駆動騎士の正体が付喪神だった件について ID:96972

駆動騎士の正体が付喪神だった件について
沢翠
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP
DF化したものです。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作
品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁
じます。
︻あらすじ︼
そんなネタです。
公式では色々怪しいメタルナイトですが、実を言うと良い奴だった
⋮⋮と、こんな可能性もあるかな
群馬要素はほとんど無いです。それでもよろしい方はどうぞ。
?
目 次 駆動騎士の正体が付喪神だった件について │││││││││
1
駆動騎士の正体が付喪神だった件について
馬実が東京へ行く際、仮面を忘れていったのは、必然である。
○
はるか昔の事だった。
銀河いや次元を隔てた先にももう一つ、地球という星があった。
そこに、固く結ばれ愛し合う男女がいた。
しかし運命は残酷だった。二人の住む地球は、ある日唐突に宇宙人
に侵略されたのだ。
地球は滅び、捕らえられた地球人の末路は無残なもので、二人はそ
れぞれ別の星に売り飛ばされた。
二人はそれぞれの地で何とか支配する者から逃げ延びた。
そして、二人はそれぞれの星の原住民の顔をした仮面を被り、周り
を欺いていた。
1
やがて二人はそれぞれの星の地で死んだ。
しかし、それぞれ愛する者に会いたいと願う気持ちは、遺された仮
面に宿っていた。
時は流れ、一つの仮面がある星に舞い降りた。
次元を超え、存在する、仮面の持ち主だった男女から見ての、もう
一つの地球である。
おそらく、隕石に付着して飛来したか、かつていた星が災害に見舞
われた際、生じた時空の歪みに仮面が偶々入り込んで、ワープしたの
だろうと考えられる。
○
﹁⋮⋮解析完了、ふぅ。﹂
ガチャ、と金属的な音を立てて、童帝は椅子ごと振り返った。
ヒーロー協会から依頼された調査を終えた後の事である。
つくも
﹁まさか、駆動騎士の正体が、銀河や次元の先にある、もう一つの地球
︶の片割れの恋人の方
に住んでいた男女の被っていた仮面の片割れの、付喪神だったとは
ね。⋮⋮いや∼、驚いたよ、君のご主人様︵
も、全く同じ事を考えていたんだねぇ⋮⋮。﹂
?
S級ヒーロー・童帝はしみじみと呟いた。その手には、仮面が握ら
れていた。てっぺんと顎の部分に羽根飾りが三本あしらわれた、目玉
模様の沢山付いた仮面である。
﹁でも駆動騎士。いきなりコソドロみたいな真似をするのは感心しな
いなぁ。﹂
﹁はは⋮⋮すまん。俺はあの時どうしても、あの少女││道場・クルセ
イダース・馬実が被っていた仮面に惹かれて仕方が無かったんだ。﹂
普段のイメージからは想像も付かないくらい、朗らかな言葉使いで
あった。
S級ヒーロー・駆動騎士の、単眼があしらわれた無機質な白い仮面
には似つかわしくない、意表を突かれる、喜びに溢れた声であった。
﹁ハイ。﹂
﹁有難う。﹂
童帝は、駆動騎士に仮面を渡した。
﹁⋮⋮まぁ、あの時、僕がいたから良かったけど。﹂
童帝はその時の記憶を脳裏に蘇らせた。
*
││メタルナイトが怪しげな施設を作っている。
そんな情報をヒーロー協会が得た、ある日の事だった。
依頼を受けた童帝と駆動騎士は、メタルナイトが秘密裏に買い取っ
たという、群馬の山奥に位置する村近くの森を訪れた。
そして、件の施設を訪れ、真相を知った二人は、村のささやかな歓
待を少しの間受けていた。
その時、恥ずかしがりやな為、普段は仮面を被っているアイドルの
卵だという少女・馬実へ、駆動騎士のたった一つの眼が熱心に向けら
れているのを童帝は見逃さなかった。
*
﹁僕はてっきし駆動騎士がロリコンだと⋮⋮。﹂
﹁はっはっは。﹂
つくも
﹁││あの時、メタルナイトが、霊や神秘の研究を大真面目に着手して
いるのを調査していなかったら、仮面の付喪神なんて話、とても信じ
2
られなかったよ。⋮⋮クールで真面目かと思ったら、結構人騒がせだ
ね、駆動騎士って。その甲冑を見繕ってくれた人さえ疑って、誤解が
積み重なった挙句、先走って﹃メタルナイトはお前の敵だ。﹄なんて鬼
サイボーグに耳打ちして││まぁ、いったん信頼した人だからこそ、
そうなるのは僕も分かるけど。﹂
﹄が、異次元の
童帝は苦笑した。しかし憑き物の落ちたような晴れやかさがあっ
た。
﹁メタルナイトが、シババワの予言・
﹃地球がヤバイ
地球の事を指してたという説を立てて単独で研究しているって事を
駆動騎士にすら隠してやっていたんだから、仕方ないか。﹂
駆動騎士と童帝はこの時、それぞれ同じ気持ちを抱いていた。二人
とも、一度は悪人かと疑った相手への信頼が復活したのである。丹念
に調べられたメタルナイトの研究データはその後、ヒーロー協会内部
で真摯に検討される事となった。
駆動騎士は、しみじみとした情感を無機質なはずの仮面の顔に浮か
べ、目玉模様の沢山付いた仮面を大事に抱いていた。
﹁⋮⋮会いたかった。﹂
駆動騎士がそう呟いた途端、童帝の目の前でガラガラと何かが崩れ
﹂
る音がした。
﹁
空っぽの、黒い甲冑のみであった。
﹁⋮⋮そっか。成仏したいもんね。﹂
つくも
目的を果たした以上、この世に留まる理由の無い付喪神の満足を、
聞き分け良く童帝は察した。
﹁それにしても。﹂
ハア、と童帝は溜息を吐いた。
﹁││││だから、S級は自分勝手、って言われるんだよねぇ。﹂
童帝は切り替えが早かった。
突然の駆動騎士の消失をどう言い訳しようか、に思考を巡らせた。
駆動騎士は、あらかじめこういう時に備えていた。
3
!
二 つ の 仮 面 は サ ラ サ ラ と 砂 の 様 に 散 っ て 消 え、後 に 残 っ た の は、
!
信頼の置けるヒーロー協会の者に、言伝されていた上手い言い訳
を、童帝に知らせにやってくるのは、当の童帝がようやく上手い言い
訳を思い付いた、丁度その時の事である。
4