No.2015-029 2015年3月11日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp タイ持ち直し ~ 輸出増から生産増 ~ (1)タイ経済が持ち直し(図表1)。まず輸出数量が昨年8月を底に増勢復帰。輸入数量は月次変 動が大きいものの、昨年初の最悪期を脱した模様。一方、鉱工業生産は昨年10月から増勢回復。 昨年12月、前月比▲0.5%のマイナスとなったものの、本年1月には同0.7%と再び増加。このと ころの輸出増は砂糖やコメの農産品、光学機器など精密機械や電気機械に加え、自動車が牽引。 国別には米国向けに加え、ベトナムやフィリピン、台湾や香港など、周辺国向けが大幅増。 (2)昨年10月からの生産増を主要業種別にみると、10~11月と12月~本年1月で変化(図表2)。 景気底入れが拡がるなか、食料飲料や衣類の寄与度が低下する一方、石油精製や自動車の寄与 度が増加。とりわけ家具や通信機器の寄与度が大幅増。耐久財消費が盛り上がり。 (3)代表的耐久財の自動車をみると、季調済年率ベースで、まず輸出台数が昨年9月の107万台を 底に本年1月122万台に増加(図表3)。国内販売台数は昨年12月の81万台から本年1月83万台。 漸く増勢復帰の兆し。生産台数は昨年8月の174万台から本年1月204万台。排気量別にみると、 1800cc未満の普及車が増加の中心。周辺各国の経済成長を受けて、同国の供給拠点化が進行。 二輪車では輸出台数が昨年5月25万台を底に本年1月34万台、国内販売台数は昨年6月162万台を 底に本年1月175万台。国内販売増で生産台数は昨年7月159万台から本年1月211万台に増加。 (4)景気持ち直しを映じて雇用情勢改善(図表4)。雇用者、労働力人口とも13年夏以降、ほぼ 月を追って減少。昨年11月を底に12月、漸く増勢回復の兆し。もっとも12月、失業率が前月比 上昇。非労働力から労働力へのシフトが主因。むしろ前向きの動き。企業・消費者心理も改善。 同国経済は昨年10~12月、前年比2.3%、季調済前期比年率7.1%成長を回復。輸出増に今後、 内需が上乗せされ、同国経済は実質5%前後の底堅い成長軌道復帰の公算大。 (図表1)タイの鉱工業生産と輸出入数量(季調済) 110 (図表2)主要業種別工業生産(季調済) 115 0.6 130 (2013年=100) (2013年=100) (2013年=100) (ポイント) 108 鉱工業生産(左目盛) 輸出数量(右目盛) 輸入数量(右目盛) 106 110 104 105 0.4 120 0.2 110 0.0 100 102 100 100 98 90 ▲0.2 寄与度(②/③、左目盛) 寄与度(①/②、〃) 2014年7~9月(③、右目盛) 14年10~11月(②、〃) 14年12月~15年1月(①、〃) 95 96 ▲0.4 94 90 92 ▲0.6 90 0 80 70 85 2012 13 14 (出所) Office of Industrial Economics など 15 (年/月) (図表3)自動車・二輪車の輸出、販売、生産台数 30 (図表4)労働力人口と雇用者・失業者数、失業率 30 26 (10万台) 22 国内販売(自動車、左目盛) 輸出(〃、〃) (10万台) 国内販売(二輪車、〃) 輸出(〃、〃) 生産台数(自動車、右目盛) 生産台数(二輪車、〃) (出所) OIE 30 1.3 (%) 26 25 1.2 労働力人口(10万人、左目盛) 雇用者数(10万人、左目盛) 失業者数(万人)、左目盛 失業率(右目盛) 20 22 1.1 15 1.0 18 18 10 0.9 14 14 5 0.8 0 0.7 10 10 ▲5 0.6 6 6 ▲10 0.5 2 2 ▲15 2013 14 15 (出所) The Federation of Thai Industries (注) 季調済年率。 (年/月) 0.4 2012 (出所) IMF 13 14 (年/月) (注) 季調済。失業率以外は対2013年1月差。 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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