2015 年度 慶応義塾大学 文学部 (小論文) 全体概況

2015 年度 慶応義塾大学 文学部 (小論文) 全体概況
試験時間
大問数・解答数
難易度の変化(対昨年)
大問数:
○ 難化
1題
● やや難化
解答数:
○ 変化なし
問題の分量(対昨年)
○ 多い
○ 変化なし
出題分野の変化
○ あり
● なし
出題形式の変化
○ あり
● なし
新傾向の問題
○ あり
● なし
90分
2問
○ やや易化
○ 易化
● 少ない
総評
昨年度と同様に一つの文章による出題であった。今年度の課題文は科学知識の伝達を中心にした科学知
のコミュニケーションを論じたものである。科学知識の伝達、理解のためには具体的イメージが必要に
なるために比喩や擬人的な表現をとらざるを得ず、そのために誤解や歪曲が生じ、それがディスコミュ
ニケーションを生んでいるという内容で、課題文の読みとり自体は難しくはない。設問Ⅰは筆者の主張
を要約させる問題であったが、課題文の文章が昨年度より1000字程度短く、また、わかりやすい具
体例が多いので、主張を読み取ってまとめる、という作業は取り組みやすいものになっている。その意
味では、設問Ⅰでは大きな差はつきにくいものと思われる。設問Ⅱは、課題文をふまえた上で「人間に
とって科学的知識とはどのようなものか」を考え、論じさせる問題であった。課題文自体には科学的知
識そのものがどういうものであるかについてはほとんど記述がないのにも関わらず、「科学的知識とは
どういうものか」を考えさせるわけであって、この問いにきちんと答えなければ高得点にはならないと
ころが例年にない出題のされかたであり、その意味では難易度は高い。筆者が科学的コミュニケーショ
ンにおける誤解に批判的であるところから思考を展開できるかどうかが鍵である。科学的知識は正しく
コミュニケートされねばならないというところから、なぜ正しいコミュニケーションが必要なのかを考
えれば、現代社会の基盤になっている科学的知識が「公共的知」であり、ある種の「社会規範」という
性質をもつということを考えることができる。そこさえつかめれば、論述にはさまざまな展開がありう
る問題である。
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