マーケット・フォーカス

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経済:米国
2016/
11/4
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
12月FOMCでの利上げに向けて若干の前進
 11/1~2に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、大方の予想通り、現状維持が
決定された。
 声明文には、直接的に次回12月FOMCでの利上げを予告するような表現はなかったものの、
12月利上げに向けて状況は前進していると、FOMCが判断していることはうかがえる。
 みずほ証券投資情報部では、今後発表される雇用統計が引き続き労働市場の改善を示し、
金融市場の不安定化が生じなければ、12月のFOMCで0.25%の利上げが決定される可能性
が高いという見方を維持している。
利上げの根拠は引き
続き強まったもの
の、さらにいくらかの
証拠を待つFOMC
11/1~2に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、フェデラルファンド
(FF)金利の誘導目標レンジを0.25%~0.50%に維持することを決定。保有債券の再
投資政策についても変更はなかった。なお、今回の決定に対して、カンザスシティ
連銀のジョージ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁は0.25%の利上げを主張し
て反対票を投じた。一方、9月には同様に反対票を投じたボストン連銀のローゼング
レン総裁は、今回は現状維持に賛成した。
声明文から政策決定の背景となる経済・物価情勢の評価についてみると、まず経
済活動の現状に関しては、労働市場は引き続き力強さを増し、経済成長は年前半
の緩やかなペースから上向いたとされており、全体的な現状認識は9月から変わら
ず。内訳では、個人消費の増加ペースに関する表現は後退した。インフレ率につい
ては、今年の初めからはいくらか上向いたものの、一部にはこれまでのエネルギー
やその他の輸入価格の下落を反映して、FOMCの長期目標(個人消費支出デフ
レーターで2%)を下回り続けているとしている。また、期待インフレ率に関しては、市
場で計測される期待インフレ率は上向いたが、低いままであり、大半のサーベイにも
とづく長期の期待インフレ率はここ数ヵ月、全体的にほとんど変化しなかったとして
いる。インフレに関する基本的な認識は9月の声明文から大きく変わらないものの、
インフレ率や市場の期待インフレ率が上向いたという認識が追加された。
先行きの見通しについてみると、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整によって、
経済は緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況はさらにいくらか力強さを増して
いくとされている。インフレについては、エネルギーや輸入価格の下落等の一時的
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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な影響が一巡し、労働市場がさらに力強さを増していくにつれて、中期的には2%に
向かって上昇していくとの見方に変化はない。リスク判断については、景気見通し
に対する短期的なリスクはおおむね均衡したという9月の表現が維持され、物価指
標や海外経済、金融情勢を注視し続けるという姿勢は変わらず。
こうした経済・物価情勢の現状や見通しをふまえて、FOMCはFF金利を引き上げ
る根拠は引き続き強まったものの、当面は目標に向かっての前進が続いていること
を示すさらにいくらかの証拠を待つことに決めた結果として、今回も利上げが見送ら
れている。9月のFOMC以降のデータから、利上げに向けて状況が前進していると
FOMCは評価しているとみられるものの、もう一段の証拠を待つ姿勢を示している。
雇用の 下振れ や 金
融市場の 不安定化
がなければ、次回12
月に利上げへ
以上のように、今回のFOMCでは利上げが見送られた。もともと今回のFOMCに関
しては、大統領選の直前での利上げは難しいという見方が金融市場で支配的で
あった。このため、今回のポイントはどの程度12月利上げに向けて前向きな認識を
示すかに絞られていた。この点では、最終的な判断はあくまで経済データ次第であ
るため、声明文には次回12月の会合での利上げを予告するような表現はなかったも
のの、12月の利上げに向けて状況は前進しているという認識は示されたといえよう。
こうした結果を受けて、FF金利先物を用いてブルームバーグが算出する12月利上
げの確率は8割弱に達している。
みずほ証券投資情報部では、今後発表される雇用統計が引き続き労働市場の改
善を示し、金融市場の不安定化が生じなければ、12月のFOMCで0.25%の利上げが
決定される可能性が高いという見方を維持している。一方、インフレ圧力は限定的
であり、経済の過熱を心配するような状況でもないため、その後の利上げペースは
引き続き慎重なものにとどまる可能性が高いと考えている。
FF金利先物から算出されるFOMCでの利上げの確率
(11月FOMC前後での比較)
(%)
100
90
11/1時点
78.0
80
70
11/2時点(FOMC結果判明後)
68.0
60
50
40
30
20
16.1
10
0
16/11
16/12
(年/月)
(注) 各時点のFOMCで0.50%~0.75%以上への利上げを行う確率、FF金利先物を用いてブルームバーグが算出
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
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