光と影の狭間で 雛太P ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので す。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を 超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。 ︻あらすじ︼ 闇夜をかけるバイクが1台いた。 ﹂ 爆音を撒き散らしながら走るそのバイクには女性が跨っていた。 紫色の特攻服に身を包んだ者は⋮ 中途半端に走ってんじゃねぇぞっ ! そしてこの物語は、彼女が違った世界へと足を踏み入れ、大きく羽ばたいていくお話 そして夜は、レディースのヘッドを任された特攻隊長である。 彼女は向井拓海。18歳の女子高生である。 今日も元気そうに走っている。 ﹁オラオラァッ ! である。 ﹁りなりなもいるぽよ∼☆﹂ ﹁勝手に出てくんなっつってんだろ﹂ ※今作はオリ主設定となっております。ご注意ください。 目 次 2 特攻 ││││││││││ 1 院生 ││││││││││ § § 5 1 1 院生 ﹁本日の授業はこれまで。さぁ明日は待ちに待った休みだ。みんな気をつけてな 代わり映えの無いチャイムを背に、高校生たちは家路に着く。 おもむ ﹂ 球部顧問の先生はすでに出払っているが。 ﹂ 社会科職員室はそれほど広くは無い。その中に6人の男性教師が常駐している。野 ﹁お疲れ様です、杉山先生﹂ 職員室の扉を開け、席に着いた途端に声を掛けられた。 ﹁二宮先生、今日もお疲れ様です﹂ 少し遠い場所にあった。 やや重い足取りで職員室に赴く。ちょっと広い学校であるためか、社会科の職員室は もう目の前だった。 季節は秋口。女子たちのセーラー服も紺色に変わった。教員になって2年目の冬が ! § ? 一瞬、部屋の中がどよめいた。それは厳しいんじゃないか、と初老の教師が口を開く。 ﹁なんとか進んでいますよ。でも⋮来週初めには粗方終わらせてしまいたいですね⋮﹂ ﹁修士論文の調子はどうですか §1 院生 1 ﹁非常勤とはいえ、夜の見回り班を作ったばかりで人が足りん。今日からがその当番だ ろうが﹂ 忘れていた。完全に頭からすっぽ抜けていた。今日は帰宅前に1杯飲もうと考えて いたのに⋮。 !? 構遊んでただろ、元暴走族の二宮は﹂ 先生ってヤンキーだったんですか !? 転じてです﹂ ﹁私は、車が大好きでした。先ほど荻田先生が私のことを暴走族と言ったのは車好きが 褒めてはないんだろうな、とは思うが、気にはしない。 ﹁そう言ってくださると嬉しいです﹂ ﹁いつも朝に見ますけど、これ凄いですよね⋮﹂ 駐車場には自分の車が停まっている。 ﹁二宮先生、私も付いていきます。聞きたいこともありますので﹂ ﹁ちょっと駐車場に行ってきます﹂ 時刻は午後6時。地元のルーレット族が動き出すにはまだ早かった。 ﹁ヤンキーと暴走族は違いますよ、杉山先生﹂ ﹁えぇ ﹂ ﹁まぁ、あの暴走族共を追いかけられるのは二宮先生と、あと数人位だからなぁ。昔は結 2 ﹁なんだ、そうなんですね﹂ 小さい頃から車が大好きだった自分は、大学時代に貯めたバイト代でとある車を購入 した。RX│7、通称FDである。憧れの車を手に入れ、毎日走っていた。 だが維持費はとてつもなく高かった。親からの金銭的な補給線は絶たれ、奨学金とバ イト代で生活する毎日。それでいて授業は多かった。大学院に入ったら、車を手放すこ とになる。そう覚悟をしていた時に舞い込んだ話が︻母校の非常勤講師︼だった。非常 勤ならば、仕事をしながらでも大学院に進学することが可能だ。 決断まで、そう時間は掛からなかった。 ﹁まぁ実際、この車が役に立ってるんで文句無しです。さ、車も点検できましたし、職員 室に戻りましょうか﹂ 職員室では代わり映え無くニュースが垂れ流されている。そろそろ午後7時。