黒の少女 やくみつゆ ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ ハリーに幼なじみがいてもいいじゃない⋮ スリザリンに優しい子がいてもいいじゃない⋮⋮ というわけで今更原作沿いハリー・ポッター あらすじはタイトルで察してください 目 次 1. 蜘蛛の糸 │││││││││││││││││││││ 1 1. 蜘蛛の糸 もうすぐ十一歳になる少年、ハリー・ポッターは友人の家へ歩いて 行く所だった。ハリーが住むプリぺッド通りのダーズリー家から、そ ハリーは最初に の友人の家までは一マイル以上ある。それでも週末はその友人を訪 ねるのが、ここ数年のハリーの習慣だった。 彼女と知り合ってからもう何年になるだろうか 出会った時の事を詳しく覚えていなかった。今よりもだいぶ幼く、う まく感情を隠せなかった頃・・・・・・いとこのダドリーにいじめら れて学校でも友達が出来ず、ほんとうに孤独だった頃、彼女が初めて の友達になってくれたのだ。 彼女と出会う前の事は、思い出したくもないのかもしれない、とハ リーは結論付けた。きっと自分でも知らないうちに、記憶を封印して しまったのだ。両親は赤ん坊の時に自動車事故で死んでしまい、ダー ズリー一家に引き取られてからの生活は惨めなものだった。階段下 の物置に押し込められ、あらゆる面でダドリーと差を付けられて育っ た。ダドリーは何故かハリーを憎み、家でも学校でもハリーにパンチ を食らわせた。今だって忘れたい事だらけだ│││彼女との時間を 除けば。 彼女はサレー州の小さな村に一人で住んでいた。一族は代々ロン ドンに住んでいたが、屋敷があまりにも古く危険なので引っ越したと いう話だ。両親は既に死んでいて兄弟もおらず、家族といえば人を殺 して刑務所に入ってる伯父さん一人らしい。長年家族に仕えていた 使用人と、お父さんの友人が時々様子を見に来るという。 ﹁あなたより寂しいわね﹂と彼女は笑ったが、ダーズリー一家と一緒に 暮らさなくて良いだけマシかもしれないとハリーは考えていた。 ハリーの思考は、彼女の家に着いたら何をして遊ぼうか、という幸 せな未来へ向かっていた。といってもお決まりのスケジュールがあ 1 ? るのだが、それを繰り返すことに不満はなかった。家に着いたら、少 し早いお昼代わりに、ローストビーフやレタスが挟まった巨大サンド ウィッチを二人で作って食べる。彼女は外よりも家で遊ぶ方が好き なので︵そしてハリーは往復を歩く必要があるため︶そのあとはビデ オを見たり、お菓子を作ったり、本を読んだり、ボードゲームをして 過ごす︵彼女はモノポリーが好みだった︶。三時過ぎになるとまた二 人でお茶を飲んで、お別れをする。他の人から見たらきっとなんでも ないような休日だろう。だが、ハリーにとって言葉では言い表せない ほど大切な時間だった。 目的地に到着した。呼び鈴を鳴らし、彼女が扉を開けるのを待つ。 ﹁やぁ、ベガ。会いたかったよ﹂ ﹁私もよ。待ってたわ、ハリー﹂ ハリーと同じ、真っ黒な髪をした少女が微笑んだ。 2
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