No.2014-151 2014年12月24日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp フィリピン再加速の兆し ~ 内需盛り上がり ~ (1)本年7~9月、フィリピン経済が減速。実質経済成長率を4~6月と対比すると、前年比では6.1% から5.3%と若干の鈍化。季調済前期比年率では7.9%から1.5%と大幅鈍化。主因は外需。輸出を 大幅に上回って輸入増。一方、民間消費や設備投資は堅調。季調済前期比年率で寄与度を4~6月と 対比すると民間消費は+3.9%から+3.4%、総固定資本形成は▲3.1%から+5.3%。輸入増は旺盛な 内需反映の可能性。しかし供給力不足が主因の場合、海外への需要漏出で低成長が長引く懸念も。 今後をどのように見るべきか。 (2)実質輸入は本年5月を底に7月から大幅増加(図表1)。自動車を中心とする輸送機械と原油、 石油製品が増加の中心。輸出は4月を底に5月から持ち直した後、一進一退。しかし鉱工業生産と 出荷は3月を底に4月から増勢回復した後、6月以降伸び悩む兆しがみられたものの、9月から再び 力強い増勢復帰。輸出動向から推せば内需増が生産や出荷増加を牽引。7~9月と10月の工業生産 を主要業種別にみると鉄鋼など基礎金属や石油製品、木製品、衣類履物ではマイナス(図表2)。 しかし、過半の業種がプラス。とりわけ金属製品や輸送機械は大幅増。 (3)季調済年率ベースで直近11月の自動車販売台数をみると、全体で25.4万台(図表3)。9月と 並び既往最多水準。乗用車は10月の10.4万台から10.0万台へ僅かながら減ったものの、商用車が 10月の15.3万台から16.0万台に増えて既往最多。同国では近年、自動車販売台数が大幅に増加。 2012年と13年では販売台数が15.7万台から18.2万台に増加、生産台数は7.5万台から7.9万台と 小幅増。自動車輸入が増加。市場拡大を受け一昨年末来、製造業を中心に対内直接投資が盛り 上がり。設備投資増加で供給力不足問題は次第に解消へ。雇用情勢は一段と改善(図表4)。 失業者数は本年初をピークに期を追って減少。本年10月、失業率は6.4%。既往最低。底堅い 消費増を下支え。内需に牽引され、同国経済は実質6%成長持続の公算大。 (図表1)フィリピンの実質輸出入と生産・出荷(季調済) 130 実質輸出 実質輸入 鉱工業生産 鉱工業出荷 124 118 (2013年=100) 20 112 15 106 (2013年=100) 112 100 106 94 100 88 94 88 (図表2)主要業種別工業生産(季調済) 118 (%ポイント) (2013年=100) 増減率(①/②、左目盛) 2014年4~6月(右目盛) 2014年7~9月(②、〃) 2014年10月(①、〃) 10 155 144 133 5 122 0 111 ▲5 100 ▲10 89 82 ▲15 78 76 2013 14 (年/月) (出所) PSAなど (注)実質輸出入は左目盛。生産、出荷は右目盛。 (図表3)自動車販売台数(季調済年率) 20 (図表4)労働・非労働力人口と就業・失業者数、失業率 (万台) 乗用車(左目盛) 商用車(左目盛) 総数(右目盛) 18 (出所) National Statistics Office 26 7.8 15 (%) 24 7.5 10 7.2 5 6.9 0 16 22 14 (万台) 20 12 18 10 16 8 14 6 12 6.6 4 10 労働力人口(右目盛) 就業者数(右目盛) 失業率(左目盛) 非労働力(右目盛) 失業者数(右目盛) 8 6.3 2 2009 10 (出所) CAMPI 11 12 13 (10万人) 14 (年/月) ▲5 ▲10 2012 13 14 (年/期) (出所)NSO (注) 季調済。失業率以外は対2012年初差。 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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