グローバル・マクロ・ トピックス 2016/ 3/17 投資情報部 シニアエコノミスト 宮川 憲央 利上げの方向性を維持も、ペースは下方修正 ~米国・FOMC(2016年3月) 3/15~16に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、フェデラルファンド(FF)金利の 誘導目標レンジを0.25%~0.50%に維持することを決定した。 声明文では海外経済や金融情勢のリスクを注視する姿勢を維持。それに応じて、FOMC参 加者の政策金利見通しは、16年末の中央値で0.875%と2015年12月時点の見通しから 0.5%下方修正され、従来の想定よりも利上げのペースは緩やかになることが示された。 労働市場の改善やインフレ率が上向く兆しがみられる等、米国の経済・物価情勢をふまえれ ば、今後も利上げの方向性に変化はない。一方、海外経済の減速や金融市場の不安定化と いったリスクがくすぶる状況であるため、利上げのタイミングは慎重に探っていくとみられる。 海外経済や 金融情 勢のリスクを注視す る姿勢を維持 3/15~16に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、フェデラルファンド (FF)金利の誘導目標レンジを0.25%~0.50%に維持することを決定。保有債券の再 投資政策についても変更はなかった。なお、今回の決定に対して、カンザスシティ 連銀のジョージ総裁は0.25%の利上げを主張して反対票を投じた。 政策決定の背景となる経済・物価情勢の評価についてみると、まず経済活動の現 状に関しては、経済活動はここ数ヵ月の海外経済や金融情勢にもかかわらず、緩や かなペースで拡大したとされており、成長ペースの減速と評価していた1月の判断か ら前進した。内訳では、設備投資は軟調として判断を弱めた一方、在庫投資の減速 に関する記述は削除された。労働市場については、強い雇用の増加を含む最近の 一連の指標は、労働市場のさらなる強まりを示していると評価。労働資源の未活用 の状況について言及していた従来の表現が変更された。インフレ率については、こ こ数ヵ月で上昇したとしつつ、一部にはエネルギーやその他の輸入価格の下落を 反映して、FOMCの長期目標(個人消費支出デフレーターで2%)を下回り続けてい るとの評価は変わらず。期待インフレ率に関しては、市場で計測される期待インフレ 率は低いままであり、サーベイにもとづく長期の期待インフレ率はここ数ヵ月、全体 的にほとんど変化しなかったとしている。 先行きの見通しについてみると、金融政策の運営姿勢の緩やかな(gradual)調整 によって、経済は緩やかなペースで拡大し、労働市場の指標は力強さを増し続ける この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 1 2016/3/17 グローバル・マクロ・トピックス との見方は変わらず。しかし、海外経済や金融情勢が引き続きリスクをもたらしてい るとした。インフレについては、これまでのエネルギー価格の下落もあり、短期的に は低いままであるが、エネルギーや輸入価格の下落等の一時的な影響が一巡し、 労働市場がさらに力強さを増していくにつれて、中期的には2%に向かって上昇して いくとの見方を維持している。 なお、こうした見通しについて、今回発表されたFOMC参加者の経済予測(中央 値)と照らし合わせると、実質GDP成長率が小幅に下方修正される一方、失業率は 長期的な均衡水準が2015年12月時点の4.9%から4.8%へ低下するとともに、17年、18 年見通しはさらに労働需給がひっ迫する方向に修正された。失業率が完全雇用と みなされる水準を下回る状況が続けば、インフレが加速する可能性はあるが、 FOMCとしてそうした状況を許容する姿勢がうかがえる。インフレ率の見通しは、お そらくエネルギー価格下落の影響から16年の見通しは下方修正となったが、その後 はほぼ変わらず。足元にかけて個人消費支出(PCE)デフレーター(食料・エネル ギーを除くコアベース)の上昇率は1月に前年同月比+1.7%まで高まったものの、 FOMCとしてはインフレ率が高まるペースは緩やかという見方を変えていない。 大枠でいえば、実質GDP成長率は長期的な均衡水準(潜在成長率)に収れんし ていき、失業率は長期的な均衡水準をやや下回る水準で推移。インフレ率は徐々 に上向いていき、目標である2%に到達するのは17年から18年にかけてという姿に なっている。こうした緩やかな成長と労働市場の改善が継続する一方、インフレ圧力 は緩やかであるため、利上げを急ぐ必要はないと判断しているとみられる。 FOMCの経済・物価見通し(2016年3月、中央値) (%) 実質GDP 2015年12月時点の見通し 失業率 2015年12月時点の見通し インフレ率 2015年12月時点の見通し コア・ インフレ率 2015年12月時点の見通し フェデラルファンド( FF) 金利 2015年12月時点の見通し 2016年 2017年 2018年 長期 2.2 2.1 2.0 2.0 2.4 2.2 2.0 2.0 4.7 4.6 4.5 4.8 4.7 4.7 4.7 4.9 1.2 1.9 2.0 2.0 1.6 1.9 2.0 2.0 1.6 1.8 2.0 --- 1.6 1.9 2.0 --- 0.875 1.875 3.000 3.250 1.375 2.375 3.250 3.500 (注)実質GDPおよびインフレ率は第4四半期の前年比、失業率は第4四半期平均、FF金利は年末時点の誘導目標もしくはレンジの中心値 インフレ率は個人消費支出(PCE)デフレーター、コアは食品およびエネルギーを除く 出所:米連邦準備理事会(FRB)の資料よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 22 2016/3/17 グローバル・マクロ・トピックス 利上げのペースを下 方修正 今後の政策運営に関するガイダンスについては12月のFOMCから変化はない。 