動 の進化と退化を体感する

2016年7⽉11⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『⾃動⾞の進化と退化を体感する』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
最近馴染みの⾃動⾞ディーラーから、試乗⾞を2週間程借りる機会がありました。2週間で500km近く⾛り倒し、これま
で紙の上で理解していた⾃動⾞の最新トレンドを⾝体で感じることができました。現在乗っているのは発売から12年、⾞
齢が先⽇10年を超えた⾞ですが、試乗⾞は⾞格、値段もほぼ同じながら最新の装備を満載した⾞です。その主な相違点を
表にしてみました。
10年前の⾞
エンジン
サスペンションの特性
パワーステアリング
⾞内の⾳
運動エネルギーの活⽤
ディスプレイ
コネクティッド機能
⾃動運転
直列6気筒 ポート噴射⾃然吸気
固定
エンジン出⼒による油圧式
調整なし
バッテリー以外なし
カーナビ機能が⼤半
なし
なし
最新の⾞
直列6気筒 直噴ツインスクロールターボ
ボタン⼀つで調整可能な電⼦制御式可変
切れ⾓やアシスト量が可変な電動式(EPS)
エンジン⾳や⾛⾏⾳を調整し⾞内で出⼒
キャパシタを使った回⽣+エンジンストップ
カーナビは⼀機能ですべての機能のインターフェース
緊急時連絡+スマートフォンのBluetooth⾃動接続
追突防⽌+⾃動追尾+レーンキープ
この10年間で起こった変化は、前半の5年は燃費のためのエンジンの進化や、サスペンションやパワステに代表される操
舵感にかかわる部分の電装化です。この部分の進化を考えると、⼤変な変化ですがドライバーからみるとあまり進化の実
感がない部分だと思います。というのはエンジンのダウンサイジングも燃費のためであり、排気量が2リットルから1.3
リットルになっても同じ出⼒がだせるだけの話です。エンジンフィールを加味すると私の感性には退化とさえ感じさせま
す。電動パワステも同様で油圧の持つリニアな感覚が失われますが、エンジンの⼒を使わないため燃費は改善します。こ
れらの変化が消費者に、新⾞を買ってこれまで以上の幸せを感じさせたかは疑問に思います。
⼀⽅、ここ5年の⼤きな進化は、⾞のコネクティッド機能と⾃動運転へのサポート機能です。最新の⾞に乗ることで⼤い
に変化を実感させられました。コネクティッド機能とはこれまで外部と⼀切つながることがなかった⾞のコンピュータ
(ECU)が外界とリアルタイムにつながることを⾔います。これにより期待される進化が⾛⾏データの把握です。例えば
⾛り⽅が優しい運転か乱暴な運転か、⾼速⾛⾏が多いのか町中⾛⾏が多いのかなど、これまで通算の⾛⾏距離だけしかわ
からなかった⾞の使⽤状況を、通信モジュールを搭載することで多⾯的に知ることができるようになります。それをビッ
クデータとして外部に蓄積し、交通情報、⾛⾏データ連動保険、中古⾞評価、補修部品の需要予測、レンタカーの稼働率
向上などの活⽤が期待されています。
ただ今のところ、私はこれが⾃動⾞を⼤きく変えるとは思えません。前述の活⽤例はほとんどが消費者であるドライバー
のためではなく、⾃動⾞関連業界のためのものだからです。膨⼤な通信容量を使ってできる効率化やドライバーが得る効
⽤は極めて⼩さく、ディスプレイに詳細な⾃分や他⾞の蓄積データが表⽰されても、喜ぶドライバーはあまりいそうにあ
りません。ドライバーは⾞の中ではデータを⾒る暇はそんなにないのです。
⼀⽅、⾃動運転には未来を感じます。道路の⾞線のペイントが薄いところは機能しないなど、インフラ⾯の整備が⾃動運
転に対応するには相当時間がかかりそうですが、⾃⾞の⾞線認知も前⾞への衝突抑制もそれなりに機能し、前⾞への追随
機能は使えそうです。ただ、「あれっ、機能しない」と思うこともまだあり、全幅の信頼を寄せるのは厳しいのですが、
補助としては⼗分使えそうです。
ここ数年の⾃動運転に代表されるソフトウェアの進化は⽬覚ましいものがあります。ただそれとともに⾃動⾞が⼈間の感
性に与えてきたものが失われ始めている気がします。10年前の直列6気筒の⾃然吸気エンジンの回せば回すほどトルクが
付いてくる感覚、これこそ現代的なダウンサイジングターボのつくるつくられた⾼トルクエンジンには絶対だせない、本
物のエンジンだと感じます。今後⾃動⾞のハイテク化が加速度的に進化するのは間違いありませんが、これまで⾃動⾞の
⼈々に与えてきた⾼揚感や幸福感は退化していく気がします。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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