≪藤井英彦の視点≫

No.2015-040
2015年4月6日
≪藤井英彦の
藤井英彦の視点≫
視点≫
http://www.jri.co.jp
アルゼンチン底入れの兆し
~ 生産と雇用増 ~
(1)アルゼンチン経済に底入れの兆し(図表1)。昨年8月、発電量や建設許可面積が大幅減。
主因は前月7月の大雨で季節調整に歪み。建設許可面積は翌9月、発電量は9~10月に反動増。
均してみると、総じて昨春来、一進一退の後、建設許可面積は本年1月、発電量は2月に増加。
鉱工業生産は昨年12月を底に本年入り後、増勢復帰の兆し。もっとも鉱工業生産は昨年6月に
増加したものの、7月から再び弱含み。今後をどのようにみるべきか。
(2)主要業種別にみると、本年入り後の生産増は金属製品や非金属、紙製品に加えて、輸送用
機械が牽引(図表2)。そこで自動車市場をみると、生産台数は一昨年央来の減勢から昨年
半ば以降、一進一退に転じ、本年2月増加(図表3)。販売台数は昨年初大幅減の後も減勢。
年末に一進一退となり、本年2月増加。輸出入台数は昨春来総じて底這い。季調済年率ベース
で本年1、2月をみると、販売台数は55万台から58万台。生産台数は57万台から62万台。一方、
消費者物価は食料品や燃料、衣類を中心に騰勢鈍化。昨年1月の前月比3.6%から、本年2月は
同0.9%。さらに生産者物価は本年2月同▲0.1%、国内卸売物価は本年1月同▲0.5%、2月同
▲0.9%。インフレ一巡が進むなか消費者マインド改善。本年3月は2012年2月以来の高水準。
景気の先行き期待が拡がり、耐久財や住宅に対する購入意欲積極化。
(3)消費者心理好転に雇用環境の改善も(図表4)。雇用者数は13年末来の頭打ち傾向を脱し、
昨年10~12月増勢復帰。エリア別には大ブエノスアイレス圏の限定的な増加に対し、地方圏
が大幅増。さらに一進一退だった昨年半ば、地方圏では着実な雇用増。首都圏では雇用減。
地方圏で次第に成長始動。小売売上高は増勢持続ながら物価上昇による名目増。実質ベース
では昨年、民間消費マイナス。インフレが終息に向かう一方、輸出も底入れが拡がるなか、
同国経済が今後、持ち直しに転じる展開が視野。
(図表1)アルゼンチンの生産と建設許可面積、発電量
104
(2013年=100)
(2013年
鉱工業生産(左目盛)
建設許可面積(右目盛)
=100)
発電量(右目盛)
102
100
120
115
6
110
4
100
95
96
増減(①-②、左目盛)
(2013年
2014年7~9月(右目盛)
=100)
2014年10~12月(②、右目盛)
2015年1~2(①、右目盛)
(ポイント)
105
98
(図表2)主要業種別工業生産(季調済)
8
134
117
2
0
100
▲2
▲4
83
90
▲6
94
85
▲8
0
92
66
80
2013
14
(出所) INDEC
15
(注) 季調済。
(出所) INDEC
(年/月)
(図表3)消費者信頼感と自動車市場
(図表4)就業者数と小売売上高(季調済)
消費者信頼感(右目盛)
61
販売台数(左目盛)
生産台数(〃)
57
輸入車販売台数(〃)
(ポイント)
輸出台数(〃)
(10万台)
10
5
(2013年=100)
就業者数(大ブエノスアイレス圏、左目盛)
就業者数(その他、左目盛)
就業者数(全体、左目盛)
小売売上高(スーパー、右目盛)
4
53
8
160
(10万人)
145
3
130
2
115
1
100
0
85
49
45
6
41
37
4
33
2
2013
(出所) INDEC、UTDT
14
0
29 ▲1
15 (年/月)
2012
(注) 消費者信頼感以外は季調済年率。
70
13
(出所) INDECなど
14
(年/期)
(注) 就業者数は対2012年1~3月差。
【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373)
≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。