主な点を確認すると、「FF金利誘導目標レンジの将来的な調整の時期や規模を決 定するにあたって、最大雇用と2%のインフレ率という目標に向けた進展を現状と予 測の両面で評価していく」「こうした評価にあたっては、労働市場の状況、インフレ圧 力やインフレ期待、金融・国際情勢等、幅広い情報が考慮される」「現状、インフレ 率が2%を下回っていることから、FOMCはインフレ目標に向けた実際の進ちょくと見 通しを注意深く観察する」「経済情勢はFF金利の緩やかな(gradual)引き上げのみ を正当化する形で展開していくと予想され、しばらくの間、FF金利は長期的に予想 されるよりも低い水準に維持される可能性が高い」「実際のFF金利の道筋は今後の データにもとづく経済見通し次第」というものである。 今後の利上げのペースに関して、FOMC参加者の政策金利見通しを確認すると、 中央値では16年末が0.875%(12月時点の見通し:1.375%)、17年末が1.875%(同 2.375%)、18年末が3.000%(同3.250%)、長期が3.250%(同3.500%)となっている。16 年末時点の水準は0.5%下方修正されており、先行きもそれに応じて引き下げられて いる。また、16年内の利上げ幅については、従来は1.0%が見込まれていたものの、 今回は0.5%となった(1回の利上げが0.25%とすれば、年4回から年2回に修正)。米 連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は記者会見でこうした見通しの下方修正に ついて、海外経済の減速に加えて、金融市場におけるボラティリティの拡大、株価 の下落やクレジット・スプレッドの拡大といった金融情勢が引き締まるなかで、参加 者は12月に想定していた経済状況を達成するためには、金利見通しを引き下げる 必要があると考えたという趣旨の発言をしている。 (%) 5 FOMC参加者によるFF金利誘導水準もしくは誘導レンジの中心値の予想分布 (2016/3と2015/12のFOMCでの比較) 2016/3 2015/12 4 3 2 1 0 (各年末時点) 出所:米連邦準備理事会(FRB)の資料よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 33 2016/3/17 グローバル・マクロ・トピックス 今回のFOMCを受けて、FF金利先物を用いてブルームバーグが算出する利上げ を行う確率をみると、12月のFOMCでの利上げ確率は68.0%となっている。市場参加 者の見通しがFOMCよりも慎重であることや下振れリスクが発生する確率を織り込ん でいる等の背景により、市場で織り込まれている利上げの経路がFOMC参加者の 見通しよりも緩やかであるという状況は続いているものの、今回のFOMC参加者見 通しの下方修正によって、年内の利上げペースについては、かい離の度合いは小 さくなった。ただ、FOMCの政策決定がデータ次第というスタンスが維持されている ため、今後の経済指標や金融市場の動向次第で、市場参加者の今後の利上げを めぐる見方が交錯し、不安定さが残る可能性には引き続き留意が必要であろう。 FOMC参加者の政策金利見通しとFF金利先物 (2016/3/16時点) (%) 2.00 FOMC参加者による16/3時点の見通し (各年末、中央値) 1.50 1.00 0.50 FOMC参加者の見通し FF金利先物 0.00 現時点 16/03 16/06 16/09 16/12 17/03 17/06 (注) 現時点の水準は誘導目標レンジの中心値である0.375%と仮定している 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 利上げ の 方向性は 続くも、ペースやタイ ミングは金融市場の 動向が影響 17/09 17/12 (限月:年/月) 以上のように、今回のFOMCでは利上げを見送るとともに、海外経済や金融情勢 のリスクがくすぶるなかで、金利見通しを引き下げる結果となった。 今後の金融政策について考えると、声明文の認識でも示されているように、労働 市場の改善は続いており、インフレ率が高まる兆しも出てきている。こうした米国の ファンダメンタルズをふまえれば、今後も緩やかな利上げを進めるという方向性に変 化はないとみられる。一方、中国経済の減速懸念等から、金融市場が不安定化す る場面では、今後も利上げを見送り、慎重に状況を見極める姿勢を続けることにな ろう。結果として、みずほ証券投資情報部では基本的な見方として、次回の利上げ は16年6月となり、それを含めて16年には0.25%ずつ、2回の利上げが実施されると 現時点で想定している。ただし、今後もリスク回避の動きが強まる可能性が残ること を考えると、利上げが加速する可能性よりは、利上げのタイミングが後ずれしたり、 ペースが低下するリスクの方が高いと考えている。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 44 2016/3/17 金融商品取引法に係る重要事項 グローバル・マクロ・トピックス ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160317-13 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 55
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