじめに業務に
取り組んでいました。
この地⽅⼯場は実は株式市場では、利益率が上がらない元凶のように⾔われがちでした。それもセルサイドからバイサイドま
で、実際の⼯場を⾒た⼈は誰もいないにも関わらず、表⾯上の数字を⾒て労組が悪いのではないかなど⾔いたいことを⾔って
いました。私もそういう⽬で⼯場⾒学にいきましたが、実際に問題があったのは低採算の受注を⾏う本社サイドで、この地⽅
⼯場は実直に収益改善に取り組んでいます。ただコスト配分が⾒えないために、⼯場が悪いように⾒えていたのです。
この⼯場⾒学を企画した本社のIR部⾨はがんばりました。地⽅⼯場とはいえ、会社内でそれ相応の⼒を持つ部⾨に初めて⾒
学会をさせるのは⼤変だと思います。⾃社の問題点も明らかになるのを恐れずに⾒学会を開いたことは、⾮常に⼤きな変化だ
と感じます。
このように⼩型企業では、これまでになくIR姿勢の変化が⽬⽴ってきたのを強く感じます。その⼤きな理由が安倍政権に
なって加速している企業統治改⾰です。2014年に閣議決定された「⽇本再興戦略」で明⽰され、⽇本としては異例の速さで
2015年に制定されたコーポレートガバナンスコードがその中核です。その基本原則には適切な情報開⽰と透明性がうたわれ
ており、おそらくこれがこれまで積極的でなかった企業が変わりだした理由だと思います。取締役会などで触れられれば事務
⽅は迅速に対応をするのが、⽇本の企業です。アベノミクスは⾊あせてきた感もありますが、中⼩型株の世界ではその効果は
着実に現れ始めています。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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