ゲームに寛容な日本人がつくる日本のゲーム市場(2);pdf

2015年3⽉23⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『ゲームに寛容な⽇本⼈がつくる⽇本のゲーム市場(2)』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
1980年代、⽇本では各地にゲームセンターが数多くでき、アーケードゲームで遊ぶことが容易になりました。アーケー
ドゲームクオリティを家庭で実現した任天堂のスーパーファミコンは爆発的にヒットし、⼦どもから⼤⼈まで気軽に楽しむ
ゲーム⽂化がつくり上げられました。ゲームが早い段階から⾝近となったため、現在の40歳代以下の世代ではゲームにお
⾦を払うことに関して他国より極めて寛容な⼟壌ができたと思います。
2000年代、その国⺠性にマッチしたのが、グリーやDeNAに代表されるSNS(ソーシャルネットワーキングサービ
ス)プラットフォームで提供された携帯ゲームです。SNS関連企業の売上は①広告収⼊、②ユーザー課⾦、③プラット
フォームとしてのレベニューシェア、などが主に考えられます。これら3つの収益源のうち、フューチャーフォン時代に市
場拡⼤の原動⼒となったのが、プラットフォーム機能でした。この上にゲーム開発会社がゲームを提供し、売上⽐例で⼿数
料をSNS会社が受取ることで、ゲーム開発会社は集客と広告、決済などのメリットを受けてきました。
ところが2010年代に⼊ると、スマートフォンの普及が進み、アイフォンやアンドロイドがプラットフォーム機能を持つ
ようになり、そこにネイティブアプリと呼ばれるゲームが提供されることで、グリーやDeNAに⼿数料を払う意味が薄れ
てきました。その結果、これらの会社はここ数年⼤幅減益となっています。
これらの企業は⾼成⻑時代には⼤型の広告費を投下し、技術者をかき集め、課⾦額の最⼤化に全⼒を尽くしました。その極
めつけがコンプリートガチャ問題です。これは、⽇本に昔からある⼀種の景品付くじであるガチャガチャを携帯電話上で再
現し、それを回すことでランダムに⼊⼿できるアイテムのうち特定の複数アイテムをすべて揃えると稀少アイテムを⼊⼿で
きる仕組みです。これは今でも⽇本のスマートフォンの有⼒な課⾦⼿法ですが、コンプリートガチャはこれを連続的に⾏う
ことで、⾼額課⾦を⾏っていました。これが景品表⽰法に違反する可能性が指摘され、⾼成⻑の源泉が絶たれました。
私は10代の頃、次々と新しい発想のアーケードゲームが発売されるのを⽇々楽しみにしていたため、ビデオゲームに夢を
持っています。当時はライトゲーム中⼼の⼀部のSNSプラットフォーマーのビジネスにはある種の疑問を持っていたため、
⼀切投資をしませんでした。
ただ最近、取材をしていくうちに、少しSNS関連会社の⾒⽅を変えつつあります。数年の間に⾼成⻑期、成熟を通り越し
て衰退を経験した結果、変化がでてきました。現在はリストラが⼀段落し売上は減少しましたが、5年間稼いだキャッシュ
が残りました。市場の急拡⼤が落ち着き地道に顧客満⾜度の⾼いゲームの開発を⾏う、正統派のゲーム会社に変わりつつあ
る会社もでてきました。ネイティブゲーム市場の成熟化が予想される中、ゲーム開発費⽤は膨張しています。このキャッ
シュの使途と経営姿勢の変化は今後の業績反転を予感させます。
この2回のゲームに関する週報を連載している間に、まさにその変化の兆しが具現化しました。任天堂とDeNAの提携で
す。スマートフォンゲームに押されがちな両社ですが、コンテンツ⼒、プラットフォームの運営⼒と資⾦⼒は健在です。そ
の変化を好感し、両社の株価は暴騰し、関連企業の株価にまで波及しています。まさに今、新興スマートフォンゲーム会社
への反撃が始まりました。
<⽇本のコンピュータゲームの歴史>
特徴
アーケードゲーム 全盛
時代
収益モデル
主な関連企業
アーケードゲーム向 けに 多く の斬 新な
〜1980年代
ゲームが多く開発され、ゲーム市場規模 ゲームの回数をベースの直接課⾦
ナムコ、コナミ、セガ
が拡⼤。
スーパーファミコン の発 売に より アー
家庭⽤ゲーム全盛時代
1990年代〜
ケードゲームクオリ ティ が家 庭で 実現
2000年代
し、コンテンツの幅が拡⼤。2000年代は
パッケージの売切りという直接課⾦
スクエア、エニックス、任天堂、ソニー
開発費が⾼騰。
通信環境の進化とともにゲームが家庭か
携帯ゲーム全盛時代
2000年代
ら気軽に持ち運べるようになった。開発 ガチャ、アイテムなどの間接課⾦
グリー、DeNA
費は低い。
スマートフォンゲ ーム
全盛時代
スマートフォンで⾼画質ゲームが実現。
2010年以降
ただ⼀つの成功したゲームの模倣などが ガチャ、アイテム、広告などの間接課⾦
横⾏。開発費は⾼騰。
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アップル、コロプラ、ガンホー、Mixi
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
大和住銀投信投資顧問株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第353号
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