(2016年4月) (PDF/283KB

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
5/19
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
意識され始めた6月の利上げ
~米国・FOMC議事要旨(2016年4月)
 金融政策の現状維持を決定した4月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、大
部分の参加者が、今後のデータ次第で6/14~15に開催される次回のFOMCでフェデラルファ
ンド(FF)金利の誘導目標レンジを引き上げることが適切と判断していたことが判明した。
 今後のデータで米国経済の持ち直しや労働市場の改善が確認され、金融市場が安定を維持
していれば、6月のFOMCで利上げを決定する可能性がある。
 中長期的にみれば、米国が利上げを続けるもとでも、米長期金利の上昇が抑制されていれ
ば、リスク資産価格の上昇は続くとみている。ただ、中国経済をめぐる不透明感がくすぶって
いること等から、短期的には利上げを受けて金融市場が不安定化する可能性にも一定の注
意が必要と考えている。
大 部 分 の FOMC 参
加者がデータ次第で
は6月の利上げが適
切と判断
4/26~27に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が発表さ
れ、大部分(most)の参加者が、今後のデータで4-6月期の経済成長の持ち直しや
労働市場の改善継続、インフレ率がFOMCの目標である2%に向かって前進している
ことが確認されれば、6/14~15に開催される次回のFOMCでフェデラルファンド
(FF)金利の誘導目標レンジを引き上げることが適切と判断していたことが判明し
た。とはいえ、現段階で意見の一致をみているわけではなく、利上げに慎重なハト
派的な見解を示す参加者が複数いる一方で、今後のデータが6月の利上げを正当
化するという自信を示す参加者もいた。
さらに、数名(some)の参加者は、市場参加者が6月利上げの可能性を適切に評
価していないことに懸念を示し、FOMCが経済や金融情勢について、どのように対
応していくかについて、6月のFOMCまでに明確な市場との対話を進めることの重要
性を強調した。ここ最近、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁やアトランタ連銀
のロックハート総裁等、地区連銀の総裁が相次いで6月利上げの可能性を示してい
たことは、こうした文脈によるものであろう。市場が織り込んでいない状態で6月の利
上げを決定すると、市場にとってはネガティブ・サプライズとなってしまう可能性があ
るため、金融当局としては市場に6月の利上げはありうるということを認識させたいと
みられる。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マクロ・トピックス
こうした発言にもかかわらず、おそらくはイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が
3月の講演で慎重に利上げを進める姿勢を示したことや実際に4月のFOMCで政策
金利が据え置かれたこと等を受けて、市場の利上げ期待は上昇してこなかった。し
かし、今回の議事要旨で大部分の参加者がデータ次第では6月の利上げが適切と
判断していることを受けて、にわかに6月の利上げが意識され始めた。FF金利先物
を用いてブルームバーグが算出する利上げを行う確率をみると、6月のFOMCでの
利上げ確率は32.0%と前日の12.0%から急速に上昇、7月のFOMCを含めれば利上
げ確率は47.0%まで上昇している。
(%)
60
FF金利先物から算出される6月FOMCでの利上げの確率
(日次:2016/3/1~2016/5/18)
50
40
30
20
10
0
16/03
16/04
16/05
(注) 6月FOMCで0.50%~0.75%以上への利上げを行う確率、FF金利先物を用いてブルームバーグが算出
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
米国経済の持ち直し
を確認し、金融市場
の安定が維持されれ
ば6月利上げへ
(年/月)
もちろん、FOMCはデータ次第の姿勢を維持しているため、現時点で6月利上げ
が確定しているわけではなく、今後のデータがFOMC参加者の見通しに沿ったもの
となるかどうかが重要である。
4月のFOMCの声明文にみられた主な変化は、経済が減速したという現状認識と
海外経済や金融情勢のリスクに関する警戒感を和らげたことであった。今回の議事
要旨では、経済の減速に関しては、おおむね一時的との認識が示されている。実
際、4月の小売売上高が強い内容であったこと等から、4-6月期には1-3月期の低成
長から持ち直す可能性は高まっている。一方、4月の雇用統計は強弱まちまちの内
容であっただけに、次回5月分で労働市場の改善が継続していることを確認できる
かどうかも重要となろう。また、海外経済と金融情勢のリスクについては、数名の参
加者は英国の欧州連合(EU)離脱問題や中国の通貨政策をめぐる不透明感に金
融市場が敏感であることを指摘したものの、総論としては3月のFOMC時点に比べ
て、リスクは後退したと判断していることが示されている。現時点では金融市場は落
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
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グローバル・マクロ・トピックス
ち着きを取り戻しているが、海外経済をめぐる不透明感が後退し、金融市場の安定
が維持されているかどうかという点も、6月FOMCに向けて注目材料となろう。
みずほ証券投資情報部では、6/3に発表予定の5月雇用統計で労働市場の改善
継続が確認され、金融市場が安定を維持している(たとえば、英国のEU離脱をめぐ
る国民投票を控えて市場のボラティリティが高まらないかどうか等)状況であれば、6
月に利上げを決定する可能性があると考えている。こうした条件が満たされなけれ
ば、7月以降に先送りになるとみられるため、FOMCとしてどのように判断しているの
かを確認するうえで、6/6に予定されるイエレン議長の講演には注目しておきたい。
短期的には利上げに
ともなう市場の不安
定化の再燃に注意
利上げによる市場の反応を考えると、そもそも利上げは米国経済の改善を反映し
ているため、過去の市場の動きをみると、中長期的には米国が利上げを続けるもと
でも、米長期金利の上昇が抑制されていれば、リスク資産価格の上昇は続いてき
た。現状、インフレ圧力は緩やかには高まっているものの、利上げを急ぐような状況
ではない。日欧によるマイナス金利政策の導入等から、世界的に金利上昇が抑制
されている点もふまえると、今後も米長期金利の上昇余地は限定的とみている。
ただ、2015年12月の利上げ以降、今年の年初から2月半ばにかけては中国経済
の減速や原油価格の下落への懸念等を背景に、金融市場ではリスク回避的な動き
が強まった。米国のシェールオイルの減産によって、原油の需給バランスが改善し
つつある点は当時よりも前進しているが、過去の動きからはドル高と原油安との相関
は高く、原油安が産油国やエネルギー産業の信用リスクを高める可能性がある。ま
た、中国経済をめぐる不透明感は高いままであると考えており、米国の利上げが資
金の流れの変化を通じて新興国経済の減速につながるという懸念が再燃する可能
性も否定できない。こうした動きの起点となりうるドルの動きについては、ルー米財務
長官をはじめ、米大統領選挙の候補者となる可能性が高いトランプ氏やクリントン氏
の発言等からはドル高に対するけん制姿勢がうかがわれるものの、欧州中央銀行
(ECB)や日本銀行をはじめ、米国以外では金融緩和を続けている国が多いなか
で、米利上げ観測が高まれば再びドル高が進行する可能性がある。
こうした点から、これから夏場にかけて、金融市場が再び不安定化する可能性にも
一定の注意が必要であろう。とくに、利上げによって、足元にかけてのドル安基調が
転換するかどうか、ドル高に転じた場合に人民元の不安定化や原油価格の下落に
つながるかどうか等の点については注目しておきたい。
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金融商品取引法に係る重要事項
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