No.2015-002 2015年1月7日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp 途上国輸出増 ~ 構造変化進行 ~ (1)途上国輸出が堅調な増加(図表1)。従来、途上国経済は総じて欧米先進国向け輸出に依存。 リーマンショックでは輸出減で成長屈折。しかし2012年以降、先進国輸入に翳りが拡がるなか、 途上国の輸出は、季節調整に伴う月次変動が残るものの、趨勢的増勢を維持。先進国では13年 半ば以降、輸出入とも増勢回復の兆し。しかし、14年初来、再び一進一退。途上国の先進国に 対する依存度が低下へ。 (2)12年初来の途上国輸出の増加を中国と南アジア、それ以外のアジア、その他に分けてみると、 中国は、14年初、春節に伴う季節調整の歪みがみられるものの、均してみれば、13年央以降、 着実な増勢(図表2)。次いで13年秋からインドを中心に南アジアが増加。さらに14年央来、 その他アジア、具体的にはインドネシアとマレーシア、ベトナムなど東南アジアが増加。13年 半ば以降の増加が最大の中国について輸出先をみると、東南アジアや南アジアなどアジア向け がEUや米国向けを大幅に上回って増加。アジア以外のその他途上国のみ、昨年央来弱含み。 (3)逆に輸入サイドからアジアの途上国エリアをみると、昨年初来、最大の増加はインド(図表 3)。相手国別では中国、マレーシアやインドネシアが増加。品目別には原油や綿花、貴金属 に加えて、鉄鋼や受信機器など製品が増加。次いで東南アジアが増加。以上を要すれば、近年、 新興各国経済の成長離陸でアジアを中心に途上国相互の貿易取引が拡大。先進国向けの輸出が 増えなくてもエリア内で輸出入が増加し一段の成長を相互に後押しする拡大均衡が次第に定着。 (4)アジアの新興諸国は総じて原油消費国。昨年央来の原油安は成長押し上げに作用する筋合い。 15年初の原油価格が今後1年間持続した場合のリフレ効果を試算すると、タイの+2.6%を筆頭に アジア各国では総じて1~2%の成長率押し上げ(図表4)。一段の途上国貿易増が視野。 (図表1)先進国の実質輸出入と途上国の実質輸出 (図表2)エリア別途上国の実質輸出(季調済) 121 (2011年=100) 8 実質輸出(OECD加盟高所得31カ国) 実質輸入(OECD加盟高所得31カ国) 実質輸出(途上国) 114 7 (百億ドル) (百億ドル) 南アジア(左目盛) その他アジア(左目盛) 中国(右目盛) その他(右目盛) 18 17 107 6 16 5 15 4 14 3 13 100 93 86 79 2 72 2006 07 08 09 (出所) World Bank 10 11 12 13 (注) 季調済。 7 (百億ドル) (百億ドル) インド その他アジア 中国 13 (出所) World Bank (年/月) (図表3)アジア途上国のエリア別実質輸入(季調済) 8 12 2012 14 14 (年/月) (図表4)主要消費国の原油価格下落の影響 15 2.8 5 (%) (億トン) 2.4 14 GDP比率(%) 産油量(13年(②)) 消費量(13年(①)) 4 2.0 6 13 1.6 3 5 12 1.2 2 0.8 4 11 1 0.4 3 10 0.0 2 0 9 2010 11 (出所) World Bank 12 13 (注) 中国のみ右目盛。 14 (出所) IMF など (注) GDP比率=(①-②)×(原油価格(2014年平均)-同 (年/月) (15年1月1~2日同))÷名目GDP(14年(実績見込み))。GDP比率のみ左目盛。 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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