黒の少女 ID:108016

黒の少女
やくみつゆ
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︻あらすじ︼
ハリーに幼なじみがいてもいいじゃない⋮
スリザリンに優しい子がいてもいいじゃない⋮⋮
というわけで今更原作沿いハリー・ポッター
あらすじはタイトルで察してください
目 次 1. 蜘蛛の糸 │││││││││││││││││││││
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1. 蜘蛛の糸
もうすぐ十一歳になる少年、ハリー・ポッターは友人の家へ歩いて
行く所だった。ハリーが住むプリぺッド通りのダーズリー家から、そ
ハリーは最初に
の友人の家までは一マイル以上ある。それでも週末はその友人を訪
ねるのが、ここ数年のハリーの習慣だった。
彼女と知り合ってからもう何年になるだろうか
出会った時の事を詳しく覚えていなかった。今よりもだいぶ幼く、う
まく感情を隠せなかった頃・・・・・・いとこのダドリーにいじめら
れて学校でも友達が出来ず、ほんとうに孤独だった頃、彼女が初めて
の友達になってくれたのだ。
彼女と出会う前の事は、思い出したくもないのかもしれない、とハ
リーは結論付けた。きっと自分でも知らないうちに、記憶を封印して
しまったのだ。両親は赤ん坊の時に自動車事故で死んでしまい、ダー
ズリー一家に引き取られてからの生活は惨めなものだった。階段下
の物置に押し込められ、あらゆる面でダドリーと差を付けられて育っ
た。ダドリーは何故かハリーを憎み、家でも学校でもハリーにパンチ
を食らわせた。今だって忘れたい事だらけだ│││彼女との時間を
除けば。
彼女はサレー州の小さな村に一人で住んでいた。一族は代々ロン
ドンに住んでいたが、屋敷があまりにも古く危険なので引っ越したと
いう話だ。両親は既に死んでいて兄弟もおらず、家族といえば人を殺
して刑務所に入ってる伯父さん一人らしい。長年家族に仕えていた
使用人と、お父さんの友人が時々様子を見に来るという。
﹁あなたより寂しいわね﹂と彼女は笑ったが、ダーズリー一家と一緒に
暮らさなくて良いだけマシかもしれないとハリーは考えていた。
ハリーの思考は、彼女の家に着いたら何をして遊ぼうか、という幸
せな未来へ向かっていた。といってもお決まりのスケジュールがあ
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?
るのだが、それを繰り返すことに不満はなかった。家に着いたら、少
し早いお昼代わりに、ローストビーフやレタスが挟まった巨大サンド
ウィッチを二人で作って食べる。彼女は外よりも家で遊ぶ方が好き
なので︵そしてハリーは往復を歩く必要があるため︶そのあとはビデ
オを見たり、お菓子を作ったり、本を読んだり、ボードゲームをして
過ごす︵彼女はモノポリーが好みだった︶。三時過ぎになるとまた二
人でお茶を飲んで、お別れをする。他の人から見たらきっとなんでも
ないような休日だろう。だが、ハリーにとって言葉では言い表せない
ほど大切な時間だった。
目的地に到着した。呼び鈴を鳴らし、彼女が扉を開けるのを待つ。
﹁やぁ、ベガ。会いたかったよ﹂
﹁私もよ。待ってたわ、ハリー﹂
ハリーと同じ、真っ黒な髪をした少女が微笑んだ。
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