2016年2⽉8⽇ ⽇本株ファンドマネージャーの視点 『円⾼になっても我慢!』 ※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。 最近の株式市場は、少しでも⽶ドル/円で円⾼になると⼤幅に下落し、逆に少しでも円安になると⼤幅に上 昇するという変動の激しい相場環境が継続しています。実はこれには、ファンダメンタルズの裏付けのある 理由が存在します。 今まさに、3⽉決算企業の第3四半期決算発表シーズンですが、市場は既に今期の決算ではなく、来期の決 算がどうなるかに⽬線を向けています。来期ベースの⽇本企業の業績は⽶ドル/円が120円前提で営業利益 が1桁後半の増益がコンセンサス予想になっています。ただ、2016年度の法⼈税の実効税率の低下や、企業 の増配・⾃社株取得などの積極的なROE向上姿勢を考慮するとEPS成⻑に⾄っては⼗分に2桁成⻑が期待で きる魅⼒的な市場であると⾔えます。ところが、⽶ドル/円が年度通して115円前提だとどうでしょうか。 これもほぼコンセンサスになりつつあると思いますが、来年度はほぼ横ばいの営業利益予想となってしまい ます。加えて、新年度の決算予想時には、⽇本企業は過度に保守的な期初の業績予想をするため、減益予想 となる可能性が⾼くなります。つまり、⽶ドル/円で120円と115円、僅か5円の差が来年度の⽇本株の増益、 減益の⼤きな分岐点となってしまうのです。これが、最近少しの円⾼・円安で⼤きく変動する⼤きな理由だ と思います。 従って、⽶ドル/円での115円レベルは⽇本の株式市場にとっては死守しなければならない⽔準なのです。 その中で、⿊⽥⽇銀総裁はサプライズのあるマイナス⾦利による追加緩和を先⽇決定しました。マイナス⾦ 利については賛否両論あるのは⼗分承知していますが、結果的に⽶ドル/円を121円台まで持っていったの は、成功であったと⾔えるでしょう。しかし、その後は⽶国の雇⽤統計を⾒極めたいということから再び 116円台まで円が上昇して週末を終えることになりました。結局、元の⽔準まで戻ってしまったわけですが、 仮に⽇銀がなにもしなければ、さらに円⾼になっていた可能性が⾼かったと思います。何れにしても、今後 はサプライズのある⽇銀の⾦融政策は期待しづらく、⽶国のファンダメンタルズによって⽶ドル/円が決定 される事になると思われます。⽶国の利上げペースが年4回になれば120円を越えるレベルになっても不思 議ではありません。では逆に、⽶国の利上げペースは緩やかで円⾼⽔準が継続した場合はどうなるのでしょ うか? 最悪、4⽉以降も円⾼⽔準が継続したとすれば、その時はデフレ脱却が確実となるまでは消費再増税を⾏わ ないという“消費再増税凍結”という安倍総理の英断を待つ事になります。総理は消費再増税について、 『リーマンショックや⼤震災のような重⼤な事態が発⽣しないかぎり、確実に実施する』としていますが、 まさに今の製造業の電気機器などはそれに匹敵する事態が起きているといっても過⾔ではないでしょう。毎 ⽇のように新聞誌上を賑わせているシャープや東芝だけではなく総合電機、事務機器メーカーも円安だけで は既に儲けることが出来なくなっています。 そして最後の頼みの綱の電⼦部品メーカーでさえもアップルのスマートフォンの減産の影響を受け業績が急 失速しています。⽇本の⾃動⾞を除く製造業は⼤きな構造問題に直⾯しています。消費再増税凍結の⼤義名 分は⼗分にあると思います。 選挙前になるでしょうが、安倍総理の英断が今後の株式市場の不安を取り除く⼤きなイベントとなることを 期待したいと思います。 株式運⽤部 ⼩出 修 ■当資料は情報提供を⽬的として⼤和住銀投信投資顧問が作成したものであ り、特定の投資信託・⽣命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するもの ではありません。■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成 しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当 資料に記載されている今後の⾒通し・コメントは、作成⽇現在におけるレ ポート作成者の判断に基づくものであり、事前の予告なしに将来変更される 場合があります。■当資料内の運⽤実績等に関するグラフ、数値等は過去の ものであり、将来の運⽤成果等を約束するものではありません。■当資料内 のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 大和住銀投信投資顧問株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第353号 加入協会 一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
© Copyright 2024 ExpyDoc