グローバル・マクロ・ トピックス

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
3/14
投資情報部
シニアエコノミスト
折原 豊水
ブラジルは利下げ観測、政治情勢進展でレアルは上昇
 ブラジルの2月消費者物価は5ヵ月ぶりに鈍化。電力料金の値下げ等で先行きは騰勢がやや和
らぐ可能性はある。
 中銀総裁は直近、物価が先行き鈍化すると示唆しており、市場の一部で利下げ観測が高まる。
当方でも中期的なインフレリスクを高める可能性はあるものの、利下げ余地が出てきたとみる。
 レアルはルーラ前大統領の起訴やルセフ大統領の弾劾審議の再開観測で上昇。選挙裁判所に
おける14年大統領選挙の無効に関する審議の行方や、議会における連立パートナーの離反が
仮に起きればレアルが続伸するとみられるものの、依然として不透明感がくすぶっている。
消費者物価は5ヵ月
ぶりに鈍化
2月消費者物価指数は前年同月比+10.4%と1月の同+10.7%から鈍化した。食料
品・飲料価格が同+13.2%と上昇が続いているほか、衣服、家具、医療、教育、通信
といった幅広い品目の伸びが拡大し、今までの物価上昇にともなう価格転嫁の動き
が続いている。一方、電力料金を中心とした住宅価格や、石油製品を中心とした運
輸価格の伸び鈍化が全体の鈍化に寄与した。
電力料金の 値下げ
等が先行き寄与も、
物価は高止まりが見
込まれる
今後は電力料金の値上げによる前年のベース効果のはく落に加え、水力発電の
回復による電力料金の値下げや、石油製品の鈍化が続くとみられる。サービス価格
については16年初の料金改定の影響が一巡し、伸び率は前年比で高止まりが見込
まれる。こうしたなかで食料品価格が徐々に騰勢一服してくれば全体の伸びがやや
鈍化するとみている。ただ、インフレ期待がくすぶっていることや一部の消費財品目
の増税、サービス価格の高止まり等により、当方では、消費者物価指数は2016年末
時点でも前年比+7%~+8%程度の高めの伸びが続くと引き続き予想している。
中銀総裁は先行き物
価は鈍化すると示唆
ブラジル中央銀行は3/10、3月中銀会合の議事録を公表した。前回1月の内容を
踏襲するものでサプライズはなかった。ただ、トンビニ中銀総裁は直近、今までの景
気悪化や公共料金、公共輸送料金等の値上げが一巡することにより2016年前半に
物価の伸びは鈍化すると繰り返し述べている。バルボーザ財務相も16年春以降、
物価は鈍化するとしている。こうしたことから、市場では16年中にも利下げの可能性
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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を一部で織り込み始めている。実際、政策金利は14.25%で据え置きが続くなか、短
期市場金利や2年国債利回りは16年初の15%~16%台から、13%台後半まで金利が
低下している。
当方では、物価が鈍化に転じたあともインフレ期待が鎮静化するのを見極めるた
めしばらく様子見姿勢が続くとみていたが、上記のような金融当局の発言からすれ
ば、小幅利下げの可能性が出てきたとみている。もっとも、拙速な利下げは中期的
にインフレリスクを高める可能性もあろう。財政政策は景気に配慮して歳出削減姿
勢がやや後退している点にも留意が必要だ。
レアルは政治情勢の
進展期待で上昇
ブラジルレアルは、3/2に国営石油大手ペトロブラスの汚職疑惑捜査で逮捕され
た建設大手幹部が2010年大統領選挙において、ルセフ大統領に贈賄を行ったと証
言したことが報じられたことや、3/4にはルーラ前大統領が複数の企業から賄賂を受
け取っていた疑惑に関し取り調べや家宅捜査を受け、3/10には逮捕状が請求され
たことにより、3/11には一時1ドル=3.57レアルまでレアル高となった。市場の信認が
低いルセフ大統領の弾劾の可能性や後ろ盾となってきたルーラ前大統領への捜査
進展により政権交代に対する期待が生じたことが大きいとみられる。3/13には再び
政府に対する全国的な大規模抗議デモが行われた。ルーラ前大統領ら政府支持
派と反大統領派の衝突が警戒されたが、暴力的なデモには至らなかったようだ。
ルーラ前大統領の捜
査進展や 弾劾審議
の 再開の 行方に 注
目
今後については、①3月中旬以降、クーニャ下院議長が大統領弾劾審議に向け
て手続きを再開するとみられておりその行方、②2014年大統領選挙における違法
献金疑惑について高等選挙裁判所で審議が続いており、選挙が無効と最終的に
判断されるか、③連立パートナーのブラジル民主運動党(PMDB)が3/12の党大会
で30日以内に連立を維持するか判断するとしたこと、等が注目される。①について
は昨年、下院の特別委員会のメンバーの選定手続きに問題があったとして最高裁
が無効と判断したあと停滞していたが、最高裁が正当な手続きを示す予定であり、
野党やクーニャ下院議長は政府に対する上記のような新たな追及材料も出たことで
弾劾を進めたい意向のようだ。だが、議会における弾劾については、③の動きが重
要であり、野党に加え、PMDB内でクーニャ下院議長の派閥のみならず、その他の
派閥に大統領弾劾の動きが広がるのかがポイントとみている。ルセフ大統領やルー
ラ前大統領に関する不利な材料や抗議デモの高まりによって連立与党が離反する
ような状況にいたれば、政権交代期待でレアルは続伸する可能性があろう。ただ、
足元のレアルの反発は原油価格の反発等の外部環境に支えられている面があるこ
とや、ファンダメンタルズは16年まで2年連続でマイナス成長が見込まれる等、弱含
みが予想される。政治情勢が一度停滞すれば、反落する可能性もあるとみられ、留
意したい。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
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(1ドル=レアル)
ドルレアル (週次:2012/6/1~2016/3/10)
3.9
3.4
2.9
2.4
1.9
12/06
12/10
13/03
13/07
13/12
14/04
14/09
15/01
15/06
15/10
16/03
(年/月)
出所:各種資料よりみずほ証券作成
政策金利と2年国債利回り
(週次:2009/1/2~2016/3/10)
(%)
17
政策金利
16
2年国債利回り
15
14
13
12
11
10
9
8
7
09
10
11
12
13
14
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
15
16
(年)
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金融商品取引法に係る重要事項
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