とあるカルデアの復讐者 ID:97542

とあるカルデアの復讐者
仲人
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︻あらすじ︼
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目 次 アヴェンジャー │││││││││││││││││││││
1
アヴェンジャー
人類滅亡を防ぐ為の機関、カルデア。
僕はそこで数多のサーバントと共に様々な時代を巡り、人類史が
狂ってしまわぬようサーヴァントと共に戦うマスターと呼ばれる存
在。
そんな僕は今、カルデアの何処までも続いているかと錯覚する程に
長い廊下を、先程呼び出した復讐者のサーヴァントを連れて歩いてい
る。
一先ず正体が分からない以上、戦いに於いて何かを掴めるかも知れ
ないというDr.ロマンからの助言により、マシュと共に特異点へと
赴く為だ。
◇◇◇◇◇
復讐者とは、聖杯戦争時に呼び出されるセイバーやアーチャーと
いった七騎のクラスのどれにも属さない、特殊なクラスのサーヴァン
トだ。今までに確認されているのは、巌窟王ことモンテ・クリスト伯
と竜の魔女ことジャンヌ・オルタの二人。
だがしかし、そんな特殊クラスである二人をぽんぽん召喚等出来る
はずが無い。まず一定の周期毎に極稀に召喚しやすくなるタイミン
グがあるらしく、そのタイミングを見計らって召喚の儀を行う。
そこから更に幾数人にも及ぶ英霊達の中から、その二人を呼び出さ
なければならない⋮そんな苦行を経て漸く仲間に出来るのだ。
かく言う僕も以前からジャンヌ・オルタを仲間にすべく、数ヶ月に
わたり特異点を修正した際に得られる聖晶石や、報酬として配られる
呼符と言うものを溜め込んでいた。
そして遂に、その時間は訪れた。ジャンヌ・オルタが呼び出しやす
い周期が訪れたらしい。
期待を胸に、今まで溜め込んでいた聖晶石を砕く僕、隣には後輩で
1
あ り デ ミ サ ー ヴ ァ ン ト の マ シ ュ も 居 て く れ た。最 初 の 内 は 新 た な
サーヴァントや礼装に喜んでいたが、30回を越えた辺りからマシュ
に慰められる程に僕は落胆していた。
砕けども砕けども出て来るのはジャンヌ以外のサーヴァント達、気
が付けば手元には呼符が一枚だけとなっていた。
﹁先輩、気を落とさないで下さい⋮次がありますよ。それに、最後の呼
符もあるじゃないですか﹂
後輩の女の子からの優しい言葉に思わず涙しそうになりつつも、僕
は最後の呼符を使用した。
迸る光は金色に染まり、それが三つに別れた。ここまでは今までの
召喚でも度々目にしていた。
だがそれらが再度収束して砕けた瞬間僕は目を見開いた、今まで目
にした事の無いサーヴァントカードだったからだ。
描かれていたのは、髪をざっくばらんに伸ばした男の姿⋮噂に聞い
もしかして⋮
﹂
輝き始めると、ソレが次第に実体を持ち始める。
の様なナニ
輝きが治まり視界が晴れたその先に││竜の魔女は居なかった。
代わりに居たのは足元にちょこんと座り込んだ子供
カ。
﹁可愛いですね、サーヴァント⋮でしょうか
﹂
とした動きと相まって若干の不気味さすら感じてしまう。
てきた。その手にはいつの間にかランタンが握られており、のそのそ
暫くソレを眺めていたら、ゆっくりと立ち上がってコチラに近付い
レ付きの尻尾が生えていた。
えて無い。どこか魚類か爬虫類を思わせる様な顔つきでおまけにヒ
クリーム色のローブを着ていて肌の色は緑、目は黄色く髪の毛は生
?
光の筋やサーヴァントカードとの矛盾が生じるが、こんなサーヴァン
るマシュならば平気かと思い止めはしなかった。礼装であるならば
僕としては触れるのは躊躇われたが、仮にもデミサーヴァントであ
?
2
ていたアヴェンジャーのカードだ。
﹁せ、先輩
!
その声にハッとして意識をそれに向ける。カードが回転しながら
!
トは今まで見た事も聞いた事も無かった。
斯くして僕とマシュ、そしてマシュに抱えられた緑色の子供の三人
は博識な英霊に片っ端から話を聞いて回った。
魔力のパスにより、おおまかなステータスは把握出来たが宝具や真
名は、まるで雲谷が掛かったかのようで見る事が出来なかった。
しかし、そもそも復讐の逸話を持つ歴史上の人物自体が少ない上、
こんな人ならざる姿なら尚更正体と言うのは限られてくる。にも関
わらず、皆一様に知らないと首を振っていた。
最後の頼みの綱であったダ・ヴィンチですら知らないとなり、途方
に暮れていた所Dr.ロマンから通信が入った。
﹄
﹃何やらお悩みのようじゃないか、でも考えても物事が進まないなら
自ら進んでみるのはどうかな
その提案に内心苦笑しながらも、仕方無くマシュを引き連れてレイ
シフトすべくその場所へと向った。
◇◇◇◇◇
辿りついた場所は最初の特異点である冬木。赤々と燃え上がる瓦
礫の街を、別次元の友達のネロを借りて四人で探索していた。
因みに、緑色の子供はレベルも上げずに連れて来てしまったのだ
が、特異点に着いてからハッキリとしたステータスに心配は要らなさ
そうだと確信した。
耐久EX││HPに至っては初期値が9999││とあり、それ以
余が話しかけてやっても一
外のステータスは軒並みE若しくはDだったが、この特異点であれば
死ぬ事は無いだろうと判断した為だ。
﹁して奏者よ、その者は一体なんなのだ
言も返さぬぞ﹂
振りと、首を振るのみで反応を返す緑色の子供は最初の不気味さが薄
ネロが疑問をぶつけて来るが、マシュが代わりに答える。身振り手
から問題は無いかと思います﹂
﹁この子は喋れないみたいなんです、ただ意思の疎通は出来ています
?
3
?
まっていた。
そんな三人のやり取りを後から付いていきながら眺めていたら、物
陰からシャドウサーヴァントが襲撃してきた。油断していた上に戦
闘態勢に移行する間も無い不意討ちにより、重症を負うマシュとネ
ロ。
﹂
﹁ぐっ⋮斯様な者がまだ残って居たとは﹂
﹁先輩、逃げて下さい
少なからず鍛えられたマシュとネロを容易く戦闘不能にした強大
なシャドウサーヴァント、僕が逃げた所で簡単に縊り殺されるのがオ
チだろう。なら、此処は逃げずに戦うしかない。
緑色の子供はいつの間にかその手に、ランタンと包丁を持ってシャ
ドウサーヴァントと対峙していた。そして、僕の頭に浮かぶのは緑色
の子供の真名と宝具の名前。
トンベリ、︻みんなのうらみ︼を開放しろ
痛に苦しみ悶え消えゆくシャドウサーヴァントの断末魔。
した⋮次の瞬間響き渡るのは、ただ一度刺されただけだと言うのに激
トンベリはシャドウサーヴァントと肉薄し、手にした包丁を突き出
からか動くこと無く待ち構える。
ゆっくりと距離を詰めてゆく。対してシャドウサーヴァントは驕り
その言葉に頷いて見せたトンベリは、初めて出会った時と同じく
!
復讐者の名を冠する新たなサーヴァントが今、此処に誕生した瞬間
を僕はしっかりと目に焼き付けた。
4
!