No.2015-007 2015年1月19日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp 緩む原油需給 ~ 低調な減産の動き ~ (1)原油価格が一段と下落。1月7日、1バレル当たり47.9ドルと同50ドルを割り込んだWTIに続き、 12日、北海ブレントも同48.7ドルと50ドル割れ。産油国サイドで減産に向けた動きは依然低調。 原油価格が同100ドルを割り込み始めた昨年8月を基準にOPEC各国の産油量をみると、原油 価格が同90ドルを割り込んだ10月から、月半ば以降同50ドル台に下落した12月まで減産維持は クウェートとカタール、アルジェリアの3ヵ国のみ(図表1)。8月比の減産規模はカタールが ▲7%。それに対して、アルジェリアは▲2%、クウェートは▲3%と小規模。9月から11月まで 3ヵ月減産したUAEは12月、8月比日量6千バレル上回る増産。復興が進むイラクやリビアは 大幅増産。従来、スウィングプロデューサー役を果たしてきたサウジは若干ながら増勢傾向。 (2)米国エネルギー省の短期エネルギー見通しをみると最新の本年1月版で年初~年央を中心に 世界全体で原油需給の緩みが強まる見込み(図表2)。本年1~12月の生産量と消費量を昨年 12月版と対比すると消費量は若干ながら上方修正(図表3)。しかし生産量が消費量の増加を 大幅に上回って上方修正。本年1月見通しでは昨年12月見通し対比一段の原油需給緩和が展望。 (3)主要産油国の米加伯3ヵ国とOPEC、それ以外に分けて昨年12月と本年1月の生産量見通し の変化をみると、単月では本年1月のカナダや10月のブラジルで大幅増ながら、総じてみれば OPECの増加が世界の産油量上方修正の主因(図表4)。大幅な原油安にも拘らず、従来と 異なり減産に消極的なOPECのスタンスを反映させた可能性。一方、米国産油量は本年2月 まで上方修正ながら、3月以降、下方修正。シェール油田の採算分岐点が総じて1バレル当たり 70ドル前後であり、現状の同40ドル台では大半の油田が採算割れのため。もっとも、修正幅は 最大の10月でも日量17万バレル台で、減産規模は▲1.2%と小幅。減産に消極的なOPECの 姿勢と米国エネルギー省見通しを重ねてみれば、一段の原油価格下落が視野。 (図表1)OPEC各国の産油量 2014年12月(左目盛) 14年10月(〃) 14年12月(〃) (図表2)世界の産油量と原油消費量(米EIA推計) 14年9月(14年8月差) 14年11月(〃) 10 60 (百万バレル/日) 20 (百万バレル/日) 94 (10万バレル/日) 15 93 (万バレル/日) 8 48 6 36 4 24 10 92 2 12 0 0 -2 5 91 0 90 ▲5 ▲12 -4 ▲24 産油量-消費量(左目盛) 産油量(右目盛) 消費量(右目盛) ▲10 89 88 ▲15 2013 14 15 (年/月) (出所) OPEC (注) 2014年12月産油量以外は右目盛。 (出所) US EIA (図表3)米EIA原油推計(2014年12月と15年1月) 6 5 生産量増減(①-②(⑤)、左目盛) 消費量増減(③-④(⑥)、〃) 需給増減(⑤-⑥、〃) 生産量(2015年1月見通し(①)、右目盛) 〃(14年12月〃(②)、〃) 消費量(15年1月〃(③)、右目盛) 〃(14年12月〃(④)、〃) (注) 2015年1月推計。 (図表4)OPECと主要国別産油量(米EIA推計) 5 (10万バレル /日) 4 940 3 935 2 4 930 1 3 925 2 920 1 915 0 910 (10万バレル /日) (10万バレル/日) ▲1 ▲2 OPEC カナダ その他 905 ▲3 ▲1 ▲2 0 900 ▲4 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 (月) 2014/7 (出所) US EIA (注) 比較期間は2015年1~12月。 (出所) US EIA アメリカ ブラジル (年/月) 15/1 07 (注) 2015年1月推計の対14年12月推計差。 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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