過度に悲観はせず~米国・イエレンFRB議長の講演(2016

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
6/8
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
イエレン議長は慎重ながらも、過度に悲観はせず
~米国・イエレンFRB議長の講演(2016/6/6)
 イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は6/6に講演を行った。5月雇用統計の下振れを受け
て、どのような認識が示されるかが注目されたが、慎重ながら、過度に悲観もしないバランス
のとれた内容となった。
 失望的な結果となった5月の雇用統計を受けて、6月の利上げはほぼなくなったと考えられ
る。一方、イエレン議長は労働市場の動向を注視していくものの、1ヵ月の指標を過度に重視
すべきでないとも言及。経済見通しや緩やかな利上げという政策の方向性を維持している。
 7月の利上げの可能性は残っているとみている一方、1ヵ月分の雇用統計で5月の弱さが一
時的なものであると十分に見極められるかどうか、ハードルが高くなったのは事実である。今
後の経済データや金融市場の動向、FRB当局者の発言等をふまえて、実際の利上げのタイ
ミングを探っていくことになる。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、FOMC参加者の
経済見通しや政策金利見通しに変化があるかどうか、注目しておきたい。
雇用統計の 結果は
失望的だが、1ヵ月の
データを過度に重視
もせず
イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は6/6に講演を行った。5月雇用統計の下
振れを受けて、どのような認識が示されるかが注目されたが、慎重ながら、過度に悲
観もしないバランスのとれた内容となった。
議長は5月の雇用統計について、失望的な結果であり、労働市場の動向を注視し
ていく必要があると述べた。また、6/14~15に開催される米連邦公開市場委員会
(FOMC)の翌週、6/23に行われる英国の欧州連合(EU)残留・離脱をめぐる国民投
票について、投資家のセンチメントを変化させ、経済に重大な影響を及ぼしうると言
及している。こうした点に加えて、5/27にイエレン議長は「今後数ヵ月以内の利上げ
が適切」と述べていたが、今回の講演では、こうしたタイミングを示唆する発言はな
かった。これらの点から、6月利上げの可能性はほぼなくなったと考えられる。
一方、米国経済の緩やかな成長や労働市場のさらなる改善が続き、インフレ率が
今後1~2年で目標である2%に向かって上昇していくという、従来の見通しを改めて
示すとともに、今後のデータがこうした見通しと整合的であれば、さらなる緩やかな
利上げが適切であるという姿勢を維持している。雇用統計についても、新規失業保
険申請件数や消費者サーベイ等、労働市場に関する良好な指標も出ていることに
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マクロ・トピックス
言及。賃金上昇率が上向いてきたという明るい動きも指摘しつつ、1ヵ月の指標を過
度に重要にとらえるべきではないとも述べている。
そのうえで、基本的には前向きな見方を維持しつつ、①世界経済が不安定ななか
での、国内需要の回復力、②中国の成長見通しへの懸念といった海外の経済状
況、③労働生産性の上昇率、④インフレ率の見通しやインフレ期待等、経済見通し
に関する不確実性が存在していることにも言及。政策決定はデータ次第であって、
あらかじめ決まった経路があるわけではなく、経済見通しやそれに関するリスクの変
化に応じて、政策金利の経路も変わりうるとの姿勢を改めて示した。
7月利上げの可能性
は 残 る が 、 FRB は
データ次第のスタン
スを維持へ
以上のように、イエレン議長の講演はバランスのとれた内容となった。利上げのタ
イミングを示唆するような発言はなく、6月利上げの可能性はほぼなくなったとみられ
るものの、利上げを棚上げにしたわけでもない。データを注視しながら、改めて利上
げに適切なタイミングを探っていくことになろう。
議長は1ヵ月の指標を過度に重視しないとしながらも、雇用統計は経済見通しに
新たな疑問を生じさせたとも発言。5月雇用統計の弱さが全般的な景気減速の先駆
けなのか、年初の堅調な雇用増加ペースに戻るのか、労働市場は完全雇用に達し
ているのか、なお労働市場の緩みが残っているかどうか等の点について見極めて
いく姿勢を示している。このため、今後の雇用統計において雇用者の増加ペースが
回復していくのか、賃金上昇率が高まっていく傾向が続いていくと判断できるか等
の点が利上げ決定におけるポイントになるとみられる。
みずほ証券投資情報部では、米国経済の緩やかな成長や労働市場の改善が続
き、インフレ率も上向いていくとみていることから、今後も利上げの方向性に変化は
ないと考えている。
こうしたなか、7/8発表予定の次回6月分の雇用統計において、雇用の増加ペース
が回復(5月分が上昇していればさらに望ましい)していれば、7/26~27に開催され
るFOMCでの利上げの可能性は残るとみている。ただし、1ヵ月分の雇用統計で5月
の弱さが一時的なものであると十分に見極められるかどうか、ハードルが高くなった
のは事実である。今後の経済データや金融市場の動向、FRB当局者の発言等をふ
まえて、金融市場としても実際の利上げのタイミングを探っていくことになろう。とく
に、雇用統計を受けて、経済見通しや利上げペースに関する認識に変化が生じて
いるかどうかを確認するうえで、6月のFOMCで改定される、FOMC参加者の経済見
通しや政策金利見通し(ドット・チャート)には注目しておきたい。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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