企業の変化を感じ取ろう! - 大和住銀投信投資顧問

2016年2⽉15⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『企業の変化を感じ取ろう!』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
⽇本の多くの企業の第3四半期の決算発表が終わりつつありますが、今回の決算ではこれまでにない株価の反応が顕著
に⾒られました。というのは、決算発表後の企業の株価が、⼤型株であっても10%以上動く銘柄がざらにあり短期ボ
ラティリティが極めて⾼かったのです。グローバルの景況感の悪化や⽇銀の政策変更などの影響もあるかもしれません
が、それにしても今回の決算は今までと違う印象を受けました。
セルサイドアナリストのカバレッジのない中⼩型株がこうした値動きをするのは、これまで通りなのですが、今回はセ
ルサイドアナリストのカバレッジがあるメジャーな銘柄でもびっくりするくらいの値動きをする銘柄が数多くあり、さ
らにこれまで以上に決算に伴うセルサイドアナリストのレーティング変更に過敏に反応している気がします。この点か
らも以前と今回の決算発表では決算前に株価に織り込まれてきたことに、何か変化があったように思います。
当コラムでは昨年11⽉に「プレビュー時代の終焉」というレポートを書きましたが、企業側の情報開⽰や、セルサイ
ドアナリストのリサーチ⼿法に変化があった可能性があります。短期から中⻑期へ⽬線がシフトしたのです。マクロ環
境も不透明な中で、多くのアナリストが取り組んできた短期業績の当てっこゲームの効⼒も弱まる中、これからの銘柄
選択ではやはり株式の価値とは将来のキャッシュフローや配当の割引現在価値の合計という点を思い出し、中⻑期投資
を⾏うのが⼤切です。
私は以前から中⻑期投資を推奨してきましたが、その⽅法論は暗中模索でした。ただ昨年スタートした時価総額100億
円以下をメインターゲットにする集中投資ファンドのリサーチを⾏う中で、⼤切なものが⾒えてきたような気がします。
このファンドの組み⼊れ銘柄数は10数銘柄で、売却を簡単には⾏わず⻑期投資を⾏う⽅針です。そのため経営者に⾯
談する段階から⻑期投資のコミットメントを前提に⾯談をしています。またリサーチ内容も、業績のことはほとんど聞
きません。インタビューするのは、社歴、⼈事体制、経営⽅針、社内の雰囲気の変化などで、業績を中⼼に話す多くの
ファンドマネージャーやアナリストにはどうでも良さそうなことをしつこいくらい話します。こうした業績には⼀⾒関
係のないようなことでも同じことを何回も話していると、その中で会社の変化がぼんやり⾒えてきます。
先⽇も経営⽴て直し中の新興企業の新社⻑と⾯談を⾏いました。5ヶ⽉間で3度の⾯談を⾏いましたが、その間でも変
化を感じました。経営⽴て直しのため社⻑に就任して間もない時は、社⻑の現状認識には若⼲の⽢さがあったようです。
以前に在籍した有名な成⻑企業のCFOという実績もあり、100名程度の⼩さい会社なら⽴て直しは容易であると⾒て
いたようです。しかし、実態は成⻑期に⼈事戦略なしに⼈を無尽蔵に採⽤したことで過剰⼈員を抱えているだけでなく、
⼈材のミスマッチも起きていたようでした。また組織も⼤企業のように重層的で新興企業と思えないほど意思決定が遅
く、⽬の前のことをこなせば良いと考える社員が多い状態でした。
社⻑はどちらかと⾔えば理論派で、これまでの経験から正しいことを実⾏すれば、結果がついてくると考えていたよう
です。ただそれはうまくいっている成⻑企業なら機能する考え⽅で、経営⽴て直し中の組織では乗り越えるべきものが
多かったのです。社⻑と⾯談を重ねる中で、今回強く感じた変化は社員への愛情でした。ここ数ヶ⽉、経営課題を約
100名の社員と⽇々触れ合い議論し、試⾏錯誤してきたことで、社員と⽬標を共有しそれに向けて頑張っていく組織に
変わってきたのです。そして社⻑⾃⾝が、マネジメント型からビジョン型のリーダーに変わりつつあるのです。
この会社は組織も⽂鎮型のフラットな組織に変えました。実際社員の⽅と話すと、業務のことをみんなで話す機会が増
えたそうです。組織⾵⼟が変われば、1年もあれば数字に表れてきます。
このような社⻑や組織⾵⼟などの定性条件を、株価評価に組み⼊れているアナリストやファンドマネージャーは少ない
ように思えます。⼀つの要因は彼らが企業の業績を⾒ることの専⾨職であって、どちらかといえば個⼈主義の世界で仕
事をしているためだと思われます。⼀⽅、多くの企業では専⾨職は⼀握りで、ゼネラリストの出⾝者が会社を経営して
います。このため、アナリストやファンドマネージャーが中⻑期成⻑銘柄を発掘するためには、⾃分の置かれている運
⽤業界の特性に染まらず、何よりも世間⼀般の⽬線が⼤切だと再認識しました。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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