『効果的な 社株買いについての考察!』

2015年11⽉24⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『効果的な⾃社株買いについての考察!』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
3⽉決算の折り返し地点である9⽉の中間決算を無難に通過し、上昇トレンドを取り戻した⽇本の株式市場です
が、今回も多くの企業が⾃⼰株取得を発表しました。
ただ、発表後の株価の反応はいくつものパターンがあり、今回は株価に効果的な⾃社株買いについてファンドマ
ネージャーの視点から考えてみたいと思います。
⾃社株買いや増配などの株主還元策が株価上昇の絶対条件では決してないということは⾔うまでもありません。
⾃社株買いを実施していなくても利益成⻑により企業価値を⼤きく持続的に上昇させている企業は数多く存在し
ます。“⾃社株買いをする資⾦があるのであれば、その資⾦を将来への成⻑投資に振り向ける”、むしろその⽅が
企業としての王道であると⾔えると思います。ただ、どんなに優れた企業であっても利益成⻑過程での踊り場は
必ず存在するはずです。踊り場が1年で終了する企業もあれば2〜3年必要となる企業もあるでしょう。その様
な時こそ⾃社株買いを有効に活⽤するべきだと思います。
決算説明会でよく“⾃社株買いをなぜしないのか?”という質問に対して“当社は成⻑企業です。将来の成⻑へ投資
をするので⾃社株買いは⾏いません。”と断⾔する話をよく⽿にします。確かに正論だと思いますが、その企業の
成⻑が市場の期待値に届いていない場合によく⽿にするような気がします。企業としては毎期増益を確保して成
⻑しているという⾃負があるのでしょうが、市場としてはその成⻑では⾜りない(ROEが低下してしまう)、
もっと成⻑するか、あるいは⼤胆な資本政策(ROEの維持・向上のため)を要求してしまいます。
つまり、企業と市場の成⻑への期待値のずれがこの様な問題を起こしてしまいます。
また、市場があまりにも⾃社株買いを要求するため、中には⾃⼰株式取得の設定枠だけを発表してなにもしない
という企業もまだ存在します。更には株価が⼤きく下落した時だけ⾃社株買いを実施したり、創業家のまとまっ
た売りや持ち合い解消に対応するために消極的な⾃社株買い(これらはToSTNeTを利⽤して実施される場
合が多く、1⽇で⾃⼰株取得が終了してしまいます。)を実施する場合もあります。当然この様なパッシブな
ケースでは株価の持続的な上昇は期待できません。
◇効果的な⾃社株買いのまとめ
①まず市場と企業との成⻑への期待値のずれを⼗分に認識する。
②業績の踊り場時にはROEを維持・向上させるような⼤胆な資本政策を市場に期待させる。
③⾃⼰株取得はToSTNeTではなく信託⽅式等を利⽤して継続的に⾏う。
④⾃⼰株の取得はROEを維持・向上させるための有効な⼿段の⼀つであり、成⻑企業であっても⾃ら否定する
べきものではないが、本来の利益成⻑を当然忘れてはならない。
最後に、スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードにより企業の意識改⾰が以前よりかなり前
進していることは⽇々の発⾏体との対話で私も強く感じています。ただ、せっかくの⾃社株買い、どうせやるな
らもっと効果的なものを期待したいと思います。
株式運⽤部
⼩出 修
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