タイムマシンのできた 日 空蝉 虚 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので す。 人の欲望と 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を 超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。 ︻あらすじ︼ 時間はとても恐ろしいもの。支配することは本当に幸せなのだろうか 時間は、時として恐ろしい矛盾を作り出してしまうのかもしれません。 ? 目 次 タイムマシンのできた日 ││││ 1 のだった。 ◆ ﹁跡武くん ついに出来たぞ。その名もタイムチューブだ ﹂ ! するとまだ若い青年が口を開いた。 らいで、顔が少しはみ出るくらいの穴が開いている。 白髪頭の老人が叫ぶ。彼の手には大きめの筒があった。大きさはだいたい水道管く ! そんな逆風に耐えて、御茶野博士と跡武研究員はついに時を越える装置を作り出した れて資金をカットされてきた。 人員の少なさは研究期間の長さに繋がる。結局タイムマシンの研究は年が経つにつ 研究員のみである。 しかし御茶野博士は少数精鋭を好みすぎているのが珠に傷で、研究協力者が弟子の跡武 日本が誇る天才科学者、御茶野博士主導の下タイムマシンの研究を進めているのだ。 るが、そのなかで一際厳重な警備をされているのが、タイムマシン研究である。 時を越える装置は人類の夢である。ここデロリア公社では様々な研究が行われてい タイムマシンのできた日 1 タイムマシンのできた日 2 ﹁御茶野博士、ついにできましたね。タイムマシン てなかったですよ﹂ 青年が誉めちぎると老人が自慢げに答える。 ﹁さすが博士。頭の出来が違いますね ﹂ まさか急に完成するとは思っ ﹁昨日急に閃いてね。お告げみたいにビビっと来たんだよ﹂ ! 青年が橙色の液体が入ったコップを老人に渡す。すると老人がおもむろに筒の中へ う﹂ ﹁はい博士。じゃあまず先ほど絞ったこのオレンジジュースをオレンジに戻しましょ ﹁それじゃあ跡武くん。実験を始めよう﹂ ほど鼻が高くなっていた。 青年が誉めるとさらに老人が自慢げになる。本当に天狗になるのではと心配になる ! ﹂ コップを通した。そうして筒の中を通ったコップには、オレンジの筋が付いたオレンジ の果肉が入っていた。 ﹁成功だよ跡武くん ! 通す。今度はオレンジの時とは反対側の穴から入れる。 そういうと青年が氷を取り出した。またもやコップに氷をいれてそれを筒の中へと 次は未来をやってみましょう﹂ ﹁やりましたね博士 ! 3 ﹂ 過去にも未来にも行けるタイムマシンの完成だ ﹂ 尊敬する御茶野博士とこんな歴史に残る大発明ができて、 ! するとそのコップにはぬるい水が入っていた。 ﹁実験成功だ 嬉しいです ﹁私は感動しています 老人が声を震わせて叫ぶと、青年も目から涙を流して言った。 ! ! エコなのだよ﹂ 何度でも鼻をかめますね﹂ ? る。 ﹁ところでこのタイムマシンってどうやって作ったんですか 老人が答える。 ﹁簡単だよ。このメモに全て書いてある﹂ 老人がそういって差し出したメモを青年が受けとる。 ﹂ 老人と青年は馬鹿げた話で盛り上がっていた。雑談の途中で青年が疑問を投げ掛け ﹁その通り ﹁凄い そういって老人が紙の塊を筒に通すと、シワのない綺麗なティッシュに戻っていた。 ﹁跡武くん、捨てる必要なんかないよ。このタイムチューブに通せば⋮⋮﹂ てるためにゴミ箱を探していると、老人が首を横に振る。 青年が涙を拭きとるためにティッシュを取る。くしゃくしゃにしたティッシュを捨 ! ! ! タイムマシンのできた日 4 ﹁はぁ∼なるほど。これは言われないと閃かないですよね∼﹂ ﹂ ﹁そうだな。思えばあのお告げは不思議だったな⋮⋮。ま、そのお陰でタイムマシン が作れたんだがな さしあたり昨日とか﹂ ! ﹂ ? ﹁タイムマシンの作り方はですね⋮⋮⋮⋮﹂ 青年は誇らしげな顔をしてこういったのだった。 ﹁タイムマシンの作り方がどうしても分からないんだ⋮⋮﹂ 老人が視線を動かさずに答える。 ﹁博士、なぜ難しい顔をしてるんですか 青年と老人が向かい合って筒を覗く。青年の前には、難しい顔をした老人がいた。 ﹁おう、やってくれ﹂ ﹁そりゃあいいですね。じゃ昨日にセットしますよ﹂ ﹁そうだな、昨日を実験したら一気に江戸時代までいくか﹂ 老人は答える。 ﹁博士、もっと過去をやってみましょうよ 老人が腰に手を当てて誇らしげに言う。すると青年が筒を持って言った。 !
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