No.2015-043 2015年4月13日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp エジプト持ち直し ~ 懸念は周辺情勢 ~ (1)エジプトがプラス成長復帰(図表1)。実質経済成長率は前年比ベースで2013年10~12月 の▲1.0%から14年1~3月3.3%のプラス成長に転換。14年年間で4.8%。もっとも、7~9月の 7.2%から10~12月4.5%に鈍化。主因は政府消費の鈍化と在庫投資のペースダウン、外需減。 一方、民間消費や総固定資本形成は引き続き底堅い増加。寄与度をみると7~9月の政府消費 は+0.8%と他の四半期対比際立って大きく、需要を上回る在庫増は今後、景気下押しに作用 する懸念大。10~12月の成長鈍化を深刻視する必要小。 (2)もっとも、鉱工業生産に季節調整を施してみると、昨年9月以降減勢。そこでまず分野別に みると、生産減は旅行が主因(図表2)。とりわけ本年1月、昨年10~12月比▲37%と大幅減。 シリアやイラク情勢の流動化に加え、本年1月からイエメン情勢も流動化。旅行産業は同国の 主要産業の一つだけに、周辺情勢流動化に伴う旅行者数の減少はダメージ。加えてイエメン は紅海の入り口に位置するだけに、イエメン情勢の流動化はスエズ運河の利用減に直結。 (3)一方、建設は本年1月前月比13.8%と大幅増。景況全体と連動性が高い電力需要も昨年8月 をボトムに増勢。本年1月も前月比1.3%増。製造業全体では依然弱含みながら、主要業種別 にみると、本年1月のマイナスは皮革や電気機械など、一部の業種(図表3)。大半の業種が ほぼ横這うなか、衣類や自動車、一般機械、通信精密機器で増勢転換の動き。同国主力産業 の一つである自動車をみると、販売台数が昨年大幅増(図表4)。乗用車は14年27.4万台、 前年比5.4万台増。商用車は14年7.6万台、同1.3万台増。しかし生産台数は10年の11.7万台を ピークに減少。昨年は2.7万台。政権が安定し販売増で先行き期待が拡がるなか、増産の動き。 裾野産業の広い自動車の増産は関連業種の生産増に加え、雇用増に波及。周辺情勢の行方は 依然不透明ながら、内需の立ち直りを原動力に同国経済の持ち直し傾向持続が展望。 (図表1)エジプトの実質経済成長率(前年比) (図表2)分野別鉱工業生産(季調済) 10 30 (%) 外需 在庫投資 政府消費 総固定資本形成 民間消費 実質GDP 5 130 (2013年=100) 20 (%) 120 10 110 0 100 90 ▲10 増減率(①/②、左目盛) 2014年1~3月(右目盛) 2014年4~6月(右目盛) 2014年7~9月(右目盛) 2014年10~12月(②、右目盛) 2015年1月(①、右目盛) ▲20 0 ▲30 ▲40 80 70 60 ▲5 2013 14 (年/期) (出所) CAPMAS (出所) Egypt State Information Service (図表3)主要業種別工業生産(季調済) (図表4)自動車販売台数と生産台数 220 28 60 (%) 自動車生産台数 乗用車販売台数 商用車販売台数 (万台) (2013年=100) 40 増減率(①/②、左目盛) 2014年7~9月(右目盛) 2014年10~12月(②、右目盛) 2015年1月(①、右目盛) 20 180 24 20 140 16 0 100 12 ▲20 60 ▲40 20 8 4 0 2005 (出所) SIS 06 07 (出所) OICA 08 09 10 11 12 13 14 (年) 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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