日本株ファンドマネージャーの視点 -新興バイオ株を見極める方法

2015年2⽉23⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『新興バイオ株を⾒極める⽅法』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
⼩型株担当として銘柄を発掘する時、⼀番悩ましいのがバイオ関連銘柄です。私はわからないものには、投資しないことを
基本としています。ただバイオ関連の潜在市場は⼤きく、将来の収益が年間1,000億円も夢ではない世界で株価が何百倍
となることも期待できるため、良い銘柄があれば組⼊れを検討します。
中⼤型のバイオ関連株はセルサイド、バイサイドともに多くのアナリストがカバーしています。既存のパイプラインがあり
その特許が切れるタイミングや、⻑期的な新薬の市場投⼊予定などが投資判断に重要となりますが、基本的にすでに売上・
利益という株価の裏付けがあります。⼀⽅、新興バイオ関連銘柄で⽇本の株式市場に上場している企業は、既存の売上とな
るパイプラインを持っていることは少なく、株価は今後の新薬やフェーズが進むことに対する期待を織り込んで形成されて
います。
既に多くの⼈の⽬にさらされている中⼤型株ですら、新薬の動向で株価が⼤きく動くことが多々あります。⼤きく株価が動
くということはマーケットが株価に織り込んできたことと⼤きくずれることを意味し、アナリスト等のコンセンサス予想か
ら外れることを意味します。
専⾨家である知⼈の複数の医者に新薬について聞いてみても、専⾨分野以外を詳しく知っているわけではないようです。こ
のことからも様々な新薬の開発を⾏っている⼤⼿製薬企業の投資判断を⾏うのは、医者ではないファンドマネージャーやア
ナリストの知⾒では限界がありそうだと最近感じています。
ただ⼩型のバイオ関連株に限ると、⼤きく付加価値を出した経験がいくつかあります。⼩型のバイオ上場株の特徴は、
(Ⅰ)収益構造が単純、(Ⅱ)連続⾚字の会社が多く資本剰余⾦はプラスでも利益剰余⾦は⾚字、(Ⅲ)⼤学や企業との関
わりをアピールしている、などの特徴があります。
(Ⅰ)については⼩型のバイオ株は上場して数年の企業も多いのですが、その多くは特定の疾患に対する治療薬の将来収益
を元に上場してきます。特定の疾患ということは、その動向だけを考えれば良いということで、⾮常に投資判断しやすい事
業構造といえ、市場の全セクターを⾒ている⼩型株ファンドマネジャーでも、⼗分理解ができることを意味しています。
(Ⅱ)については、東証の銘柄コード4500番台の新興企業の業績を⾒ればわかるとおり、継続的に⾚字の会社が数多く
存在します。それがなぜ上場し存続しているかといえば、上場時やベンチャーキャピタルから資⾦を調達しているため、⾃
⼰資本がそれなり厚く将来の収益期待を反映して株価が形成されているからです。実際の収⼊となるのは、新薬を市場投⼊
した時の売上やその治療薬の進展具合に伴い受け取る製薬会社からのマイルストーン(開発段階毎の⼀時⾦)ですが、新薬
が市場投⼊されるまでは10年単位の時間がかかり、⽇本のバイオベンチャーではまだ収益化している会社は多くありませ
ん。
(Ⅲ)は上場時に投資家の期待を⾼めるため、積極的にアピールされることが多いです。ただ数年経つと上場時の状況と変
わってくることも多々あり、結果的に過剰にアピールされたことになります。
このように新興のバイオ関連銘柄は、利益的な裏付けが乏しい中で上場しているため、投資への確信度を⾼めるのは極めて
厳しい銘柄群といえます。またこれらの企業が上場してくるのも、ある意味不思議です。もし主⼒の治療薬の将来性への確
信度が⾼ければ、薬のプロである⼤⼿製薬企業が資⾦提供していても不思議でありません。それが株式市場という製薬会社
よりアマチュアな投資家から資⾦を吸収するのも、そちらの⽅がメリットがあるからと勘ぐりたくなります。
このように、わからないことだらけのバイオ関連銘柄ですが、実はリスクが少ない割にリターンも⼤きい銘柄群があります。
それは既に売上と利益を計上している銘柄です。利益が出ているということは売上が計上できる治療薬を既に持っているか、
継続的にマイルストーンを獲得できる程の希望の持てるパイプラインがあることを意味します。これらの会社の企業との対
話で感じるのは、あまり⼤きな成果を狙わず地道に研究開発を⾏っていたり、世界の複数の⼤⼿製薬会社とのリレーション
を構築していることです。医者でもない投資家がその薬の将来性を適切に判断するのは困難です。それでも売上を計上し、
投資家よりはるかに薬のことを知っている製薬会社が⽰すそのバイオベンチャーの将来性は、⼤きな投資のヒントとなりえ
ると思います。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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