地 創 - 大和住銀

2016年7⽉19⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『地⽅創⽣』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
「路⾯電⾞がなくなっていてなんとなく寂しい」というのが、先⽉末に祖⺟が住む岐⾩市に約10年ぶりに訪
れた時の印象です。⼦供の頃、⾚いちんちん電⾞に魅せられ、何度も⾒に⾏った記憶のせいかもしれません。
祖⺟は90歳を超えてもなお元気です。元気の源はカラオケで⼗⼋番は美川憲⼀さんの「柳ケ瀬ブルース」で
す。この歌で有名になった岐⾩市の繁華街も、⼈通りはまばらで、街全体として活気がなくなったように⾒
えました。偶然、岐⾩市が外国⼈観光客の誘致に⼒を⼊れ始めたと、7⽉4⽇付の⽇経新聞が報じていました。
しかし、織⽥信⻑ゆかりの岐⾩城や、⻑良川の鵜飼いに⾏くにも、⾞でないと⾮常に不便です。その点で路
⾯電⾞は、バスと⽐較しても路線がわかりやすく、ベビーカーや⾞いすでの利⽤も格段に利便性が⾼いと思
います。外国⼈に限らず、観光客を増やすには、路⾯電⾞があったほうが良かったと感じます。市が⼀部補
助⾦を投じて、10年ほど前に建設した駅前の複合タワーのような箱ものでは、⼈を呼び込むのは難しいよう
に感じました。
全国の路⾯電⾞は昭和初期をピークに廃⽌が相次いできました。しかし、ここ最近は世界、特に欧⽶での発
展を受けて少し変わってきています。⼀部地域ではLRT(次世代型路⾯電⾞システム)の導⼊に対して、前
向きになってきているようです。国も環境負荷や、超⾼齢化社会に対応したコンパクトな街づくりに⽋かせ
ないインフラとしてLRTを位置づけており、普及を後押ししています。
⽇本初の本格的なLRTは富⼭ライトレールと⾔われています。旧JR富⼭港線をLRT化し、本数、駅数を増加
させたことで、1⽇の利⽤者数が3,000⼈から5,000⼈程度に⼤きく改善しています。今後はJR富⼭駅への
乗り⼊れを計画しています。また、昨年市電の環状化を実現した札幌市も、路線のさらなる延伸を検討して
いるようです。乗⾞⼈員も2009年を底に回復基調となっています。先週、取材で札幌に⾏った時に、電⾞
に乗る時間はなかったのですが、タクシーの運転⼿に話を聞いたところ、観光客や⾼齢者には利便性が向上
したようだとのことでした。5⽉末には、宇都宮市などのLRT計画に関して、ルートなどの都市計画決定が
⾏われ、今年度中にも着⼯される⾒通しです。この他にも、岡⼭市や⾦沢市、東京近郊でも横浜市や⼋王⼦
市、つくば市などがLRTの導⼊を検討しているようです。
LRTの導⼊には、その収⽀や財政の問題がついてまわります。富⼭市もスマートシティ化を推し進める中で、
財政に対する懸念が強まっています。札幌市も数百メートルの延伸にお⾦をかけすぎているとの批判もあり
ます。このような状況から、導⼊が加速していないことも事実です。しかし、セブン&アイHDやイオンの
GMSの売上不振が続いているところをみると、郊外型の⼤型ショッピングセンターの撤退は今後も続くとみ
られます。このことは、都市の将来を考えるうえで、⼤変重要だと思われます。このままではいけないとの
思いから、地⽅都市は何らかの⼿を打ってくるでしょう。地⽅の将来にとってLRTの導⼊が良いことなのか
は、私には分かりませんが、都市の有⼒な活性化策の⼀つとして注⽬される可能性があると感じています。
地⽅を訪れると、上記のようにいろいろと考えさせられることがあります。たまにしか訪れないためかえっ
て強く感じることや、他の街との違いなどから思うこともあります。もともと⼀⼈旅も好きな性格なので、
地⽅企業の取材も苦になりません。⾒て、聞いて、感じて、楽しみながら、投資アイデアを考えるのも良い
のではないでしょうか。
株式運⽤部
部奈 和洋
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