可能性の一つ、アゴーニの暗躍 にゃもし。 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ ワンパンマンの可能性、あったかもしれない、あるかもしれない ⋮⋮そんな短編集。 目 次 アゴーニの暗躍 │││││││││││││││││││││ 1 アゴーニの暗躍 世界的に有名な大富豪アゴーニ。 彼はヒーロー協会の創立者でもある。 ﹁ヒーロー協会設立から三年が経過したわけだが⋮⋮﹂ 薄暗い部屋の中央でアゴーニがイスに深く腰掛けながら口を開く。 ﹁予想以上に予想以下であり、予想通りだったな⋮⋮﹂ 感情の読み取れない声音でそう発した。 ? 1 各市にあるヒーロー協会支部のような一室。 そこにはアゴーニの他、彼がヒーロー協会を立ち上げるときに協力 してもらった者たちと、設立以降にアゴーニ本人が声をかけた者たち がいる。 ﹁アゴーニさんみたいな金持ちが何かしら組織を立ち上げる⋮⋮って なれば当然、金にたかる虫がわいてくるのは必然。故にこの結果は目 に見えていた﹂ 一人が喋り始めたのを切っ掛けに次々に意見を述べ合う。 ﹁それでも三年という時間は早い﹂ ﹂ ﹁ヒーロー協会という組織の存在││││その作られた当初の目的を ﹂ 考えれば⋮⋮些か早い気もするが、問題はないのでは⋮ ﹁この時期にヒーロー協会を切り捨てるのか ? ﹁予言のことを考えれば早めに行動した方がよい﹂ ﹁そうだな⋮⋮有能な人材、使える人材はすでに声をかけた﹂ ﹁ヒーロー協会に残るのは無能か、未来を見据えない頭の固い連中の み⋮⋮﹂ 口々に言う面々。 静かに聞いていたアゴーニが動くと、水を打ったかのように部屋が 静まり返る。 ﹁宇宙人襲来、人間怪人ガロウによるヒーロー狩り、怪人協会のときに もメタルナイトとブラストは動かなかった﹂ 2 アゴーニが挙げた二つの名は、どちらもS級ヒーローに連ねる者で あるが⋮⋮アゴーニの彼らに対する認識は 〝 実力はあれど自ら 動くことは殆どない、ヒーローとして問題のある者たち 〟 ⋮⋮と いうお世辞にも良い評価とは言い難かった。 ﹁力はあっても、肝心の時には動かない。⋮⋮では意味がない。世間 の一部は彼らのような自由意思で動くヒーローと、ヒーロー協会に頼 ﹂ るのは危険ということを、身をもって知ったことだろう、我々も含め てだが⋮⋮﹂ ﹁アゴーニ会長。⋮⋮そろそろ計画を実行に移すのですか 坦々と述べていく。 彼は﹁その前にやっておきたいことがある﹂と前置きを置いてから メンバーの一人が嬉々とした表情でアゴーニに問いかけるが⋮⋮ ? スポンサー企業の異動とマスコミ関係者を使った告知。 ヒーロー協会の内部告発、スカウト・ヘッドハンティングによる人 材確保。 ﹁可 能 な 限 り 内 部 か ら 喰 い 尽 く し て く れ よ う。今 ま で 散 々、連 中 が やってきたことだ。嫌とは言わせん⋮⋮﹂ 凄みを利かせた声で話すアゴーニ。 目を細めて虚空を睨んでい ヒ ー ロ ー 協 会 の 幹 部 の 中 に は 協 会 の お 金 で 豪 遊 を 繰 り 返 す 者 が 多々いる。 余程、立腹しているのだろうか⋮ る。 ﹁それも重要だが、S級が束になっても敵わなかったガロウ。それを 赤子の手を捻る如く、打ち負かした A級ヒーロー 〝 サイタマ 〟 ⋮⋮﹂ 彗星の如くヒーロー協会に現れたサイタマ。 ﹂ 同じ日にヒーロー名簿に登録したジェノスの陰に埋もれがちだが、 彼は驚異的な速度で階級を上げている。 ﹁サイタマへの監視、場合によってはスカウトですか 彼らの中でサイタマをスカウトすることが決まったようだ。 それを目で追い、軽く頷く。 功績が次々と書き記されていく。 宙に浮いている画面にサイタマの画像が映し出され、その横に彼の びない﹂ ﹁そうだ。彼をあのまま⋮⋮彼の才能を、あの組織で腐らせるのは忍 ? 3 ? • • • • ﹁それと、ガロウ。彼をヒーローとしてスカウトしよう﹂ アゴーニがポツリと漏らした言葉に一瞬、硬直。 ﹂⋮と。 硬直から解いた一人が恐る恐る質問してみる﹁そのガロウはあのガ ロウですか ﹁人間怪人ガロウ。彼をヒーローとしてスカウトする﹂ 部屋の中が静寂で満ちる。 彼らはアゴーニの言うことに頭が追いつかないのであろう。 ヒーローと敵対した者をヒーローとして起用するのだ、周囲が混乱 するのも分からなくもない。 ﹁ヒーロー狩りと称しながらも、一人として殺人という罪を犯しては ﹂ いない。ワシから言わせてみれば、ただのひねくれた小僧にしか過ぎ んな⋮⋮﹂ ﹁しかし、危険なのでは を、その埋め合わせ方法を聞こうか⋮ ﹂ なる。異論があるなら、引退して去ったヒーローたちを埋める戦力 ﹁そのための 〝 サイタマ 〟 だ。彼ならガロウに対する抑制に ? の日の会議は進んだ。 口の端を上げて笑うアゴーニに誰も意見を言うことができずに、そ ? 4 ?
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