バラ ﹂ エティでも見ながらコンビニ弁当だ。 ﹁二宮先生、味噌汁いかがです ﹁あ、いただきます﹂ あったかい味噌汁と少し冷めたコンビニ弁当、これは心に効く。 ? テレビでは旅番組が流されていた。 ︵あったかい食卓に憧れるなぁ⋮。味噌汁うめぇ⋮︶ §1 院生 3 ﹃皆さん、金閣寺ですよ 金閣寺 いやぁ、とても綺麗ですね ! 可愛い子だった。一瞬、呆けていたらしい。 ! ﹄ ! ﹂ ? ﹁大学生なら、可愛い子でもいたんじゃないですか ﹁いたとしても、性格が終わってましたよ﹂ ﹂ どこの世界も、考えることは同じなんだなと思った。味噌汁も少し冷めていた。 ﹁あぁ、やっぱりそうですか⋮﹂ ? ﹁可愛いですね⋮﹂ あぁ、どこかで見たと思ったら。クラスの男共が雑誌を読んでいた気がする。 ﹁クラスの皆が興味津々なんです﹂ ﹁杉山先生はこういうのにお詳しいんで ﹁あぁ、最近人気が出てきましたね。たしか天海春香、だったかな﹂ 4 2 特攻 ﹂ ﹃国道沿いを北に進んでくれ。そろそろ交差点に現れるはずだ﹄ 連絡が来たのはすぐだった。 自分は高校からほど近くのライブドーム、その目の前のコンビニで待機していた。 ﹁分かりました﹂ ﹃二宮、法定速度で頼むぞ。道は指示する﹄ 起動させる。無機質なノイズのあと、荻田先生の声が聞こえた。 おぎた 車に備え付けられた青いランプが通電しているか確認し、わざわざ取り付けた無線を なった。 情報では、我が高校にも暴走族がいるらしい。追いかける役目として、自分が担当と 午後8時。夜回り隊︵自称︶の出動となった。初回ということで警察も一緒だ。 § ! ☆ 警戒も兼ねて集団の後方についた。 バイクの集団が交差点に突っ込んできた。でも見るからに法定速度を守っている。 ﹁もう見えてます §2 特攻 5 各自撒いて集合だ ﹂ 後ろに紫紺のFDが付いてきている。割と改造されてると見た。新たなシマ荒らし 一旦散開だ ! ! か何かか。 ﹁野郎共 ﹄ !! ﹂ ﹁今 日 は 落 と し 前 を 付 け て も ら わ ね ぇ と い け ね ぇ。邪 魔 さ れ る 訳 に は い か ね ぇ ん だ っ 今朝連絡があったシマ荒らし、学校が終わるのをずっと待っていた。 今日の夜風は心地良い。これならすぐに撒けそうだ。 ﹃おう ! 6 ﹄ ! 自分が思うに、速さに魅せられた者たちが、または生きる意味を探している者たちが 惑をかけた自分のせいなのか。悩まずにはいられなかった。 だが、怒号を飛ばす必要があるのか。昔、煮え湯でも飲まされたのか。高校時代、迷 県道が繋がっていたはずだ。 相対的にバイクは車から急激に遠ざかり、車の列に姿を消した。この先は繁華街に続く 荻田先生の怒号が飛ぶ。青いランプを点灯させた。そしてわざとスピードを落とす。 ﹃頭を追いかけるんだ ﹁集団が散開しました﹂ ☆ ! 何かを追いかけるようにした見えなかった。 ﹁かなり早いですね⋮。恐らく行き先は繁華街でしょう。追いかけます﹂ 点灯させたランプを消し、繁華街へと向かった。 途中、様々な色の特攻服を来た若者たちが繁華街へと向かっているのを見た。赤、青、 黄、そして紫⋮カラーギャングか何かだろう。 だが、明らかに紫の特攻服を着た連中は何かが違った。シルエットで分かる。全員が 女性だった。速度を守り、隊列を組んでいるが赤信号で止まるし、他の車に迷惑行為を 行なっていない。それが不自然に見えた。 ﹄ ﹁繁華街に到着しました。カラーギャングが集まっているみたいです。念のため、警察 をお願いします﹂ ﹃了解した。ウチの学校の生徒は見かけたか ? なかなか良いバイクに乗ってるじゃないか。 仮にそうならば。 だろう⋮。 向井拓海 多分だが、最初に見た紫の特攻服、そのヘッド。自分の教室にいた。 ﹁えぇ、恐らくは﹂ §2 特攻 7
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