ブライダルにも 由化の波がやってきた!

2016年2⽉29⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『ブライダルにも⾃由化の波がやってきた!』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
⼈⽣の最初の⼤きな買い物はなんでしょうか。以前は⾃動⾞でしたが、最近の若年層は⾞を買いません。数百万円単位
の最初の買い物が結婚式となる⼈が増加しています。
結婚適齢期⼈⼝が減少していますが、ブライダル市場は未だに巨⼤産業です。⽮野経済研究所の推定では、全体で約
2.6兆円(2013年)で、そのうち半分以上が挙式披露宴、披露パーティー市場です。またジュエリー、新婚旅⾏、家
具、式場などの結婚情報サービスと想像以上に裾野は広がっています。この巨⼤市場に⼤きな影響⼒を持っているのが
リクルートのゼクシィです。
上場株式からみたブライダル関連ビジネスの中⼼は、挙式披露宴の会場ビジネスと、結婚情報サービスの2つです。こ
れらでもっとも費⽤がかかるのが、披露宴関連です。ゼクシィ結婚トレンド調査2015によると平均組単価は353万円
に達します。この市場は、ここ10数年で⼤きく変わりました。以前は⼤型、⼩型と様々なホテルに併設された宴会場
が中⼼でしたが、ハウスウェディングと呼ばれる洋⾵の結婚式と披露宴専⾨の会場が1990年代から急成⻑しました。
ただ上位5社の市場シェアは10%強に留まっており、ガリバー企業が存在しない極めて中⼩施設の多い業界といえま
す。
新郎新婦からみると価格は⼈⽣最⼤級、選択肢はホテルからハウスウェディング、レストランウェディングと多種多様、
さらにはお互い⼈⽣で初めてのイベントと、新郎新婦が⼈⽣で初めて迎える困難な決断を迫られます。⼀⽅、式場業者
からみても選んでもらうのは⼤変です。新郎新婦の好みは多種多様で、最⾼の施設や料理を⽤意すれば選んでもらえる
とも限りません。また⼀般的な消費財では値段に対して満⾜度が⾼ければリピーターとして継続的な販売が期待されま
すが、結婚式は同じ⼈がその式場でまた結婚を挙げる可能性はゼロ、そのうえ知⼈が利⽤した式場は避けられる傾向が
あります。つまりより多くの潜在顧客に⾃らの存在を知ってもらい、検討に⾜を運んでもらう必要があるのです。
この⼈⽣で1回、リピーターがゼロという特異な市場で、単なる広告媒体以上の存在で、需要と供給をマッチングさせ
るインフラとなっているのがリクルートのゼクシィです。式場関連の企業の話を聞いていると必ず出てくるのが、ゼク
シィのすごさと価格の⾼さです。どんな式場でもゼクシィに広告を毎⽉載せます。またゼクシィが地域ごとに発⾏され
るため、式場も地域ごとに広告をだす必要があります。そのため全国にチェーン展開していても、規模のメリットはあ
りません。式場は受注が厳しいと、⾒やすい⼀等地のページにのせるために、さらに⾼い広告費を払うことになります。
業界のインフラになるビジネスモデルを構築したリクルートは素晴らしいとしか⾔えませんが、実は最近この業界にも
変化が出てきました。もともと分厚い雑誌が中⼼だったゼクシィもインターネットの普及で、雑誌とインターネットの
統合メディアに変質してきたのです。
式場は、雑誌への広告掲載は引き続き必要です。ただ消費者は、インターネットの⼝コミサイトで実際結婚式を⾏った
⼈の感想を、誰でも⾒られるようになってきました。結婚式は知り合いの体験も⾃分の体験も参考にできないことがゼ
クシィをインフラまで昇華させましたが、他⼈の体験を簡単に⾒つけることができるようになったのです。これは寡占
化の進んだブライダル広告市場に変化が訪れたことを意味します。⽇本の電⼒⾃由化と同じように、独占企業のシェア
が少しずつ切り崩される時代がやってきたのです。
⼩さい頃からネットに触れてきた世代が結婚適齢期を迎えています。これらの世代は雑誌にお⾦を払う習慣が前の世代
より乏しく、無料で⾒られるインターネットにファーストコンタクトを⾏います。実際ゼクシィに対し、雑誌部分より
ネット部分により多くの広告費を投⼊する企業もあり、この傾向は今後加速していくことが予想されます。⻑期安定市
場の構造変化は、まさにブルーオーシャンの誕⽣といえるでしょう。この市場の関連銘柄の中には⼤化け銘柄が出てく
るかもしれません。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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