6月21日号 インドのラジャン中銀総裁の交代について

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
6/21
投資情報部
シニアエコノミスト
折原 豊水
インドのラジャン中銀総裁の交代について
 ラジャン中銀総裁が突然の退任表明、再任に向けた与党の了承が得られなかった可能性も
 国際的な知名度や実績のあったラジャン氏の後任選びは難航か
 インドルピーは次期中銀総裁のスタンス見極めでしばらく上値重い展開を見込む
ラジャン総裁が9月に
退任表明、再任は与
党の了解得られず
インド準備銀行(以下、中銀)のラジャン総裁は6/18、今年9/4の総裁の任期で退
任することを表明した。一部では8月下旬ごろにラジャン総裁の留任が発表されると
の報道があった。退任表明の時期に加えて、記者会見ではなく職員へのメッセージ
をホームページに掲載するという発表形式も異例と言える。また、1980年代半ば以
降、中銀総裁の任期は5年程度が多く、ラジャン総裁の3年間はこれまで挙げてきた
実績を考えても短いと言える。この背景には、政府や与党、中銀との間でラジャン総
裁の留任を巡って相当のやりとりがあったことがうかがえる。報道では、政策金利が
依然として高水準にあることが経済成長の妨げとなっているとの批判が与党インド人
民党幹部から挙がっていることや、ラジャン総裁が金融政策のみならず、与党幹部
の宗教的な不寛容発言等を批判したことが与党やその支持母体であるヒンズー教
至上主義団体、民族義勇団(RSS)の反発を招いたとの指摘がみられる。
ラジャン総裁は通貨
やインフレ安定、経
済成長など自らの実
績を示す
ラジャン総裁はメッセージのなかで、「2013年9月の就任当時、インフレ率は高く、
インドルピーの下落が続き、フラジャイル・ファイブ(ファンダメンタルズがぜい弱な
5ヵ国通貨)と言われていた」「我々(中銀)は通貨安定のため、在外インド人のインド
への送金について外貨預金金利の引き上げを行って資金を引き付けることに成
功、インドルピーは安定し、外貨準備は過去最高水準まで積み上がっている」「その
後、インフレターゲットの枠組み導入で政府と合意し(15年2月)、インフレ安定に役
立てたほか、1.5%の利下げを行って景気下支えを行い、経済成長率は世界でもっと
も高い国のひとつとなった」と述べた。一方、「金融政策委員会方式での金融政策
運営については導入について政府と合意したものの、依然として発足していない」
ことや、「銀行の不良債権処理についても政府の取り組みを支援してきたものの、ま
だ解決には至っていない」とした。そうしたうえで、9/4に退任したあとは学問の世界
に戻ると示唆した。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
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2016/6/21
グローバル・マクロ・トピックス
ラジャン総裁の知名
度や実績に見合う後
任候補の 選定は 難
航する可能性も
インドルピーは次期
中銀総裁の政策スタ
ンスを見極める動き
ジェイトリー財務相は後任候補の選任を急ぐ姿勢を示している。市場では中銀の
副総裁や、財務省幹部等の名前が挙がっているが、国際的な知名度が高く、前述
のように通貨や物価安定に貢献したラジャン総裁の後任としては見劣りしてしまう可
能性があり、人選は難航しよう。
2014年5月に発足したモディ政権のもとでの外資規制の緩和や投資誘致策の促
進等の経済改革と、ラジャン総裁の金融政策が両輪となって政策が運営されてき
た。モディ政権の経済改革は土地収用法の撤回や物品サービス税の導入の遅れ
等、重要法案は議会上院における野党の抵抗が影響して改革スピードがやや遅れ
ている。こうしたなかでのラジャン総裁の退任だけに、次期中銀総裁が決まり金融政
策のスタンスが見えてくるまでは海外投資家のインドに対する投資はやや慎重姿勢
となる可能性があり、インドルピーは上値が重い展開か。もっとも、16年の景気は農
業生産の回復や公務員の給与引き上げにより底堅く推移するとみられ、下値不安
は限られよう。
インドの政策金利と消費者物価
(%)
(%)
(月次:2011/1~2016/6)
9.0
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
8.5
8.0
7.5
7.0
13年9月
ラジャン総裁就任
6.5
6.0
11
12
13
14
消費者物価(左目盛)
15
16
(年)
政策金利(レポ、右目盛)
(注)政策金利は6/7まで、消費者物価は4月まで
出所:CEICデータよりみずほ証券作成
ルピー相場の推移
(1ドル=ルピー)
(1ルピー=円)
(週次:2004/1/2~2016/6/17)
32
36
40
44
48
52
56
60
64
68
72
3.2
3.0
2.8
2.6
2.4
2.2
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
↑ルピー高
↓ルピー安
ドル・インドルピー(左逆目盛)
ルピー円(右目盛)
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:ブルームバーグデータよりみずほ証券作成
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2016/6/21
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グローバル・マクロ・トピックス
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