タイムマシンのできた日 ID:94939

タイムマシンのできた
日
空蝉 虚
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
人の欲望と
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
時間はとても恐ろしいもの。支配することは本当に幸せなのだろうか
時間は、時として恐ろしい矛盾を作り出してしまうのかもしれません。
?
目 次 タイムマシンのできた日 ││││
1
のだった。
◆
﹁跡武くん
ついに出来たぞ。その名もタイムチューブだ
﹂
!
するとまだ若い青年が口を開いた。
らいで、顔が少しはみ出るくらいの穴が開いている。
白髪頭の老人が叫ぶ。彼の手には大きめの筒があった。大きさはだいたい水道管く
!
そんな逆風に耐えて、御茶野博士と跡武研究員はついに時を越える装置を作り出した
れて資金をカットされてきた。
人員の少なさは研究期間の長さに繋がる。結局タイムマシンの研究は年が経つにつ
研究員のみである。
しかし御茶野博士は少数精鋭を好みすぎているのが珠に傷で、研究協力者が弟子の跡武
日本が誇る天才科学者、御茶野博士主導の下タイムマシンの研究を進めているのだ。
るが、そのなかで一際厳重な警備をされているのが、タイムマシン研究である。
時を越える装置は人類の夢である。ここデロリア公社では様々な研究が行われてい
タイムマシンのできた日
1
タイムマシンのできた日
2
﹁御茶野博士、ついにできましたね。タイムマシン
てなかったですよ﹂
青年が誉めちぎると老人が自慢げに答える。
﹁さすが博士。頭の出来が違いますね
﹂
まさか急に完成するとは思っ
﹁昨日急に閃いてね。お告げみたいにビビっと来たんだよ﹂
!
青年が橙色の液体が入ったコップを老人に渡す。すると老人がおもむろに筒の中へ
う﹂
﹁はい博士。じゃあまず先ほど絞ったこのオレンジジュースをオレンジに戻しましょ
﹁それじゃあ跡武くん。実験を始めよう﹂
ほど鼻が高くなっていた。
青年が誉めるとさらに老人が自慢げになる。本当に天狗になるのではと心配になる
!
﹂
コップを通した。そうして筒の中を通ったコップには、オレンジの筋が付いたオレンジ
の果肉が入っていた。
﹁成功だよ跡武くん
!
通す。今度はオレンジの時とは反対側の穴から入れる。
そういうと青年が氷を取り出した。またもやコップに氷をいれてそれを筒の中へと
次は未来をやってみましょう﹂
﹁やりましたね博士
!
3
﹂
過去にも未来にも行けるタイムマシンの完成だ
﹂
尊敬する御茶野博士とこんな歴史に残る大発明ができて、
!
するとそのコップにはぬるい水が入っていた。
﹁実験成功だ
嬉しいです
﹁私は感動しています
老人が声を震わせて叫ぶと、青年も目から涙を流して言った。
!
!
エコなのだよ﹂
何度でも鼻をかめますね﹂
?
る。
﹁ところでこのタイムマシンってどうやって作ったんですか
老人が答える。
﹁簡単だよ。このメモに全て書いてある﹂
老人がそういって差し出したメモを青年が受けとる。
﹂
老人と青年は馬鹿げた話で盛り上がっていた。雑談の途中で青年が疑問を投げ掛け
﹁その通り
﹁凄い
そういって老人が紙の塊を筒に通すと、シワのない綺麗なティッシュに戻っていた。
﹁跡武くん、捨てる必要なんかないよ。このタイムチューブに通せば⋮⋮﹂
てるためにゴミ箱を探していると、老人が首を横に振る。
青年が涙を拭きとるためにティッシュを取る。くしゃくしゃにしたティッシュを捨
!
!
!
タイムマシンのできた日
4
﹁はぁ∼なるほど。これは言われないと閃かないですよね∼﹂
﹂
﹁そうだな。思えばあのお告げは不思議だったな⋮⋮。ま、そのお陰でタイムマシン
が作れたんだがな
さしあたり昨日とか﹂
!
﹂
?
﹁タイムマシンの作り方はですね⋮⋮⋮⋮﹂
青年は誇らしげな顔をしてこういったのだった。
﹁タイムマシンの作り方がどうしても分からないんだ⋮⋮﹂
老人が視線を動かさずに答える。
﹁博士、なぜ難しい顔をしてるんですか
青年と老人が向かい合って筒を覗く。青年の前には、難しい顔をした老人がいた。
﹁おう、やってくれ﹂
﹁そりゃあいいですね。じゃ昨日にセットしますよ﹂
﹁そうだな、昨日を実験したら一気に江戸時代までいくか﹂
老人は答える。
﹁博士、もっと過去をやってみましょうよ
老人が腰に手を当てて誇らしげに言う。すると青年が筒を持って言った。
!