グローバル・マクロ・ トピックス

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
6/16
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
予想通り現状維持だが、会合後は円高が進行
~日銀金融政策決定会合(2016年6月15~16日)
 日本銀行は6/15~16に開催された金融政策決定会合において、金融市場調節方針(量)、
資産買い入れの方針(質)、マイナス金利(金利)について、いずれも現状維持を決定した。
 今回の会合に関しては、大勢は現状維持の予想であったものの、結果が判明すると、一時、
1ドル=103円台まで円高が進行した。英国の国民投票が控えていることに加えて、米連邦公
開市場委員会(FOMC)において、参加者の利上げペースの見通しが下方修正されたこと、
今回の結果を受けて日銀による追加緩和への期待が後退したこと等が背景にあろう。
 今後については、早ければ次回7月の会合にも、追加緩和を実施する可能性があり、その際
は国債やETFの買い入れ増額、マイナス金利幅の拡大等、3つの政策手段がすべて揃う形に
なると考えている。
現状維持は予想通り
だが、会合後に円高
が進行
日本銀行は6/15~16に開催された金融政策決定会合において、金融市場調節
方針(量)、資産買い入れの方針(質)、マイナス金利(金利)について、いずれも現
状維持を決定した。投票結果は量および質については、賛成8に対して、木内委員
1人が反対。金利については、木内委員に加えて、佐藤委員も反対した。
政策決定の背景となる経済・物価情勢の判断について、前回4月の会合から大き
な変更はない。経済の現状判断は「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産
面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」とされた。先
行きについても「基調として緩やかに拡大していく」との判断は変わらず。物価面で
は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は「0%程度となっている」、先行きについ
ては「消費者物価の前年比は、当面小幅のマイナスないし0%程度で推移するとみら
れるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていく」としている。
予想物価上昇率(期待インフレ率)についても「やや長い目でみれば全体として上
昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる」との表現は変わらず。
今回の会合に関しては、4月の会合以降の経済指標が追加緩和を迫るほど弱くな
かったことに加えて、英国の欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票を控えるなか
で、仮に離脱となれば、リスク回避から円高圧力が強まる可能性があり、追加緩和を
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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決定しても、市場への効果が失われかねないリスクが存在していた。このため、ここ
で動くという選択は取りづらかったとみられ、市場予想も大勢は現状維持であった。
ただし、会合の結果が判明すると一時、1ドル=103円台までドル安・円高が進行し
た(15:30時点)。英国の国民投票が控えていることに加えて、米連邦公開市場委員
会(FOMC)において、参加者の利上げペースの見通しが下方修正されたこと、今
回の結果を受けて日銀による追加緩和への期待が後退したこと等が背景にあろう。
物価の 基調が 低下
するなかで、日銀は
いずれ追加緩和へ
今後について考えると、いずれ日銀は追加緩和を迫られる可能性が高いと引き続
き考えている。日銀が見通しとしてかかげる2017年度中に、消費者物価上昇率で2%
という物価安定の目標を達成することは難しいとみているためである。
日銀が物価の基調をみるうえで重視している「生鮮食品およびエネルギーを除く
総合指数」は、円高の進行や賃金の伸び悩み等から4月に前年同月比+0.9%と上昇
率が頭打ちになってきており、今後はさらに低下していく可能性が高い。日銀として
は、①できるだけ早期に物価目標を達成するという姿勢は崩していないものの、金
融政策だけで物価を押し上げることには限界がある、②加えて、マイナス金利の副
作用や国債買い入れの限界が意識されている、等から、なるべく追加緩和は温存し
ておきたいという意識が働いている可能性がある。ただ、物価の基調の低下が明白
にもかかわらず、何も手を打たなければ、日銀のコミットメントへの信認や予想物価
上昇率が低下し、物価目標の達成がますます難しくなる。
また、海外経済への懸念等から、金融市場が不安定化し、円高が一段と進行する
ような状況となれば、企業の景況感や予想物価上昇率が下振れるリスクに対応する
ため、追加緩和の可能性が高まることになろう。
こうした点から、早ければ次回7/28~29開催の会合にも、追加緩和を実施する可
能性があり、その際は、国債やETFの買い入れ増額、マイナス金利幅の拡大等、3
つの政策手段がすべてそろう形になると考えている。マイナス金利は金融機関や世
間からの評判が芳しくないが、日銀としては、金利の低下に効果を発揮し、今後は
実体経済に波及していくという見方をとっているため、選択肢から外すことはないと
みている。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
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消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、前年同月比)の推移
( 月次:1985/1~2016/4)
(%)
4
物価安定の目標(2%)
3
2016/4の展望レポートにおける
16年度見通し(0.5%)
2
1
0
▲1
▲2
▲3
85
87
89
91
93
95
97
99
01
03
05
07
09
11
13
15
(注)消費税率引き上げの影響を調整
出所:総務省「消費者物価指数」、日本銀行の資料よりみずほ証券作成
17
(年)
消費者物価指数の推移(全国、前年同月比)
( 月次:2011/1~2016/4)
(%)
2.0
生鮮食品を除く総合
1.5
生鮮食品・エネルギーを除く総合
1.0
0.5
0.0
▲ 0.5
▲ 1.0
▲ 1.5
11
12
13
14
15
16
(年)
(注) 消費税率引き上げの影響を調整
出所:総務省、日本銀行のデータよりみずほ証券作成
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金融商品取引法に係る重要事項
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